管理人NEROが映画について語ります。

Caramel Cinema


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I am Sam アイ・アム・サム (2001/米) 133分






 知的年齢が7歳のため一人で娘を養育するのは不可能だとして
ソーシャルワーカーによって愛娘と引き離されてしまった父親が、
娘を取り戻すために敏腕女性弁護士とともに
勝ち目の低い法廷闘争に挑む姿を描いた感動作。
知的障害者という難役を演じきり、アカデミー主演男優賞にノミネートされた
ショーン・ペンはもちろんのこと、娘役を演じたダコタ・ファニングの演技も
各方面で絶賛された。また、劇中では、シェリル・クロウ、エイミー・マンら
有名アーティストによるビートルズ・ナンバーのカヴァーが使用されている。

 知的障害のために7歳の知能しか持たない父親サムは、
スターバックスで働きながら一人で愛娘ルーシーを育てていた。
妻はルーシーを生むとすぐに姿を消してしまったが、
二人は理解ある人々に囲まれ幸せに暮らしている。
しかし、ルーシーが7歳になる頃にはその知能は父親を超えようとしていた。
そんなある日、サムは家庭訪問に来たソーシャルワーカーによって
養育能力なしと判断され、ルーシーを奪われてしまう。
ルーシーを取り戻したいサムは、敏腕で知られる女性弁護士リタのもとを訪ねるが、サムにリタを雇うお金などあるわけもなくあっさり断られてしまう…

 しまった…『ミスティック・リバー』観る前に見るべきだった。
ショーン・ペンがどうしても邪悪に見えてしまう。
知的障害者の役でアカデミー主演男優賞ノミネートだけど
『レインマン』のダスティン・ホフマンの猿真似に見える。
共演した知的障害者役の人たちの方がリアルに感じた。
こんな卑屈なこと思うなんて、私は多分ショーン・ペン嫌いなんだろな。
でも終盤、折り紙の壁から見えるサムの瞳は綺麗だった。

 ダコタはこれで有名になったよう。『アイアムサムの子』ってよく言われてる。
この頃のダコタは天使のように可愛い。混じり毛無いブロンドの髪が綺麗。
現在では、目の下の影が少し気になる…
ルーシーの名をつけたのも、サムがビートルズの大ファンだったから。
サムお得意のビートルズの話もよく出てくる。
BGMにビートルズの曲がいっぱい流れて嬉しかったんだけど
出来ればカヴァーじゃなく原曲が良かった。

 敏腕の女性弁護士役にミシェル・ファイファー。
ずっとジュリアン・ムーアだと思って観てたよ…似てない?
彼女も息子を持ってて、どう接していいのか判らず悩んでいる。
サムと接することで、この親子の絆も深まっていくんだけど、
私としてはこっちの交流の方が興味があった。
行き詰って本音をぶちまけるシーンとか、こっちの方に感情移入してた。
「辛いのはあなただけじゃないのよ!!」その通り。

 スターバックスで働いているの観るのはちょっと楽しかった。
これ観たらまた行きたくなってきた〜キャラメルフラペチーノ…
やっぱりドジを踏むサム…犬の散歩でも何故かハラハラしてしまった。
子供なだけに無茶ばかりするルーシーもね。
何だかだんだん、里親が可愛そうにもなった。
裁判のシーンで色んな議論が飛ぶ。子育てに最も必要なのは何か。
忍耐と、子供の話をよく聴くこと、不変であること、愛すること…
不利に見えた裁判に勝利する図を期待していたけど、映らなかった。
あのむかつく髭男を負かすシーンが見たかった…

 ラストは肩透かしを食らった気分。ま、いいんだけどさ。
泣けるヒューマンドラマっていう売り文句がよくない。
泣き所を無意識に捜してしまうし、映画商売みたいであざとい。
そんなに長くないんだけど、長さを感じる映画だった。
子供出産して即トンズラするなんて…あんな親っているのかよ!
ソーシャルワーカーの言わんとしてる事も判るんだよね。
愛情だけ注いでも良い人間になるとも限らない。
でも〆は一番良いまとまり方ではあったと思う。


アメリカン・ビューティー (1999/米) 117分








 第72回アカデミー賞で作品賞ほか5部門を受賞したファミリー・ドラマ。
あるサラリーマン家庭の崩壊劇を、陽気かつシニカルに描写。
現代人の抱える孤独感や不毛感を、可笑しさと残酷さを交錯しながら捉える。
ケビン・スペイシー、アネット・ベニング共演。
ある日突然リストラ宣告されてしまった、不動産ブローカーのレスター。
冷めてもうずっと性交渉を避け、触れ合ってもいない妻と
自分のことをけむたがる、理解の難しい年頃のひとり娘と彼の三人家族。
そんな中、娘のチアガール部の晴れ舞台を渋々見に行ったレスターは
娘の友人の女の子に目を奪われ、その日から彼は変わり始める…
とことん素直に前向きに、人生を楽しくやり直し始めたレスターだったが、
彼の変貌をきっかけに、平凡だった一家の生活も壊れ始める…

 ずっと前に友達の家で見せてもらった時は、変な映画だなぁ…でした。
数年経って、ふいに見返したくなったので鑑賞。
本当に、一度観ただけじゃ分からないものってありますね。
ヘソにバラ印象的なパッケージ。当時話題になってたけど
どんな映画か全然分からなかったし、タイトルには興味惹かれなかった。
ケビン・スペイシーも、この映画で初めて知った役者だった。

 変な映画です。でも、どこか可笑しくて、ロマンティックで
妙に酷な現実があって、そうそう、と頷く場面もあった。
脚本が良い…確かに。ゆったり流れるんだけど、何処も退屈は無い。
ちょっと哲学のような理論も混ぜてあり、でも
それを語らせるのが若者だから、説教臭いおしつけには感じない。
最後まで観てから、また始めを見返すと意識しなかったことも分かる。
この映画に込められたものも、何となく感じ取れた。

 あんなオッサンだけど、どこか妙にチャーミングで、アンジェラの言うことも判る。
鉄アレイ出してきて裸になったシーンを撮ってるの、おかしくてたまんなかった。
夜に窓の明かりで、部屋の中ってマル分かりなんだよねぇ〜
実際に生活してる人たちは全然意識してないけど、
ひょっとしたら、あなたの家の隣の家で…リッキーみたいな奴いるかも?
リッキーも、最初登場した時は眉毛太いし眼力凄くて気味悪いと思ったら
結構、男前なんで驚いた。
でもジェーン、相手がブサイクなオタク君だったら…どうよ?
美人の友達の引き立て役になって、自分を卑下してきた彼女。
二人の恋の模様も、ドキドキした。音楽も雰囲気を引き立てていた。

 レスターの妻のキャロリンの思いっきりっぷりも凄い。
ヒステリックで、何処にでもいそうな身近な母親であり、妻であり、女。
自分を奮い立たせるように独り言云うのが印象的だった。
ドライブスルーでの鉢合わせのシーンが結構好きだ。
普通に考えたら、あんな態度とセリフは出てこなかった。そこが好き。
それと、二人とも、上機嫌の時は運転しながら熱唱するのも。
やっぱ、誰でもやるっしょ?気持ちイイんだよね〜

 滑稽で、深くて面白い映画なんだけど、家族鑑賞には向かないね。
結構エロいシーンが多い。バラが舞うシーンでドキッとした。
窓の誤解のシーンも今では普通におかしくて笑っちゃうんだけど、
最初観た時は、やばいよ、やばいよぉ〜っ違うんだよ、て思って観てたもん。
アメリカの日常、平凡を描いていたけど、結構共感する面ある。
日本版の「ジャパニーズ・ビューティー」ってな映画も観てみたいかも(笑)
何気ない日常の中に見逃していた美しさ。
人生って何だろう?幸せって何だろう?今の自分は生きているのかな?
ふとまた見たくなる映画ですね。お勧めです。


アモーレス・ぺロス (1999/メキシコ) 153分






 「バベル」でカンヌ国際映画監督賞を受賞した
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの長編映画デビュー作。
3つのエピソードを時系列バラバラに綴っていくシビアな人間ドラマ。
その作品の傾向から、“メキシコのタランティーノ”というフレーズも使われた。
最近油ののってきたガエル・ガルシア・ベルナルの長編映画デビュー作。
原題は「犬なみの愛」という意味。各エピソードにも犬が登場する。

 メキシコのダウンタウンに住むオクタビアは兄ラミロの妻スサナに恋心を抱き、
兄の日頃の家庭内暴力の激しさと幼い赤ん坊を養うのに疲労していたスサナは
次第にオクタビアに心を許しはじめていた。
オクタビアは偶然が重なり、自分の飼っている犬が闘犬として使えることが判ると
犬を使って博打で金儲けを始めて、駆け落ち資金を貯めていくのだが…
 スペインから来たモデルのバレリアは仕事も順風満帆、
不倫関係だったダニエルも家庭を捨てて自分を選び、二人の暮らしが始まった。
そんな幸せの絶頂の中、ふいに絶望のドン底に突き落とされる事件が…
 町を捨て犬たちと徘徊するホームレスかぶれの老人、エル・チーボ。
殺しの依頼が舞い込めば鮮やかに標的を抹殺する彼の過去とは…
3つのエピソードが交差点の交通事故を通じて交わり、運命を狂わしていく。

 「バベル」を見た後、この監督に興味がわいたのでレンタルして拝見。
作品の構成が「パルプフィクション」を思わせるものの、こちらはかなりシビア。
見ていて、心が締め付けられる辛さがある。犬好きは更に辛い。
痛々しいほどの本音のぶつけ合いや醜い本性…
なんとも残酷な展開に、2度目観るのを躊躇してしまう映画。
場末の空気、汚れ、生々しいメキシコの荒々しい描写が現実味がある。

 
兄を憎み、死んでも哀しまない弟だが財布には仲良く映る兄弟の図。
自分が闘って勝つと人が、主人が大喜びする。その染み付いた感覚は
恩を仇で返し、自分と同類の仲間ですら無残に噛み殺してしまう犬。
心の拠り所を奪われ憎しみで犬を殺そうとするものの、その手を止める。
犬が穴から出てこない、身体が動かせない、孤独、かつての栄光を思う辛さ、
順調に行けば回復できたのに、精神を病み、その足を失ってしまう悲劇。
腹違いの兄弟を暗殺依頼し、醜く罵り合い銃声が響く。
娘にそっと伝言を残し、犬と荒野を行く老人…
強く印象を残す場面が多く、この映画が評価高いのもうなづける。
スラムの街角で繰り広げられる犬同士の殺し合い、それを煽る飼い主と野次馬。
大量の血を掃除している様、いかに映画といえども、恐ろしいことだ。
見終わった後、メイキングシーンを見てホッとしたくなる。…ホッとした。
登場人物たちは皆、自分の欲望で愛しい相手を破滅させている?
“一人よがり”というか“身勝手”というか…そんな言葉が浮かんでくる。

