管理人NEROが映画について語ります。

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Neroの一押し小説紹介

ここでは管理人が観ておもしろかった・感動した一押し作品を紹介していきます。
いい作品に出会い次第随時更新していきます!





          グロテスク 著者:桐野夏生

 友人の薦めで読みました。
女性の淫らな本音というか、落ちぶれた娼婦のお話です。
タイトルの通り、気持ちの悪い内容でもあるので読む人はご注意を。
著者は主婦たちの犯罪を描いた「OUT」などでもお馴染みの桐野夏生。
この世のものとは思えない完璧な美貌を持つ、ユリコ。
そのユリコの影響下からずっと逃れられない、似ても似つかぬ姉。
その姉の独白から始まる。それ以降も、姉から怪物と言われたユリコの手記、
ある殺人事件を起こした中国人チャンの供述書、
同じお嬢様学校に通っていた哀れな努力の虫、和恵の日記、と
4人の主観と、客観、視点を変えて語られる各々の人物像に多少のズレがあり、
それがエゴの塊であり、自分優位であり、とことん醜い本音の掃き溜めなのだ。

 まず私は最初の独白する名前の明かされない“ユリコの姉”の主張に参る。
誰かの悪口と自分の愚痴をひたすらたれ流し、共感できる範疇を超える。
多少マシな印象を持つ人物が登場したと思ったら、すぐに彼女は失望する。
けれども彼女の語りようは、聞く者に自分への理解を要求しているようで、
しかし彼女の正直過ぎる性根は汚すぎて決して好感触は受けない。
はじめは読んでいても不快感が拭えないが、そのうち物語の本質を悟る。

 ユリコの手記に入って“得体の知れない美しい妹”の主張を聞く。
女は誰しも一度は娼婦願望を抱くという説は、正直私は理解できた。
自分の価値はどれ程のものか…と長々続く“女が娼婦になる理由”。
ユリコは最初から社会的な人並みの幸せは心底望んでいない。
“生まれながらの娼婦”で少女時代から節操のないユリコ自身には
共感はしないものの、割り切った上で人生を全力で生き抜く姿は凄い。
少なくとも、金品を盗んだり人を殺して生きる人間よりはマシである。
そして彼女は最期まで弱音を吐かず後悔しなかった。
普通の感覚なら「馬鹿で可哀想な女」にも思える。
自分自身は誰からも羨望の眼差しを受ける美貌を持っていたかもしれないが、
だからゆえに自分よりも美しいものを見つけることをしなかった。

 チャンの話す生い立ちとやらは、皮肉なことに一番共感し易いかもしれない。
生まれも育ちも貧しいが故の数々の苦労話。“苦労”では生ぬるい過酷さ。
列車のシーンは臭いまで体感できそうな位の妙なリアルさを感じた。
その後のユリコの姉、ユリコ、和恵の話の内容からは、
このチャンという人物がそれぞれ全く異なるイメージになっている。

 和恵の日記。彼女が一番サイコで恐い印象を受けた。
学生時代は空気の読めないウザさはあるものの、冷めた他の人物たちより
いくらか人間味があったものだが、社会人となり二重生活を送るようになり…
特に、自分自身を鏡で見つめて映っている自分と、他人が和恵を見る反応と、
こんなにもズレているのだとしたら、もう精神的にヤバイ。
実際にガリガリに痩せているのに、まだまだ痩せたい、痩せれば痩せるだけ
綺麗になれるのだと妄信している人も実際に結構いるのだ。

 この本を読み終わって思ったこと。
最初にユリコの姉の感情論には閉口したと書いたが、
実際にこんな劣等感やストレスを感じさせる血を分けた妹がいたら
性格が歪むのも仕方ないことなのかもしれない。
“処女の姉”と“娼婦の妹”両極端になるのも運命かもしれない。
ユリコの姉が同級生の和恵のことを親しくするフリをして内心では小馬鹿にし、
彼女に起こるハプニングにワクワクし、悪趣味な詮索や行動を起こすのを
私は何処かで観たことがあるのだ。そう、他ならぬ私の性悪な部分だ。
そして、成績優秀なミツルに憧れつつも、欠陥はないものかと色眼鏡で見たり、
散々な人生を辿り落ちぶれた姿を見て哀れに思いつつも
その彼女が徐々に社会復帰し、昔らしさを取り戻すことに焦燥感を覚え、
内心では醜く、妬み嫉み失敗を望んでしまうのだ。人は何て汚いのだろう。
この本の中には美しい人間はいない。誰一人として。
姉妹の祖父や木島先生?きっと彼らも内心を語らせたら似たり寄ったりだろう。
それは現実でも同じなんじゃないだろうか?そう思うととてつもなく憂鬱だ。
何でもかんでも人の欠点しか観ようとしないユリコの姉のようにはなりたくない。
他人を一切愛せず、愛さぬまま喜んで堕ちていくユリコのようになりたくない。
見栄や地位に惑わされて狂って果てる和恵のようにもなりたくない。
とにかくドロドロしていて刺激的ではあるけど極端に読む人を選ぶ本ですね。