「21g」も宣伝だけ見たが非常に重い映画だと思うんだけど、
この映画も相当重い。そして退屈な箇所は無く全然眠くはならなかった。
撮り方が上手いのかも。実際に起こっている出来事を見つめている気にさせる。
この人の作品にはこれからも注目していきたいと思う。
なかなか奥深く味のある作品なので、コアな映画好きにはお勧めです。


生きてこそ (1993/米) 126分








 ドキュメンタリー「人肉で生き残った16人の若者/アンデスの聖餐」(75)
でも描かれた1972年の旅客機墜落事故を、20年後にハリウッドが映画化。
極限のサバイバルをセミドキュメンタリー・タッチで描く。
飛行機の墜落シーンを始め、リアルな絵造りが最大のポイントで、
セットではなく実際に雪山で撮影されたシーンの重みには圧倒される。
当時の生存者がアドヴァイザーを務めた功績は大きい。

 監督を務めたのはBTTF三部作に製作参加し、
最近ではボーン三部作の製作にも参加しているフランク・マーシャル。
主な出演者はイーサン・ホーク、ジョシュ・ハミルトン、ヴィンセント・スパーノ
ブルース・ラムゼイ、ジョン・マルコヴィッチも語り部として出演。

 小さな45人乗り小型飛行機がロッキー山脈で墜落。
後尾は飛ばされ、機内は死傷者と奇跡的に助かった者たち。
彼らはチリにラグビーの試合に参加するはずだったラグビー部の面々と家族たち。
生き残った生存者たちで極寒の雪山、飢えと寒さと怪我で苦しみながらも
何とか皆で協力し救助を待つものの…

 誰にでも起こりうる最悪の惨事…もしそんな事態に直面したら…
叫びも少なく、乗客は成す術もなく吹き飛ばされていく。
飛行機は雪山にぶつかり、あちこち大破し、雪の上に不時着する。
さっきまで機内で遊びはしゃいでいたのが嘘のような光景。
死者を運び出し、雪の上に並べる…怪我人の手当てをする。
椅子に挟まれ、痛みに嘆く人や血を流していく負傷者。

 夏に見たのだが、これを冬に暖房無しで鑑賞していたらどんなに怖いだろう。
下手なホラーよりも怖い、救いの無い状況。死を間近に感じる感覚。
現実に起こった実話であり、結末は判っているものの
絶望的な状況を一緒に体感しているような映画の作り。
救助隊や帰りを待つ家族たちのことは一切判らない。

 こういう場合、リーダーを決めておくのは大事だ。
食料管理も、誰かを信頼して任せた方が良い。
そして皆が協力し合い、助け合わなければ雪山に殺される。
救助隊の望みも薄くなり、彼らは究極の選択を迫られる。
淡々と、最初に言い出したのはナンドだった。
戸惑い、拒絶するのは当然だけれど、生きてこそ…そう、生きる為。

 救助隊が何日かして救助を打ち切るのだが、
心配している家族にとっては死んでいても見つけ出して欲しいと思うはず。
でも相手が雪山で場所が特定できない以上、捜すのは絶望的だろうか。
助けを待つ仲間たちの為にアンデス越えを敢行し、雪山を越えてゆく
自然界の力の前では人間はあまりにも無力だ…でも
不可能ではない、可能なんだと訴えるナンド。
…そういえば『ガタカ』にも似たメッセージがあった。
ヘリが現れた時点で、自然に涙を流していた自分がいた。
映画を観て久しぶりに泣いた。
そしてエンディングの「アヴェ・マリア」の曲で感極まった。
作品自体はとても重く、事実なだけに安易に語れない。

 DVDのメイキングで当時の様子や事件の体験者の話が出る。
「人肉を食したのが罪だとは思っていない。
だが誰の肉を食べたかは絶対口外できない。遺族のことを考えたら当然だ。」
実際に飛行機事故で死んだ乗客も生き延びた乗客も
事故が起きる以前と同じように小さな町で暮らしを営んでいるとか。
近所に親戚や家族もいるし、遺族の家族とも会っている。
帰還した時は奇跡のヒーローと称えられ、生存した手段として
死んだ乗客の肉を食していたことが公にされ、非難する人もいたらしい。
でも誰が非難できようか。その状況にいた者でなければ判らないのに。

 そして、彼らの凄いところは飢えを満たした後に
行動を起こす所です。まだ望みを捨ててはいない。帰るんだ!
生きる望みもなく、飢え、本能のみで人肉を食しただけなら
彼らは最早、理性を失った獣に映ってしまうかもしれない。でも、そうではない。
「もし自分が死んだら、自分を食べて構わない」そう誓い合った。

 「手紙を書いていた人は死んでいった。どんなに励ましても
元気に見えてはいても希望を捨ててしまえば生きる力は失われるんだ。」
過酷な状況に置いても生きようとする人間の生命力には真に驚かされる。
墜落現場から助けを呼びに行くにしても一人では不可能。
共に助け合い、励ましあえる人がいたからこそ、たどり着けたんだと思う。
生き残った16人はそれぞれ違う心の傷を抱え、
それぞれ違った解釈で事実を飲み込み、暮らしていくのだろう。

簡単に薦められる作品ではないが、観る価値は十二分にあると思う。
嫌いではないが、もう二度と観ることはないだろうと言う人もいる。
グロ系の映画では無いのに、それだけショッキングな出来事だからでしょうか。
けれどこれは、希望を捨てずに生きることの素晴らしさを語る映画でもあります。


イン・ハー・シューズ (2005/米) 131分






 ジェニファー・ウェイナーの同名ベストセラー小説を
キャメロン・ディアス、トニ・コレット主演で映画化。
監督は「L.A.コンフィデンシャル」「8 Mile」のカーティス・ハンソン。
地味で自分の容姿に自信が持てず、仕事人間な堅物の姉と
外見が美しく、モテモテだが定職に就かず遊び呆けている妹。
対照的な姉妹がそれぞれお自分の人生の転機を迎え、
自分らしい生き方を見つけていく物語。
姉ローズの家に居候して嫌々ながら仕事を探していた妹のマギー。
ある日、姉の恋人に手を出してしまい、家から追い出されたマギーは
最近まで死んだと思っていた祖母の家を訪ね、老人介護の仕事を任される。

 宣伝だけ見ていた時は、宣伝であらかた筋が判ったし、
そんなにインパクトもなかったんだけど、実際に観てみたら良い映画でした。
何よりも、自分の居場所を捜している人には身に詰まされる話であり、
劇中に何度か、ハッとさせられるセリフが多々ある。
キャメロン・ディアス主演ってことで最初は真剣に観ていなかったんだけど
観ている最中に、結構深刻なテーマにドキッとして、姉妹の行く末に夢中になり、
ラスト近くになると自然に一筋の涙が流れて、自身に希望が込み上げてきた。

 姉妹共、結局は弱い部分を持ってて、不器用で、だけど優しいのだ。
祖母と父親の、母親の死に関する因縁が絡んで少し複雑だけれど、
姉の部分はちょっとしたハートフル・ラブストーリーな感じで、
妹は恋愛しか知らなかった女性が他の大切なものたちに気づかされる話。
3つの要素がうまくリンクして、なかなかの良作に仕上がったのですな。
アメリカ人が寿司屋で食事するシーンが結構興味深かった。
ああいう形式で注文して食べるのか〜ふむふむ。
MTVのアイドルオーディションにキャメロンが出てるのもツボ。
私のオツムが弱いせいなんだろうけど、あの結婚式で読み上げた詩、
判りにくくない??何か、言ってる深い意味は理解不能でした…あは。
マギーは結構ローズに対して酷いことしてるよなぁ…普段も、
そして、いくらなんでも寝ないよな?って思ったらホントに寝ちゃうんだもん。
恋に奥手だった姉がやっと見つけた相手だったのに…
ローズの言う、「若いのは今だけよ。老けたら相手にされないわ」云々
言われた言葉もマギーには相当グサッと来ただろうけどね。
最初から私はジムより車からひょこっと顔を出したサイモンのが素敵だなと思った。
マギーはその後、お約束にあのひょっこり出てきたじいさんの孫の
将来有望な医者君とお近づきになるんだろうな。映画とはいえ、羨ましい(笑)


 都会と田舎で雰囲気が全く違うロケーションだったのも良いね。
老人ホームは天気良くて、緑と青の爽やかな楽園って感じがした。
法律の都市フィラデルフィアと楽園マイアミって対比かね。
あんなじいさんばあさんになって老後暮らししたら幸せだろうな〜
描き方が丁寧で素晴らしい。特に女性にはオススメな作品ですね。


海の上のピアニスト (1999/伊・米) 125分


 「ニューシネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督作品。
主演はティム・ロス。
下船していった客が残していった籠の中に赤ん坊が発見された。
新世紀1900年にちなんで「ナインティーンハンドレット」と名づけられた彼は
船の上で生まれ育ち、一度も陸に降りたことがないピアニスト。
彼の創り出す聴いたことのない音楽に評判は広まっていく…

 最初は全く興味の無い映画で一生見ないと思っていた。
当時はティム・ロスを知らなかったしピアニストの話なんて…と。
ジャケットやストーリーの流れを見ても惹かれるものはなかった。
だけど大きな間違い!この映画は名作と呼べる代物だと思った。
豪華客船が舞台の映画は「タイタニック」とこれしか観たことないかも。

 彼の住む船でトランペットを吹いて一緒に働いていた友人が
仕事も無く途方に暮れ楽器を質屋に売り払おうとしてこの物語が語られる。
何だか古臭い映画だなと思ったけど1900が出てきた所から
映画鑑賞の邪魔となる嫌な思考はぶっ飛んだ。
船と一緒にぐるぐる周るシーンはユニークで楽しい。
ティム・ロスはつくづく凄い俳優なんだな。
ピアノは弾き真似らしいですが、本当に演奏しているかのような
自信と情熱に満ちた指使い。素敵な音楽を奏でていた。
ピアノ決闘のシーンは圧巻…決着シーンは爽快感抜群。

 観てよかった。そう思った作品は珍しいと思う。
きっと心に何かあったとき、この映画を再び観たくなるだろう。
実話ではないけど、御伽噺のような物語だ。大切にしたい。

 1900が初恋をする場面だけでも切なく純粋で美しい。
彼女と深い仲になれたなら、彼も最後は違う選択が出来たのかな…なんて
あのラスト、私もちょっと納得がいかなかったんだけど
最後に出てきた1900は長い間隠れていたにしては服装が綺麗だし
健康そのもの。無精髭も生えていない。そこで思った。
最後に出てきた彼は、
船に残った彼の魂が見せた幻みたいな存在ではないだろうか
友達の呼びかけに答え、彼が一人の時に現れた。
そしてあの語りで友人のこれからを勇気づけたようにも思う。
誰でもああいう瞬間は訪れる。
喜び勇んでテロップを歩き新世界に降り立つ人、
避難してきたかのように降り立つ人、無理矢理降ろされるような人…
自由の国アメリカに夢と希望を抱き沢山の人が降りていくのを観てきた1900
下船を拒んだ彼は云う。「無限に広がる存在が怖くなった…
この広い世界でたったひとりの女性、たったひとつの家、たったひとつの生き方
…選べない。」彼の云う事は理解できる。
でも普通の人は選べる。何度か間違っても選んで体験してきた。
挫折や苦労もあって最終的にこれだと選べるとは限らない。
彼にとってはあの船が世界。ピアノを弾けば世界が見れる。
無理矢理降りても彼は幸せになれなかったと思う。だから、納得したい。


エレファント・マン (1980/米・英) 124分


 有名なこの映画を観ました。
なんでも実話だそうで…こんなことが実際にあったんだな
アンソニーホプキンス若い!

 なんか、どういう気持ちで自分が観ているのか判らなくなる映画でした。
どういう気持ちでこの映画を理解すればいいのか…そうも思える。
母親が妊娠中に像に踏まれたと言われている奇形児として生まれた男。
見世物小屋でエレファント・マンと呼ばれていた男の話

 たまんなく悲しかった。
生まれつきの外見はどうしようもない。でもこれは普通の立場じゃ決してない。
けれど、ジョン・メリックは楽しいことも経験したはずだ。
その分、今までよりも深く心を突き刺すものもあったかもしれないけど…
人の醜さがよく判る映画…
結局は彼を哀れんで助けてくれる医者も、
自分の行為が偽善に過ぎないのかと疑ってしまう部分とか…
同情するのが必ずしもいいことでもないしね。
あの女優さんの本心が汚いものだとは思いたくない。
でも、映画の最後のシーンですべてが許されたような気がした。

 自分がもし…なんて考えたら…
だって、彼がそうなのはどうしようもなくて、治すこともできないわけで
うまく言えないけど、考えさせられる内容でした。


ALWAYS 三丁目の夕日 (2005/日) 133分








 西岸良平の人気コミック『三丁目の夕日』を映画化した人情ストーリー。
誰もが明るい未来を信じていた昭和30年代の東京下町を舞台に、
個性豊かな人々が織りなす心温まる人間模様を綴る。
広大なロケセットに加え、「ジュブナイル」「Returner リターナー」の山崎貴監督が
得意のVFX技術を駆使し、当時の街並み・風俗をリアルに再現。

 昭和33年、東京下町の夕日町三丁目。
ある日、鈴木則文が営む自動車修理工場・鈴木オートに、
青森から集団就職で上京した六子がやってくる。
しかし、思い描いていたイメージとのギャップに、少しがっかりした様子。
その鈴木オートの向かいにある駄菓子屋の店主で、しがない小説家の茶川竜之介。
彼はひょんなことから、一杯飲み屋のおかみ・ヒロミのもとに連れてこられた
身寄りのない少年・淳之介の世話をすることになるのだが…

出演者は吉岡秀隆(文学)、堤真一(鈴木オート)、小雪(ヒロミ)、
堀北真希(六子)、三浦友和(宅間医師)、薬師丸ひろ子(鈴木オートのおかみさん)、
須賀健太(淳之介)、小清水一輝(鈴木一平)
端役に、木村祐一、ピエール瀧、奥貫薫、石丸謙二郎、小日向文世…

 評判の邦画、ってことで家族で映画館に観に行きました。
正直、期待は全然してなくて、むしろ批判的な気持ちで鑑賞したんだけど、
まんまと、やられてしまいました。笑いと涙の波が交互に来て…凄かった。
吉岡秀隆は個人的にあまり好きじゃないんだけど、ハマリ過ぎてて…
堤真一も、ド凄い演技に圧倒され、パワフルなおとうちゃんがグッジョブ!
須賀健太の泣きには、とことん弱い私であった。
とりあえず、数々あった泣き所を箇条書きしていくと…
1、最初に、子供たちが飛行機飛ばすシーン。
(戦後、焼け野原からここまで発展して今に繋がっていくんだなぁって…勝手に感動)
2、鈴木オートの社長と六ちゃんの和解。
(そうだよ、大切なのは技術じゃないよ…心意気だよ!って応援したくなった)
3、医者の宅間先生が酔って見た奥さんと子供の夢。
(それでも悲しみに暮れないで飄々と生きてるんだなぁって。泣かなかったのも来た)
4、初めてテレビがやって来て、大騒ぎする町の人達
(この頃の衝撃と感動…近所同士がこんな仲良しなのも微笑ましい)
5、帰りの電車賃がなくて、寒さに凍えてた二人。一平が見つけたお守り。
(一平が泣き出す所と、お母ちゃんの字が見えたシーンで目頭熱くなった。)
6、クリスマスプレゼントを貰って喜ぶ淳之介
7、茶川がヒロミに渡した指輪。凄いロマンチック、ヒロミも美しくて…
(手を光りにかざして「綺麗…」って言ったシーン…無性に切な過ぎて泣けた)
8、淳之介と別れたあと、必死に後を追いかける茶川
(宣伝でも流れてて、あざといぜと思っていたにも関わらず、大泣きしてしまった)
9、実は…と手紙を渡されて涙ぐむ六子、駅まで見送る鈴木一家。
(産んだ親と、親代わり的存在の社長さんと奥さん。親子の絆を両方かみしめた。)
10、夕陽はいつになっても変わらずに、綺麗だ。って〆
(ベタかもしれないけど、最高のラストと思った。ヒロミとも、きっと会える!感動した。)


 10箇所もある映画ってそうそう無いな…うん。
昭和のレトロな町並みも見事だし、(多少、時代考証で突っ込み所はあるらしいが)
作りかけの東京タワーっていうのが、また良かった。
ギャグもいちいち、笑ってしまったしね。感動映画ってうよりも
ほのぼのギャグ映画で宣伝した方がよかったんじゃ。悪い所が見つからないです。
家で見れば充分なジャンルだと思っていたけど、昭和の町並みを画面いっぱい、
タイムスリップしたかのように思いっきり入り込んで堪能できる。
この世代の人を連れて観に行けば、皆でほんわかあったか気分になれますよ。


ALWAYS 続・三丁目の夕日 (2007/日) 146分






 西岸良平の人気コミックを実写映画化し大ヒットした人情ドラマの続編。
前作終了時点から4ヶ月後の東京下町を舞台に、
夕日町三丁目に暮らす面々の人間模様をノスタルジックに描く。
監督は引き続き「ジュブナイル」「Returner リターナー」の山崎貴。
出演者は前作メンツの他、吹石一恵、温水洋一、上川隆也、渡辺いっけい等。

 昭和34年の春、日本は東京オリンピックの開催が決定し、
高度経済成長時代を迎えようとしていた。
そんな中、東京下町の夕日町三丁目では、
茶川が黙って去って行ったヒロミを想い続けながら淳之介と暮らしていた。
そこへある日、淳之介の実父である川渕が再び息子を連れ戻しにやって来る。
人並みの暮らしをさせることを条件に改めて淳之介を預かった茶川は、
安定した生活と共にヒロミへ一人前の自分を見せられるよう、
一度はあきらめていた“芥川賞受賞”の夢に向かって執筆を始めるのだった。
一方、経営が軌道に乗り始めていた鈴木オートでは、
事業に失敗してしまった親戚の娘・美加をしばらく預かることになる。

 下手な続編は前作の価値を下げる。二匹目の泥鰌、私には不味かった。
これ以上、あの人物たちのその後を描写する必要はなかったんだね。
前作の終わり方で、途中だと感じる人は違和感ないんだろうけど、
私には、まさに蛇足と感じた。
ヒロミが茶川の所へ帰ってきて
三人仲良く夕日を眺めるシーンは要らなかった。
何故なら、前作のラストで、いつかそんな日が来ると想像できたから。
その未来を想像させて明るく終わったのに、わざわざ見せられるとガッカリした。
鈴木オートにやってきた少女が徐々に大人の手伝いをし始め、
変わっていくくだりは別におかしくはなかったが、何故銭湯や映画館を、
表面だけ見せるのか。皆思ったはずだ。もっと中を見せて!と。
戦友会に行くくだりも、酒を飲まない不自然な戦友との晩酌も、
とっくに想像がつく。で、結局王道。そのまま。なめてんのか。
橋で偶然昔を思い返していたらアッサリ登場した戦争で生き別れた男。
何なんだ、あれは。何をしたいんだ。おかしすぎる。
ヒロミが甲斐性ナシな茶川にすら会いに行くのをためらう程の場末なダンサー。
しかし、どういう風俗ダンサーなのか分からない。踊ってるシーン要るでしょ。
妬み丸出しのダンサーも、先が読める。設定分かり易過ぎる。
芥川賞のくだりも、ちゃんちゃらおかしい。
見事にサギられるシーンも判り易過ぎる。観てるのがバカバカしくなった。
川渕が小説を、皆がガン見してる中で全文読み始めるのも無理あるし、
こだまに乗ってるヒロミがあれを読んで即行で帰ってくるのも不自然。
借金肩代わりして風俗の女を見受けしたいっけいの立場はどうなるんだよ。


 しかし須賀健太、背伸びたなぁ。鈴木オートの子が低すぎるのか?
気のせいかもしれないが、前作よりも茶川が嫌な奴に見えた。
オープニングの例のものの出演も話題になったね。
ああいう演出は嫌いじゃないが、髪を逆立てるのはやり過ぎだ。
思うに、他の新キャラクターたちを主役にやった方が良かったんじゃないか。
前作の栄光にあやかり過ぎ。2っていうより1の+αって感じです。
これ以上続けるなら、レンタル待ち組になります私は。
流石にね…馬鹿にされてる気がしたよ。この演出具合は。