      ジーキル博士とハイド氏 著者:スティーヴンソン

 医学、法学の博士号を持つ高潔な紳士ジーキルの家に、
いつの頃からか、ハイドと名乗る醜悪な容姿の小男が出入りするようになった。
ハイドは殺人事件まで引き起こす邪悪な性格の持ち主だったが、
ジーキルは彼を庇い、自分にもしものことがあったら財産を渡すとまで言う。
腑に落ちないジーキルの友人である弁護士のアタスンは
ハイドの正体と真相を探っていくうちに恐るべき真実に辿り着くのだった…
 人間の心にひそむ善と悪の闘いを二人の人物に象徴させ、
“二重人格”の代名詞として今なお名高い怪奇小説の傑作。

 話は有名だから知ってたけど、実際に小説を読んでみた。
映画「ヴァン・ヘルシング」や「リーグ・オブ・レジェンド」でのハイド氏は
巨大な身体に筋肉ムキムキの化け物じみた姿形だったけど、
原作である小説では小男なんですね。
しかも見る者を不快な気持ちにさせる嫌な雰囲気を持つという…
まず冒頭から弁護士アタスン氏の人となりの説明が始まって、
物語に入り込むのに多少苦労したけど、事件が始まってから面白くなった。

 人は誰しも悪の面を持ち、いけないと思いつつそこに惹かれる性質がある。
世間では人望厚い人格者で通るジーキルは何処かで別人になることを望み、
自分で開発した薬によって、その夢を果たした。
体型や容姿、声までも別人になり、正体がばれることなどない。
好きな時に変わり、自由に元に戻れるとしたら、凄いことである。
物語の悲劇は、ジーキルが彼をコントロールしきれずに、
薬も切れて元に戻れなくなったこと。
兎に角手紙を読むシーンが多かったと思う。
物事が済んだ後に、真相を手紙によって明かすってのも私好みですね。
こういう閉鎖的で精神的な短編小説は好きだ。
絵や映像にするのでも、セットに金はかからないし、
物語の雰囲気と磨かれた演技が要求されることだろう。
とまぁ言ってみたりするけど、映画は1本も観たことがないんです。;
今まで何作か作られててどれに手を付ければいいのやら。
ジョディ・フォスターが出演してる作品は、何か原作と忠実じゃないみたいだし。
私が好きな俳優で作ってくれるなら、そりゃ喜んで見るけど。



      スター・ウォーズ―新たなる希望

 元々、原作である映画が大好きなので、こちらも読んで見ました。
なるほど、物語の細部まで描かれているので、ファンには良いかも。
旅行先や電車の中とかでも、あの世界観に浸れるという!
でも、小説自体が素晴らしいわけじゃないですね。
あくまで、あの原作の映画が大好きな人向けです。
映画観たことなくて、この本に手を出しても世界が伝わらないと思う。
映画に忠実なノベライズとして、コアなファン向けな本ですね。

 ルークのタトゥイーンでの暮らしが描かれているのと
ルークの旧友たちのキャラが細かく設定されてるなーってのが見所か。
オーウェンおじさんたちの農場って水を作っていたのか…
映画では厳格な雰囲気のモフ・ターキンが小説では結構小物っぽかった。
レイア姫が絶世の美女として表現されてて、あの顔想像するとおかしかった。
それと、ハン・ソロはあくまでコレリア星人なのだなぁ〜笑
R2-D2の電子音の表現には書くほうも困っていそうだった。



        スター・ウォーズ―帝国の逆襲

 さて、その小説の続編、エピソード5にあたる物語。
映画とほぼ同じ話の展開だけど、ベンが映画よりも口出しが多いのと、
映画では温厚に見えていたヨーダが、若干キツイ性格になってる。
あと、ヴェイダー卿の気持ちになると、息子を追いかけたい気持ちがあって
役立たずな部下たちにイライラしてんのが伝わってきたかな(笑)