同じ月を見ている (2005/日) 106分








 土田世紀の同名コミックを東映が映画化。
転落事故からの復帰第一作となる窪塚洋介主演。
共演は「インファナル・アフェア」シリーズのエディソン・チャンと黒木メイサ。
監督は「バトル・ロワイアル II〜鎮魂歌(レクイエム)〜」の深作健太。
他に、山本太郎、松尾スズキ、岸田今日子…

 10歳の時に出会った恋人・エミの心臓病を自らの手で治したい一心で
医者の道へ進み、今は研修医として働く青年・熊川鉄矢。
エミとの結婚を目前にしたある日、鉄矢のもとにある報せが届く。
それは、もう一人の幼なじみ・ドンが刑務所を脱走したというもの。
7年前にエミの父の命を奪った山火事事件の犯人として服役していたドン。
彼には人の心を絵に描き、その人を癒してしまう不思議な力を持っていた。
そんなドンの純粋で優しい性分に、鉄矢はエミを奪われてしまうのではないかと
不安を募らせていったのだった。ドンの脱走の報せに、鉄矢の心は激しく動揺する…

 凄い待ち焦がれていた作品でしたね。復帰作ですから。
待ちきれなくて先に復刻された原作漫画を買って読んだんですが、
これまた凄い話で、終わりまで読んで泣いていた自分がいました。
監督が彼なのがどうも腑に落ちませんでしたが、それでも期待は募った。
でも公開されて評判が宜しくないので覚悟して映画館に足を運んだわけですが。
…やっぱり納得いかない作品になってしまった。非情に残念です。

 原作を読んでいる立場と知らない立場では多少印象も変わると思います。
一緒に鑑賞した友人は知らない立場だったわけですが、結構好印象だったらしい。
私も冒頭からの窪塚洋介を見ただけで、ちょっと嬉しかったり。
久々に大画面で彼を拝んだわけですが左右の瞳の感じが違うのが気になった。
演技の方は相変わらずですね。「みーつけた」には少し驚いた。
原作の鉄矢の方が嫌悪感あるので、もっと悪いキャラが良かったかも。
でも映画は映画。自分なりに厳しい視点で見たつもりです。
原作が1〜7巻分もあるので、そりゃまとめるのは大変だろうけど…
あのシーンは削って欲しくなかった、あのセリフが聞きたかった、って連続。
このシーンは妙に中だるみしててテンポが悪く感じた、とか
脚本も演出も粗が目立って、どうにもまとまりの無い作品になってしまった。
エディソンが言葉の少ないドンちゃんの役をなかなか上手に演じてて好感持った。
黒木メイサは…悪いけど演技にかなり問題あり。感情入ってなくて残念。
山本太郎も好演していたんだけど、金子のエピソードが少なすぎて
原作のあのシーンでの悲壮さが出なかった。
松尾スズキはちょこっと出演だけど、あのおっさん好きだ。

 では、ここから突っ込ませて頂きます。
タイトルがそれだからって、やたらと意識して月見上げるのはやめてくれ。
狙ったように音楽流れてきて、後半から逆に笑えてきたよ。
トンネルでの鉄矢の、やたらとウロウロする動きが気になった…
「俺に一生残る罪悪感を背負わせようって肝だったんだろ!」は言って欲しかった。
「人殺し!」って君が我侭言うからお父さん死んじゃった、って形になってた。
漫画では気を失って無意識に喋ってお父さんが行っちゃったわけだけども。
ドンがエミのことを大好きで、鉄矢も同じくらい大好きなんだ、って描写に欠ける。
「一緒だ!ずっと一緒だ!」や「テッちゃんはずっと友達でいてくれたから…」とか
結構大事なエピソードだと思うんだけど…1時間増やしてでも入れて欲しかった。
鉄矢が主人公な割には、大事なセリフ、行動、主観を伝える術が無さ過ぎて
普通に見ても感情移入できない。ドンちゃん主役で良かったんでは。
エミの揺れ動く気持ちも全然判らないので、然程大事なキャラな気がしない。
金子さんがすぐ“良い人”になったので、ドンちゃんの影響力があまり栄えない。
ドンを殺そうと思った鉄矢に、何故簡単に居所教え合おうとか言い出すのか変だし。
ラスト火事のシーン、消防団がいなくなったのは不自然…あえて許すけど。
鉄矢、結局ちゃんとドンちゃんに謝ることが出来ないまんま…じゃん。

ドナーカードの伏線も無いので、何故心臓移植になるのか説明なし。


 ラスト近くの炎の中での熱演が、ただ妙に胸に来て、結構ジーンとは来た。
三人の子役の子たちも結構様になってたから、そこも良い。
エミ役の子の眉毛が凄く気になったんですけどね。
ラブストーリーとしても、友情ものとしても弱いし、
印象に残ったのは矢鱈と映る月と炎と、ドンの描く絵。
絵だけは、原作と違って見れるので新鮮。成長したドンの絵はうまいしね。
観に行った劇場はガラガラで、二人きりで貸切状態でした。
内容も確かにこれじゃ、自信を持って薦められる作品じゃないですね。
漫画はよく心の言葉をよく使っていたのでキャラの心情も汲み取れる。
映画を観て、漫画の方に興味を持って、読まれることをオススメしますね。
まだメイキングDVDの方が見てて楽しかったかもしれない。
こういうものだと割り切って、2回目からは多分味が出てくる…かもしれない。


かもめ食堂 (2005/日) 102分






 デビュー作「バーバー吉野」が注目を集めた荻上直子監督の
「恋は五・七・五!」に続く長編第3作目で全編フィンランドロケのほのぼのドラマ。
主演は小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ。
共演に「過去のない男」のマルック・ペルトラ。(ヘルシンキ出身)
原作は、作家・群ようこが映画のために書き下ろしたオリジナル・ストーリー。

 フィンランドのヘルシンキの街角に“かもめ食堂”という
小さな食堂をオープンした日本人女性サチエ。
シンプルな“おにぎり”を看板メニューに、フィンランドの人にも
日本食のおいしさを伝えたいと張り切るが、なかなか客は来ない。
それでもめげずに淡々と営業を続けるサチエは、
やがて訳ありな2人の日本人女性と出会うのだった。

 なかなか評判のミニシアター系だそうで。
フィンランドは日本から飛行機で最短10時間で行けるヨーロッパの端。
かもめのアップから港が映る始まりで、ちょっとワクワクする。
行ったことのない国を舞台に、日本人が主役だからね。
静かでのんびり、ゆったり時間が流れていく映画。
決して派手な展開はなく、雰囲
気とセンスを楽しむ作品。
豚身昼斗念君にはちょっと和んだ。コーヒー永久タダか…いいな。
現地の人が店にいるのを見ると通りかかる人も入り易くなるというもの。
後からお手伝いすることになるミドリさんが新メニューのアイディアを出すものの
イマイチ…でも後日、急にシナモンロールが登場。
野次馬おばさん3人が匂いにつられて来店してくるシーンはとても
微笑ましくて、見ている方も焼きたてのシナモンロールの匂いを想像しちゃう。
お客が来なくて寂しかった店がどんどん繁盛していくだけでも
地味に感動的だったかな。静かで淡々と流れているんだけど。
マサコさんのスローな喋りと、現地で買った格好いい服と、
森でつむキノコ、謎の老人から貰うネコ、何だかファンタジーだな。
3人も、そして夫に逃げられた妻もオタク少年もコーヒーおじさんも、
何か心の奥底に持っているんだけれど、それを深く掘り下げないで、
立ち入らないで、ただただ優しく料理をふるまい、癒しのひとときをあげる。
そんな印象。この映画にはヤマもオチもなくていいんだな。
藁人形のくだりや、茸がトランクに入っていたり、若干妙なスパイスが入ってる。
「荷物に…大切なものが入っていたかしら?」過去のしがらみだったのでしょうか。
冒頭にあった話から、むしゃむしゃと食べる大柄な客とか登場するのかと
思ってたけど、結局はあんまり意味なかったんだね。
コーヒー不味い?料理不味い?他店からクレーム?茸が毒入りじゃ…
などなど色々勘繰っても何も起きずに過ぎていく。
見る人によっては退屈かも。

 見終わると無性にシナモンロールとおまじないしたコーヒー、
おにぎり3個セット、などなど劇中に出てきた料理が食べたくなる。
フィンランドにも行ってみたくなるでしょう。白夜を裸眼で見つめてみたい。
主役はおばさん3人だけど、これを現在売り出し中の若手女優とかが演じたら
この映画の良さが失われてしまうんだろうな。この人達だから良いのだ。
片桐はいりがマトモな役をやっているのも珍しいし、
小林聡美は観てるうちにとっても魅力的に思えてくる。
もたいまさこの鈍いような、天然のような、でも芯はある雰囲気。
日々の義務に追われ、心が疲れててボーっと過ごして見たい方にはお勧め。
邦画はたまに、邦画にしか出来ないこういう映画が作れるから良いのだ。


空中庭園 (2005/日) 114分




 直木賞受賞の人気作家・角田光代の“家族”をテーマにした
第3回婦人公論文芸賞受賞の同名連作短編集を小泉今日子主演で映画化。
監督は「青い春」「ナイン・ソウルズ」の豊田利晃。
共演に板尾創路、鈴木杏、弘田雅裕、國村隼、瑛太、
今宿麻美、勝地涼、ソニン、永作博美、大楠道代。

 “ダンチ”と呼ばれる東京郊外のニュータウン。そこに暮らす京橋家では、
“家族の間で隠し事をつくらない”というのが一家のルール。
だが内実は、それぞれ誰にも言えない秘密を抱えていた。
娘のマナは学校をサボって遊び歩き、見知らぬ男とラブホテルに行き、
弟のコウも学校をサボりがち。また父の貴史は浮気に走り、
妻の絵里子は母との長年の因縁に悩んでいた。
そんなある日、貴史の愛人ミーナがコウの家庭教師として京橋家に現われ
それをきっかけに、家族の歪みが少しずつ表面化してゆく…。

 評判が良いので拝見。この監督のことだから、また無駄にグロかと思ったら
今回は視覚的なグロさじゃなくて(それも多少有けど)精神的なグロさを描いてる。
キョンキョンはますます演技が上手になってきたような気がする。
裏表の無いお母さん、妻、主婦を演じながら、闇を抱えている。
最終的には「何だ、なんてことないじゃん」な解決みたいな形だったけど、
オープニングのホワホワして地に足が着かない感覚がずっと続く。
ソニンもすっかり汚れが似合う配役になっちゃったなぁ〜。

 これもぶっちゃけ、見た後に何も残らないようなタイプだけど
肉をそぎ落とし合うかのような醜い本音のぶつかり合いをした後でも、
時間が経ったらいつもの日常に戻ってしまう家族の奇妙さはよく出てる。
誰しも思春期とか、疑問に思ったはず。友達同士だったらきっと、
それ以降、気まずくなって距離を置き、離れていったりするんだけど
いつも同居してる家族となると、次の日、その次の日と過ぎていくと
ふとした朝、喧嘩の前の日常に戻ってしまっているのだ。
勿論、直接謝ったり家族会議で解決する家族もいるんだろうけど、
うちの場合はこういう展開が多い。内心お互い反省すべき点は反省するけどね。
全体的に嫌いじゃないんだけど、
血のように赤い豪雨の中、絶叫するシーンは
正直、耳が痛くなったし、あんな場面入れなくても良かったんじゃないか
と思う。
この監督、やっぱりこういう映像撮りたくて仕方ないんじゃないの〜なんて。


クジラの島の少女 (2002/ニュージーランド・独) 102分






 マオリ族出身の作家ウィティ・イヒマエラの原作を、
ニュージーランドの女性監督ニキ・カーロが映画化。
時代の流れの中で次第に伝統的価値が薄れつつあるマオリ族を舞台に、
伝統を守ろうと奮闘する長老たちの苦悩や、
女であるために伝統を継ぐことを許されない少女が
それでも因習を打ち破り自ら運命を切り開こうとする一途な姿を描く。
2003年のサンダンス映画祭観客賞。各地の映画祭で“観客賞”の栄誉に輝いた。

 ニュージーランドの小さな浜辺の村。
祖先の勇者パイケアがクジラに導かれこの地へ辿り着いたという
伝説を語り継ぐマオリ族。彼らは代々男を族長として村を守り続けてきた。
ある時、族長の長男ポロランギは双子の男女を授かった。
だが、喜びも束の間、男の子と母親は出産時に命を落としてしまう。
ポロランギは悲しみに暮れ、一人娘を残して村を去って行った。
娘は伝説の勇者と同じ名前パイケアと名付けられ、祖父母のもとで育てられるが
族長である祖父はそれが気にいらない様子。それでも祖父に認めてもらおうと、
パイケアは村の後継者育成の訓練に関心を抱く。
しかし、女であるパイケアはその訓練への参加を許されなかった…

 フランス行きの飛行機の中でこの映画を拝見した。
暇つぶし程度に観始めたんだけど、この映画に引き込まれた。
ニュージーランドの自然美、村の人々の素朴な暮らし
そして何よりも、パイケア役のケイシャ・キャッスル=ヒューズの可愛さ。
絵画の天使のように中性的でもあり、純粋な瞳。
彼女はこの作品が初出演作で演技が評価され
13歳でアカデミー主演女優賞にも堂々ノミネートという最年少記録。
彼女の憂いを含んだ表情に終始見とれたり、満面の笑顔に幸せ貰ったり…
スター・ウォーズEP3での彼女は…見なかったことにします。
これから、良い作品に恵まれて活躍することを大いに期待。

 パイケアを内心嫌う祖父(といっても見え見えですが…)と
それでもおじいちゃんが大好きなパイケア。
二人の交流に心が釘付け。パイケアの気分になって悩んでしまった。
パイケアの味方になってくれる気の強い祖母もいい味出してる。
原作の小説を読めばもっと詳しく判るんだろうな。

 パイケアが通う学校の同級生も、それぞれ素朴な顔してる。
彼らが集まる村の集会場みたいな所とか…
パイケアのお父さんの弟も出てきて、ちょっと場が和む。
独特の間もあって、邦画みたいでもあるんだけど自然な雰囲気が好き。
クジラのシーンでは飛行機の微妙な揺れとマッチして
自分が大きなクジラに乗っているかのようにも錯覚。
高度な機械文明が介入していない島で
それでも時代の変化を徐々に受け入れ、民族の結束を守る…
歌のシーンで、よくわからないけど涙腺が緩んだ。
ふと、自分も産まれる場所が違っていたら、あの村で
それなりに楽しく暮らしていたんだろうかなんて考えてしまった。

 これはミニシアター系映画だと思う。
心がほんわか暖まる、普段身近に感じない自然界の恩恵みたいなものを
肌で感じさせてくれる私としては全く新しいジャンルの映画だと思った。
DVD発売日を心待ちにし、購入して再見しました。
もっと幼い頃にこういう映画を観ていたら、ちょっと性格変わったかも。
そんな衝撃的な映画では決してないけど、私にとっては特別な存在です。


グッバイ、レーニン! (2003/独) 121分






 東西ドイツの統一という時代の波を背景に、家族の絆を描いた作品。
監督は本作が長編2作目となるヴォルフガング・ベッカー。
ベルリン国際映画祭で最優秀ヨーロッパ映画賞受賞をはじめ、
様々な映画賞に輝き、本国ドイツで歴代の興行記録を塗り替える大ヒットを記録。
主演はダニエル・ブリュール。良い面構えをしております。

 1989年、東ベルリン。アレックスの父は10年前に家族を捨て、西側に亡命した。
母のクリスティアーネは、その反動から社会主義に目覚めて熱心に活動を始める。
ある日、秘かに反体制の考えを持っていたアレックスは反社会主義デモに参加。
その結果、警察と衝突するところを偶然目撃したクリスティアーネはショックで
心臓発作を起こし、昏睡状態に陥ってしまう。
その間にベルリンの壁が崩壊、統一ドイツは資本主義国家となる。
やがて8ヶ月後、クリスティアーネは奇跡的に覚醒するが、
真実を話してショックを与えることは避けようと、アレックスは母が家に帰っても
旧東ドイツ時代の生活品、衣服、食品をかき集めて芝居を続けることを決心する。

 評判が良いので借りてみました。…良かったです。
まず私は東西ドイツ統一云々の歴史にはあまり詳しくありませんので、
東と西の印象とか歴史の勉強にもなったし、非常に興味を持てた。
真面目なテーマなのだけれど、要所要所クスッとした笑い所もあって
キューブリック風な映像とかも楽しめて、いいスパイスになっていたと思う。
時間は2時間だけど、物語にのめり込んで、気づいたら時間が経っていた。
歴史は動く時は急激に動く…8ヶ月でどんどん社会は動いていくんだなぁ。
体制が変わったことにより、こんな部分で大きな違いが…と丁寧に見せてくれる。
マルク札バラまいてたの、勿体なーい。ホントに価値なかったのかな?
アレックスは母親にまずいものを見せてしまうと、映画好きな友人に頼んで
つじつまが合うような報道ニュースを製作して母親に見せる。ここ好きです。
西ドイツの新しい彼氏も出来た姉の心情も理解できるし、アレックスの苦悩も判る。

 
やっぱり母親は内心薄々感づいていってたんだなというのが私の見解。
母親は現実を受け入れる強さは持ってた。アレックスの方が弱かったのかも。
“段々、母の為ではなく、自分の理想の国を捜すようになっていった。”
最後のニュースで、アレックスを観ているのが何よりも印象深い。
母親はアレックスの為にも、最期までそうして死のうと思ったんだろうな…。
お互い想い合っての優しい嘘。宇宙飛行士と遭遇しちゃうのはどーかと思ったけど。
父親との再会もアッサリしているが、あれもよくよく人物の身になって考えたら
凄く切ない…っていうか、何とかならなかったんだろうかって思ってしまう。
父は父で、家族が追ってくるのを待っていたんだけれど、
母は母で、父が亡命したことにより自分たちも立場が危うくなるし、子供もいる。
最終的には、思想や信念をかかげた所で、家族と愛の前では全て倒れる。
こんな風に想われていた母親は最高に幸せ者だと思う。


 ごめんなさい、全然うまい感想書けない。文章の引き出しが貧弱だ…
これを観ると、どうしても北朝鮮と韓国の関係も思い起こさずにはいられない。
ドイツ映画ってたまに凄い傑作を生み出すんですな〜これからもチェックです。
主役のダニエル君も良い。何か、アメリカの俳優にも似た顔の人いたような。
他のキャラクターたちもそれぞれ、味のあるいいキャラばっかりで。
花火と、音楽の使い方も最高です。当事者ドイツだからこそ作れる映画。
この映画は素晴らしかったです。家族で一緒に観て、色々語らいたい。


クレイマー、クレイマー (1979/米) 105分





 自立に目覚め、夫と子を捨てて出て行った妻。
翌朝から、夫は慣れない子育てと家事に振り回されながらも、
今まで無関心だった息子との絆を育んでいく…そうして1年半が過ぎた頃、
突然別れた妻が現れ、息子の親権を主張し、裁判に発展してしまう。
四半世紀過ぎた今でもタイムリーな題材を扱った傑作ヒューマンドラマ。
主演はダスティン・ホフマン、メリル・ストリープ、ジャスティン・ヘンリー。
監督・脚本はロバート・ベントン。
第25回アカデミー賞で、作品、脚本、主演男優、助演女優、脚色の5部門受賞。
小さな人間ドラマだが、家族を持つ者なら誰でも共感できるテーマがある。

 前々から、見て見たいなと思ってた作品。
『アイ・アム・サム』の劇中でも話題が出てたけど、似てた。
ホントにこれは、かなりインスパイアされてるんじゃなかろうか。
まずダスティン・ホフマンが若い。そして凄く格好良い。
…これは個人的な好みだけど、彼は肩幅狭いし背も低めで、顔も大きい。
そして黒髪で、日本人に近い体格なんだよね。そこも魅力の一部なんだろな。
メリル・ストリープも美しい。薄幸美人っぽい儚い脆さみたいなのが出てた。
子役の演技もズバ抜けてるんだよね。受賞には至らなかったがノミネート。
でも子役だからかその後は、あんまり活躍はないみたいだけどね。
冒頭から、昇進して喜んで帰ってきた夫に離婚をつき付け、家を飛び出す妻。
二人で迎えた朝、“フレンチトースト”を作るシーンが凄く印象に残る。
この映画を観た後は、誰でも作りたくなるんじゃないだろうか?
タイトルは一見??クレーム客?みたいに勘違いしちゃうけど、
原題は『Kramer vs. Kramer』らしい。アメリカの裁判所にこうやって
張り出されると、離婚裁判だな、って巷の人はすぐ分かるんだとか。