 ハンとレイアの口喧嘩も、お互いそれに慣れてきて楽しんできてる口ぶり。
カルリシアン男爵はハンサムな方だったんだなぁ。
クラウド・シティはガス生産してたのかーっと。
しかし今更ながら、何も聴くことがないのにハンを拷問するとは…
単にヴェイダー卿の趣味だったの?自覚なしで娘の彼を懲らしめてたの?
ルークと対峙してる時のヴェイダー卿は実に嬉しそうだなぁ。

 ケノービとヨーダがルークを引き止めるのだけど、
結果的に要らなかったとしても、助けに行かせるのは人情でしょうが。
それに修行を終えて精神的にも成長したとしても
やっぱり土壇場であの告白されたら、精神乱れて戦えなくなると思うし。
ここから、エピソード6の間に小説版では「帝国の影」があるんだけど
まだ手に入れてないんだよな…絶版になってるし。



            ハムレット 福田 恒存 訳


 城に現れた父王の亡霊から、その死因が王位を狙った
叔父の謀殺だったことを知ったデンマークの若き王子ハムレットは、復讐を誓う。
道徳的で内向的な彼は、日夜狂気を装い懐疑の憂悶に悩みつつ、
父の復讐の為に恋人を捨て、人を殺め、すべてを失っていく…。
数々の名セリフを残したシェイクスピア悲劇の傑作。
話を知っている上での感想ですので、ネタバレ云々は気にしないで書きます。

 おおまかな内容は知っていたものの、きちんと読んだことがなかったので
新潮文庫の100冊キャンペーンに便乗して購入。
以前、映画『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』を観たのだが
ハムレットの端役であるこの二人を主役に描いているわけだけど
最初は戸惑った。結局、中盤から引き込まれていったのだが…。
なので、きちんと学習し直してからまた観たいと思い、読むことに。
シェイクスピアの戯曲は大変有名だけれど、私が内容まで知ってるのは
ロミオとジュリエットとジュリアス・シーザー、ヴェニスの商人くらいだった。
元が舞台で演じるためか、凄く言葉がまどろっこしくて劇的で長い。

 ハムレットは凄く神経質であり、生真面目だけど軽率で、冷静で情熱的。
愛する父の為に復讐を決意するのだが、苦悩してばかり。
亡霊が居ては邪魔なのか、誓いをする際にコントのようなシーンが。
自分を産んだ母親が父が亡くなり叔父と一緒になったことを
それはそれは虫唾が走るがごとく我慢がならず、容赦なく母を罵倒する。
女なんて生き物は…ってなことで、恋人のオフィーリアに尼寺へ行けとまで。
この復讐劇には無関係なはずの兄妹は可哀想でしょうがないね。
ハムレットの行動で、結局多くの人が死んで幕が下りるわけだけど
こんな結末を先王は望んだのか、そもそもあの亡霊は本物だったのか。
見張りの兵士たちには見えていたが、妃が見ても判らなかった。
ハムレットに真実を告白する場面でも他の者は聴いていない。
彼が頭の中で作り上げてしまっただけなのか、
いや、叔父は一人のシーンで独白している。暗殺は事実。
などと、勝手にアレコレ考えてしまった。

 ローゼンクランツとギルデンスターンは本当に可哀想な役回りだなぁ。
王様から呼ばれて行ってみれば、幼馴染のハムレットの様子がおかしいとか。
真っ向から聴いても本人ははぐらかすばかり。
二人はハムレットが今の王を憎んでいることすら知らず、王に従う。
イギリスまで内容の知らない国書を持たされてハムレットを連れていき、
途中で知らずにハムレットに酷いことをされるわけだ。
呑気にイギリスに着いてみれば、訳も判らず処刑。
彼らを主役に映画を作った…この着眼点が素晴らしいね。

 「一羽の雀が落ちるのも神の摂理。
来るべきものは、いま来なくとも、いずれは来る。
いま来れば、あとには来ない。あとに来なければ、いま来るだけのこと。
肝心なのは覚悟だ。いつ死んだらいいか、そんなことは
考えてみたところで、誰にもわかりはすまい。所詮、あなたまかせさ」
この言葉が凄く印象に残ったね。
しかし、ハムレットは欺くために狂人の振りをしている設定だけど
普通にピリピリした人格の持ち主に思えるな。
何でも意見を合わせる家臣をからかったり、苛めたり。
もっと賢いタイプかと思ったけど、賢くないからこそ、あんな結末を迎えたのか。
ホレイショーが後に続きそうになった時、オイオイって突っ込んじゃったよ。
こういう流れをきちんと把握した上で芝居を楽しむってのもアリだね。



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