 仕事も軌道に乗ってきてるが、あえて息子を誰かに預けることを断って
世話も焼けるし、たまに腹立たしくなって喧嘩したりもするけれど、
後から仲直りして、夜には絵本を読んで、教えているようで、教えられもしてて…
観てるだけで微笑ましくなる親子の交流と、最初は奥さん側だった主婦友達とも
打ち解けて、公園のベンチで子供を見ながらお喋りする。
子供を抱えて道路を走る長いカット、お気に入りのシーンもいっぱい出来た。
フレンチトースト焦がしてフライパンひっくり返してコンロを蹴ったり、
元奥さんと再会した後、帰り際にワイングラスを壁にぶつけて割るシーン、
アイスのシーン、ホフマンが考えてアドリブでやったんだとか。
裁判が始まっても、二人とも正しくて、ただどちら視点か、ってだけな気がしてきて、
二人もそれぞれ目が合って、互いに心底憎んでいないんだな、って思えて
二人の間に立つ主婦友達も凄く苦しい立場だと思う。
最終的に父親は子供を快く送り出してやろうと努めて、
母親が自分から去って行った。元の3人に戻れたら子供にとって一番だろうけど、
一度壊れたものは完璧に元には戻らない。つくづく痛感する。
奥さんが夫に蔑ろにされたシーンとか、カリフォルニアで何を見つけたのか、
詳しくは描かれてなくて、それが卑怯だって見方もあるだろうけど、
それはそれで想像がつくし、奥さんを一方的に悪いとはどうしても思えない。
子供も成長して、考え方も変わってくると思う。父と母の理解も。


 素晴らしい映画でしたよ。DVD買って正解でした。色んな人にオススメします。
気に入った映画は、メイキングまできっちり見る。
ラストにダスティン・ホフマンが言ってた裁判所の速記係の話は興味深い。
何か続編の『続・クレイマー、クレイマー』ってネタだよね??ねぇ?


告発 (1995/米) 124分


 映画の題材とケビン・ベーコンの熱演が話題となった作品。
共演にクリスチャン・スレーター、ゲイリー・オールドマン。

 囚人管理が厳しく悪名高い刑務所アルカトラズを閉鎖させた実話。
ある脱獄囚が受けた仕打ちと刑務所内で起こった殺人…
容疑者ヘンリー・ヤングの弁護を引き受けた若き弁護士ジェームスが
調べを進めていくうちに疑問を持つようになり彼を救おうと決意する…

 冒頭の時代を感じさせる音楽とモノクロ映像でノンフィクションさが出る。
世界一脱獄が難しいとされる完璧な刑務所を作った政府だったが
管理費がバカ高い上に刑務所内はガラガラ。
そこで罪の軽い者でもどんどんぶち込むようになっていた。
ヘンリー・ヤングの刑務所に入る経緯を見ていると
「子供が飢えのあまりパンを盗んだ。それは子供が悪いのではなく
パンを与えなかった政府が悪い。」って言葉を思い出した。
所内の仲間と共謀し脱獄を図るものの失敗。
仲間たちは告げ口をした奴とヘンリーを除き逃走時に殺された。
ヘンリーは地下の光の一切届かない独房へ3年間も閉じ込められたのだった…

 アルカトラズは現在は観光地になっている。
あの有名な刑務所跡も見学できるそうだ。
罪を犯す者には容赦ない。でも罪にもピンキリあるだろうに。
ゲイリー・オールドマン演じる副所長が憎い役。
狂気を感じさせる怖さではない。日常にまぎれていそうな人間の怖さだ。
彼も家に帰って家族と過ごす分には普通の善人だろう。
でも所の秩序を乱したヘンリーには容赦ない。

 ケビン・ベーコンの奥さんも特別出演だから見逃せない。
ジェームスがヘンリーの為に売春婦をこっそり連れてくる彼女がその人。
ケビンはこの映画で俳優としての可能性を広げたと思う。
インタビューで色んな役をやることは楽しいと云ってたのが微笑ましい。
ヘンリーは最初は一切喋ってはくれないが、そのうち
裁判はどうせ死刑と諦めてジェームスにあれこれ無駄話をする。
何年も独房で誰とも喋っていなかったんだから…
刑務所の存在意義とかもあるけど不思議な形の二人の友情を描いている。

 弁護士は妥当に仕事をこなすとかビジネス意識で観ると
人の運命を左右する裁判への姿勢があんまりだと思った。
医者でもそうだろうけど最初は人を救うのが夢で世界に入ってくるんだろうけど
何人もこなしていくうちに慣れてくるんだろうな。適度にサボるというか…
クリスチャンはヘンリーの存在感で霞んで見えてしまってた。
ラストは…どうなんだろう。私は感動しなかった。
でも価値観の違いで感動する人もいるだろう。
何にせよ、この実話は知っておくべきだと思っている。


スタンドアップ (2005/米) 124分


 主演は「モンスター」でアカデミー主演女優賞に輝いたシャーリーズ・セロン。
共演にフランシス・マクドーマンド、ショーン・ビーン、ミシェル・モナハン、
リチャード・ジェンキンス、シシー・スペイセク、ウディ・ハレルソン。
監督は「クジラの島の少女」のニキ・カーロ。

 暴力夫と別れ、2人の子を連れ故郷の北ミネソタの町に戻ったジョージー。
シングルマザーでなおかつ2人の子どもの父親が違うということで
周囲は彼女に冷たい視線を投げかける。そんなジョージーが
自分一人の手で子どもたちを養うために選んだ仕事は鉱山労働者。
過酷な労働より彼女を困惑させたのは、同僚のほとんどを占める
男性たちからの露骨で悪質な嫌がらせの数々だった…。

 原題は
「NORTH COUNTRY」だそうです。
映画を見終わったあと、こっちの邦題の方がしっくりきて素敵でしたね。
勝気なセロンは何だか二コール・キッドマンとかぶって見えました。
とにっかくタチの悪いいやがらせが続いて、主人公と一緒に
イライラが募って、ラストにはスカッとするドラマになっています。
キャッチコピーに惹かれて見ました。
“私なんか、と何度も思った。お前なんか、と何度も言われた。
それでも、立ち上がってみようと思った。”
これは主人公を指してもいいし、鉱山労働者の女性の同僚にも当てはまるね。
セロンファン必見なのは勿論、ショーン・ビーン好きにもお勧め。
ああいう紳士っていうか、妻を愛する夫の姿がとても良かった。
ジョージーが我慢のきかない性格だったというのも頷けますが、
やはり洗礼としてでも、酷すぎるセクシャルハラスメントでした。
裁判で弁護士に追い詰められて、敵だった元同級生があの事件を
鮮明に思い出して良心に響いたのか、すまなそうな表情になったのが良い。
思春期まっただなかの息子が何故、時計別に興味なさそうだったのに
ショーンの所へ行って時計を貰ったのかはよくわかりませんでしたが。
セロンが息子に妊娠した時のことを話した言葉が感動した。
親父さんが心を開き、レイプ事件に怒りをあらわにするシーンも胸熱くなった。

北の田舎らしさが出てて、景色も見所でしたね。
炭鉱がある田舎町は、それが産業なので街の人付き合いにも影響する。
全体的に凄く丁寧に作られていて、良作です。
テーマも中身も暗さが漂う反面、闇の中に光を見出すような
人間の内からくる力強さも伝わるので、元気を貰えるかもしれません。
この監督は「クジラ島の少女」でもそうなので、、男女差別テーマなのが重なった。


ターミナル (2004/米) 129分


 フランス空港で起こった実話を元に製作。監督はスピルバーグ
主演にトム・ハンクス、共演にキャサリン・ゼダ=ジョーンズという豪華3強
クーデターによって祖国が消滅し帰国することもアメリカに居ることも不可。
法律の落とし穴にはまり空港で生活することになったビクター。
彼がアメリカに来た目的とは?

 映画館で拝見。ヒューマンドラマ
感動作だと意識しないで観た方が楽しめた。宣伝ミスだね。
トム・ハンクスは正によくある役まわり。
外国人が感じる言葉の壁や感覚の違い、不安感は伝わった。
ビクターは“いい人”だからめげずにひた向きに頑張ってたけどね。
荷物置いてふらついたりハラハラしっぱなし。
所長がポテチぶちまけるシーンで何さらすんじゃこらと思った。

 仕事探しで奮闘するシーンは悲しかった…
空港で働く人たちと次第に打ち解けていくのは良かった。
落し物を賭けに使ってたり、ありそうな光景。
大事な目的もあって現状もやばくて生活も大変だけど
ちゃっかり恋をしてたな。アプローチもしまくり。あんな感覚羨ましい。

 巨匠もちょっと手抜きでリラックスしたいんだ!
こんな挑戦もいいじゃんか。って映画なのかも。
本当の目的も物語の筋もグダグダで中途半端だったけど
ヤギの薬の話とゼダのスチュワーデス姿が可愛いかったことが良い所。
笑い所もそこそこある。本物そっくりに作った巨大なセットも見所。
それぞれ実在の店舗が出店しているとか。
あとエロやグロは一切ないんで(衛生上よくない所はあったかな)
家族とまったり鑑賞するのには最適な映画かも。


誰も知らない (2004/日) 141分








 「ワンダフルライフ」「ディスタンス」の是枝裕和監督が、
1988年に実際に起きた事件をモチーフに映画化した人間ドラマ。
母親に置き去りにされた4人の子供たちが、大人たちに知られることなく、
兄妹たちだけで生きていく姿を丁寧な筆致で描く。
2004年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、
長男役の柳楽優弥が日本人初となる男優賞を
カンヌ史上最年少で受賞し大きな話題となる。

 とある2DKのアパートに引っ越してきた母と4人の子供たち。
しかし母親であるけい子は、子供の出産届けも出しておらず
戸籍上では存在しない子供達を産み、育ててしまった。
自分と12歳の長男・明だけの2人暮らしと大家に嘘をつき、
けい子は子供たちにも近所にバレないようにと言い聞かせる。
兄妹たちは父親がみな別々で、学校に通ったこともない。
けい子が外で働き、明が母親代わりとなって家事をし、兄妹の面倒を見ていた。
それでも家族5人、それなりに幸せな日々を送っていた。
そんなある日、新しい男ができたけい子は、
わずかな現金を残して突然家を出ていってしまうのだった…

 これ観ようと思うまでに随分時間がかかった作品です。
実際にあった事件をモチーフにして描いていて、明らかに救いが無いから。
事実とは多少異なり、この作品は絶望の中に希望を見出すように
描いているのかもしれない。でも、観てみたら到底そうとは思えなかった。
徹底した悪がいない、周囲の大人たちが中途半端な善人。
母けい子も、完全に子供を見捨てたわけではない。
それぞれの父親たちも、決して非情なわけではない。
コンビニ店員も、ごはんをくれるいい人ではある。
その中途半端な優しさ、深く関わりたくはない潜在意識。
本当に彼らのことを思うなら、万引きが誤解でも何でも警察に渡すべきだ。
どのレビューでも言われている通り、これは
「誰も知らない…というか、知ってても知らない振りをしている」

 身勝手な母親の「私は幸せになっちゃいけないの?」って言葉。
ハラワタが煮えくり返るような腹立だしさを感じたね。
事実、子供を産んで母親になるべき女性や父親たる男性が
精神的にまだまだ未熟で、ノリで産んだ子供の責任の重さに耐え切れない。
区役所の相談所は、そんなケースでいっぱいだ。
この映画を観ることで、そういう現実を知らない人にも知ってもらう。
そういう意味で、この映画は観るべき映画だとは思う。
でもこの映画を観て「こんな事があるんだ〜」とか「泣けるよ」とか
簡単に云いきってしまう人もどうかと思う。
自分達がそれぞれ、将来この映画に出てくる大人たちになるとも限らない。
自分では気づいていないけど、事なかれ主義や、結果逆効果の救いの手、
卑怯な責任逃れの言い訳…自分可愛さにとった酷い行動。

 登校拒否してる子供が観たらどう思うのだろう。
「アフリカでは飢えて死んでく子が沢山いるのよ。食べ物を粗末にしないで
好き嫌いせずにちゃんと食べなさい」って云われるのと大差ないだろうか。
あの空間で生活している子供たちがひょっとしたら
アパートの隣に住んでいるかもしれない。
でも、もしそうだったとしても、他人の生活に乗り込んでいって
事態をいち早く察知し、助けようなんて思っても行動はなかなか出来ない。
物語の途中で関わってくる女子高生も、だ。
ドキュメンタリーのようなリアルな映像の見せ方、淡々とした言葉使い
子供たちの自然な表情…静寂で落ち着いたゴンチチのBGM

 ふと疑問に思ったのが、長男が母の連絡先に電話して
本人が出たのに思わず電話を切ってしまう所。
彼は母の性格をある程度把握していて、冷静に事態を判断したんだろうけど
彼がもう少し賢ければ先が見えてるあの暮らしを続けなかっただろうに。
生活がすさんで、質素で不潔めいてくる。ゾッとしてしまう。
タテタカコの歌う「宝石」が映画に凄く合っていて
あの歌が流れてきた時、たまらなく胸が痛くなった。
辛いし、実際の時間よりも長く感じたこの映画。また観たいとは思えない。

 主演の柳楽優弥君本人は、その表情と存在感は良いけど
演技がそれほど光るとも思わなかった。むしろ、あの賞は
作品と共演した他の子役の子達と一緒に獲れた賞だと思う。

 この映画のモチーフとなった実際の事件…
事実はこの映画よりも残酷だと聞いて調べてみた。
確かに、かなり違う。巣鴨子供置き去り事件→  参考にしたサイト


チョコレート (2001/米) 113分


 ハル・ベリーが黒人初のアカデミー主演女優賞獲得で話題になった映画
かなりR指定な内容らしいんで覚悟して観たけど
ハル・ベリーもう脱ぎまくりで腰振りまくり…
こりゃ賞も取るわな〜と妙にその女優根性に感心…

 主人公は父譲りの人種差別意識の強い死刑囚棟の看守。
そんな父に疑問を抱く同職の息子は近所の黒人の子供たちと気さくに遊ぶ。
ある黒人死刑囚に刑を執行する日、遂に親子の確執が大きくなり…

 人種差別問題が主なテーマだとは思うんだけど
ストーリーに救いがなさすぎる。
立て続けに不幸なことばかり起こるので、ちょっと風向きが変わっても
どうせ、ぬか喜びに過ぎないんだろな、とか。卑屈な気分。
ひとときの幸せと最悪の不幸が交差する。
観ていてとても心痛ましい。

 息子が○○するシーンなんていきなり過ぎてショック受けた。
あの肥満息子も何かあまりに可哀想なような…
あのおじいさんなんて凄い軽蔑のしようでてっきり
彼女を撃ち殺すんじゃないかとか思っちゃった。
不満を残しまくるエンディングにしばらく固まってしまった…

題名が似てるけどショコラとは質も味も全く違っていますね。


手紙 (2006/日) 121分






 「白夜行」など人気ミステリー作家・東野圭吾の同名小説を映画化。
兄が強盗殺人を犯したことでいわれなき差別に苦しむ主人公の姿を通して、
加害者の家族をとりまく社会のあり様を真摯なまなざしで見つめる。
主演は「電車男」の山田孝之、共演に玉山鉄二、沢尻エリカ。
監督は金八先生、男女七人夏物語などドラマの演出で知られる生野慈朗。

 川崎のリサイクル工場で働く青年、武島直貴。
職場が近くで積極的に話しかけてくる由美子とも打ち解けることなく、
人目を避けて生きる彼は、兄・剛志が自分を大学に行かせるため
金品を盗みに入った邸宅で、誤って人を殺してしまったのだ。
無期懲役で服役している剛志からは毎月手紙が届いていた。
兄の素性がバレると住んでいたアパートを立ち退かねばならなくなったり、
仕事も何度か変わらなければならなかった。
やがて、お笑いでプロになる夢を抱き、友達とコンビを組み
徐々に芸能界で成功していく直貴だったが…

 随分話題になって映画館でも何度も宣伝見かけた気がする。
思いっきり泣かせ系映画なのは判って見たんですが、
後半以外はほとんど安っぽい退屈なシーンばかり。
それを田舎のメガネっ娘なのに超可愛くて、何故か後から
都会なギャルに変身を遂げながらもまだ主人公に懐く沢尻の可愛さでカバー。
吹石一恵のお嬢様設定が失笑ものです。初対面のディナーの席、
このくだりがあまりにも王道過ぎて吹いた。何じゃそりゃ。
婚約者がいて何時代だよ?と劇中でも突っ込んではいたけど、
その婚約者が家
に来て秘密を喋るのも…昼ドラのノリだよね。
ここら辺のくだりはどうもリアリティに欠け、テーマを台無しにしてると思う。

 この映画の見所のひとつ、
差別されても仕方ないと諭す会長シーン。
(仕方ない…とは思い切れないんだけどね。私としては。
殺人犯の親だったら責任は充分あるけど、兄弟にも積はあるのか…う〜む)
でも人を殺したのはどうしても悪いことなので、一口には語れないな。

山田孝之はもう認知するまで役者としての仕事辞めてくれないかな。
もうそういうイメージでしか見れないから。殺人犯の身内として
差別、偏見を持たれるのは可哀想だけど、子供が出来たから
トンズラなんて少しも同情できないね。と、別の目で見てしまうのさ。
それに直貴さんよ、そんな事情があっても芸能界に入ったのなら
どうしてそんなに簡単にバレてしまう実名でやっていたんだよ。
昨今のお笑いブームに便乗して、原作のミュージシャン設定を変更したのは
結果的にはそんなに悪くはなかった。でも直貴のキャラとお笑い芸人という
職業がしっくり結びつかないんだよね。職場でも暗い奴なのに。
幼馴染の相方は兄貴の事件のことも知ってるくせに何のフォローもしなかったね。

玉山鉄二は今までどちらかといえば顔だけの大根だと思ってた分、
手紙を朗読してる言葉、最後の方の表情は素晴らしいと思った。
この映画は
被害者の身内の人が「もうやめよう」と言ったくだりと、
剛史の無言の合掌シーンだ
が特出していて、
もっと丁寧に作れば名作にもなれただろうに、所々綻びがあり残念である。
何よりも致命的だったのが小田和正の「言葉にできない」を流した点。
もう既に他のタイアップイメージが強すぎるこの曲をかけるのは
物語の質を下げ、感動してた自分がバカらしくなってしまう程である。
それだけ、製作側がこの映画にいい加減なのかと勘繰ってしまう。
扱うテーマは重いのに泣かせることに走りすぎて潔くない。
私のように感じた人はきっと、原作の方がしっくりくるんだと思う。原作読もうかな。


トゥー・ブラザーズ (2004/英・仏) 110分






 「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のジャン=ジャック・アノー監督が、
「子熊物語」以来15年ぶりに野生動物を主人公に描いた感動大作。
人間たちの都合で離ればなれとなってしまった2頭の兄弟トラが辿る
数奇な運命を壮大なスケールで映像化。
出演は「メメント」のガイ・ピアース。

 1920年代のカンボジア。
ジャングル奥地の荒れ果てた寺院の跡地で2頭のかわいいトラが生まれた。
兄のクマルは元気な暴れん坊。
一方、弟のサンガは対照的におとなしい性格をしていた。
仲のいい2頭は一緒にすくすくと育ってゆく。
そんなある日、一人のイギリス人冒険家エイダンが
仏像を盗掘するためこの地にやって来る。
そして、盗掘の最中に突然姿を現わした親トラを撃ち殺してしまう。
このことが原因で、クマルはエイダンに拾われ、
おとなしいサンガは行政官の息子ラウールの遊び相手として
引き取られてゆくのだったが…

 テレビで拝見。おすぎが涙なくては観られないなんて云ってたけど…
いやね、トラの魅力は存分に出てたと思う。子トラかわいいし。
大人のトラは猛々しく、毛並みも立派で。
ディズニーの映画みたいに一切喋らない分、自分で言葉を考えて見てました。
何だろうね。何か足りない気がした。
全部見て振り返ってみると、割とありがちな物語。

 あんな短い間だけだったのに、よく飴の兄ちゃんを覚えていられるなー
そして1年経ったら、あれだけトラって大きくなるんだね。
兄弟のうち、一方は元気で一方は大人しいってのは判ったんだけど
後から再会する時は性格が逆になってるような気が。

 冒険家が遺跡から石像削って持っていくなんて…何か許せん。
殿下って呼ばれてた権力者の嫌味な声なこと。
トラとの語らいは後々大した意味は持っていなかったな。
トラと人間、両方の立場で見ることが出来るんだけど
どっちも描写が中途半端で感情移入しづらかった。
冒険家に気があるように見えた奥さんが
少しの発展もなしに終わるのが、ある意味リアル。

 あの子供も、純粋なように見えてかなり残酷なことしてる。
トラを可愛がりすぎて今まで飼っていた犬を蔑ろにした。
その犬がトラに殺されても犬には少しも執着なし。トラを必死に庇う。あんまりだ。
終盤にトラと再会するシーンだって、あれを見せて
「どう?人間にも優しい人がいるでしょう」なんて見せつけてる。
人間に飼われていたことがあったからって、人間襲うでしょう。
それに、人間を襲うことが罪なわけない。自然界だもの。
あと、トラ捕まえる為にジャングル焼くなんて酷すぎ。
自分がジャングルから連れて来た、責任があるから始末する、なんて云うエイダン。

そういえば手塚治虫のマンガにもいくつか似たような話がある。
人間が動物を裁く権利などあるのかね?

 判ってはいたものの、ラストはホッとした。あの終わり方だけで良いや。
家族向けの優しい映画ですね。特に残酷な描写はカットしてあるし。
撮影にトラを何匹も使ったらしい。確かにトラの動きが良い。
どうやって演技させたんだろう?って気になった。
壮大な物語と銘打ってたけど、映像は合成が多くて陳腐でした。
動物ものが好きだったら面白いんだろうけどね。


ナインソウルズ (2003/日) 120分




 9人の脱獄囚それぞれの人間模様を写しだすヒューマン・ドラマ。
ある目的のため刑務所から脱走した囚人たちが次第に連帯感を深めていき、
各々が生きる目的を模索し見出していく姿をユーモアやペーソスを織り交ぜて描く。
監督・脚本は「青い春」の豊田利晃。
主演は個性派のベテラン、原田芳雄。
共演に松田龍平、千原浩史、板尾創路、マメ山田、伊東美咲、
大楽源太、鬼丸、京野ことみ、KEE、唯野未歩子、今宿麻美、
鈴木杏、松たか子、麿赤兒、國村隼、北村一輝、瑛太、井上順。 

 世間から隔絶された、とある刑務所。
その13号室には様々な経歴や犯罪歴を持った9人の男たちがいた。
リーダー的存在で息子殺しの長谷川(原田)をはじめ、
親殺しの金子(松田)、恋人の浮気相手を殺した亀井(板尾)など、
様々な事情で収監されている囚人たち。
そんな彼らは、ある日、ひょんなことから抜け穴を発見、脱走に成功する。
山中で車を乗っ取った9人は、以前同部屋だった自称元偽札王の山本が
“通っていた小学校に大金を埋めた”と1話していたことを思い出し、
その小学校へと車を走らせた。こうして、9人の自由へ向けての旅が始まるが…。

 松田龍平の出演作にも興味が出はじめたので、こちらをチョイス。
この映画、まず9人もいる囚人の顔と名前と罪状事情を全部把握するのが面倒。
最初の紹介の仕方はまだ「青い春」を引きずってるような印象を受けた。
非常に漫画チックで、現実味が薄くて、田圃にお店が出てきた時には、
ファンタジー?ドラックムービー?みたいでした。
松田演じる金子が主に主役視点になってくるんですが、動機不明で
感情移入するには難なキャラクター。実際は年上の瑛太は松田の弟役で登場。
あそこの独白が監督の強い主張のひとつだろうけど…中二病みたいだ。
全体的に荒々しくて、無駄に暴力的で、無駄に無慈悲。

 意外な見所は伊東美咲のストリッパー役だろうか。見せないけど。
そして原田芳雄の奇怪な女装姿と、たまにドキッとする程絵になるショット。
正直、見終わった後に何か感じるように意図して作られていながら、
鑑賞後、その影響が余韻が、ホンの数時間しか持たなかった私。
この監督はまだ荒削りな感じがして、そこがまた、次に期待をさせるのだけれど。
しかし監督、この映画の後に覚せい剤取締法違反で逮捕されてます。
あえて、あの終わり方を選択したのは凄く自分好みでした。
キャストは豪華だし、夜中にチラッと見るのに適してそうな映画です。


バグダッド・カフェ/完全版 (1987/西独) 108分


 アメリカの片田舎、砂漠地帯にぽつんとそびえ立つ古びたモーテル。
ラスベガスへの道中、夫婦喧嘩の末放り出されたドイツ女ジャスミンが訪れる。
都会と孤立し廃退の一途を辿る寂れたこのバグダッド・カフェ。
そこに居つきそこに住む閉鎖的な人々の心を少しづつ開かせていくのだった…

 有名な映画だったので観てみました。
会話が極端に少なく、説明的な台詞や語りもほとんどないので
登場人物たちの心情を汲み取るのに集中する映画でした。
 けれど、こういうのが本当のリアルな世界なのかもしれません。
行間を読んだり情景や時間がゆったり流れる様は邦画に近いものもありますね。
太ったジャスミンも最初は抵抗ありましたが
行動や言動で彼女はどんどん魅力的になった。

 一人、また一人と心を開いていってくれる過程
自分がジャスミンの立場になったかのように嬉しかったです。
孤独な人の心を救うのはやはり人と人との交流なんだなと改めて感じました。
砂漠と暑い陽ざし、青い空とぽつんと建つモーテル。世界観はそれのみ。
淡々と流れていく作りで砂漠に生まれた人々の心のオアシス…癒されます
舞台での女主人の声量にはビックリ!素敵な映画だと確信した。
ささやかに幸せな気分になる

 この映画で使われた「Calling you」が流れた時に心が洗われたと感じた。
最初はつまらなく感じる人も多いかもしれませんが
この雰囲気は独特で他では味わえないものを持っていると思います。



バベル (2006/米) 143分










 「21グラム」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、
旧約聖書の“バベルの塔”をモチーフに描き出す衝撃のヒューマン・ドラマ。
主演にブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、
共演に人気急上昇中のラテン系俳優ガエル・ガルシア・ベルナル、
日本から役所広司と菊地凛子が出演し、
各国の映画賞レースを賑わせ日本でも大きな話題となる。

 モロッコの険しい山間部を走る一台のバス。
そこに乗り合わせた旅行中のアメリカ人夫妻、リチャードとスーザン。
壊れかけた絆を取り戻すため二人だけで旅行にやってきたが、
山羊飼いの少年が放った銃弾が運悪くスーザンの肩を直撃する。
一方、夫妻がアメリカに残してきた幼い子供たちの面倒をみていた
メキシコ人の乳母アメリアは息子の結婚式に出るため帰郷する予定が、
夫妻が戻らず途方に暮れ、幼い子供たちも連れてメキシコへ向かう決断をする。
やがて事件を起こしたライフルの元・所有者として、
東京の会社員、ヤスジローの名前が浮かび上がる。
そんな彼の女子高生になる聾唖の娘チエコは、無音の世界で
人との繋がりを欲し、寂しさと孤独で心を悩ませていた…。

 バベってきましたよ。なかなか混んでました。
その観客の半分はガッカリして帰っていったんだろうな、と思います。
エンドロールを待たずに足早に…でも私は正直、思ったよりよく出来てて驚いた。
まず難解だと聞いていたけど、モロッコ、メキシコ、日本のエピソードは
終始目が離せなくて同時
進行する様をドギマギしながら見てました。
こういう悪気もなく巻き起こる不条理な話には凄く惹きつけられる。
一般人は原則として銃を持てない日本で猟が趣味で銃持っていたって設定、
非常に珍しいし、悪く言えばちょっとリアリティに欠ける。
日本である必要があったのか?とまで一部言われてしまっている。
日本の女子高生のミニスカートを撮りたかっただけかもとか、
マーケティングを考えて今が旬の日本を取り入れたとか…

 親切にされて感謝の気持ちで銃をあげたのに、コヨーテに羊が食べられて
困ってる一家に銃を売ってあげただけなのに、深くは考えずに遠くの的をと
バスを狙って試し撃ちしてみただけなのに、偶然旅行してただけなのに、
息子の結婚式にどうしても出たかっただけなのに、、、、やるせない。
凛子演じる聾唖の娘の行動が異質なので首をかしげる人もいるけど、
私は何故かすんなり「そうだろうな」って思ってしまった。
よく判らないけど、同じ立場なら私もああいうことするかもしれない、なんて。
ただ、内容が明かされない謎のメモはちょっとズルい。
でも映画はある程度は見るものの感性に任されるものだから、
きっと色んな解釈が飛び出すように、ああしたんだろう。
ベランダで裸になってる娘を抱きしめる父親の構図はありえないと思った。

 ブラピ&妻は散々な目に遭ったけど、夫婦は和解できて、
辺鄙な村に連れてこられたがガイドの男と村人のあたたかさに打たれたし、
(金を渡すブラピの感謝の気持ちも、受け取らない男の気持ちもあったかい。)
日本では事件がキッカケで少し親子の溝が縮まったけれども、
モロッコの家族は仲良し兄弟の兄が射殺され弟が警官を撃ってしまうし、
メキシコでは幸せな結婚式の帰り道、一転して地獄に突き落とされる。
アメリアが気の毒だった…預かってる子供を無断で連れ出したのは
悪いことだけど、知らない他人に預けてしまうよりはと思うし、
ずっと子守をしてきて我が子同然の愛情を注いできた二人と
あんな形で離れ離れになってしまうなんて…生きててよかったけど。
ガエルはそのまま消息不明か…バカだよ、まったく。
絶望の方が大きい。希望をわずかにしか匂わせない終わり方。
せめて、無事に生還したアメリカ人の子供を映して欲しかったな。
息子の声聞いて泣くブラピはその後、子供たちが行方不明になるという
更なる不幸の知らせを聞かなければならないんだなぁ…


 ニュースで一部問題になった光チカチカ場面は確かにきつかった。
でもあのシーン、カットするわけにはいかないほど重要なシーンでもある。
凛子の
ヌードは変にモデルっぽくないところが生々しい。

純粋に感動する、ってタイプの映画じゃなかったんですが、
世界の繋がり、心の繋がり、わかりあえないもどかしさ、
色々と考えさせられる映画ではありました。
いつ平凡な日常が壊れるのか、ちょっとした判断がキッカケかもしれない。
自分の行いで知らない場所で誰かが傷ついてるのかもしれない。
好き嫌いが激しく分かれそうな作品。個人的には、70点。


ヒーロー 靴をなくした天使 (1992/米) 118分





 ダスティン・ホフマン主演の皮肉なユーモア、そして妙な感動を織り交ぜた作品。
ジーナ・デイビス、アンディ・ガルシア共演。
ジョーン・キューザックとスージー・キューザックも出演してたりする。
監督は『危険な関係』、『堕天使のパスポート』のスティーヴ・フリアーズ。

 ケチなコソ泥でコソコソ副収入を得るラプラント。
彼は妻とも離婚され、一人息子とはたまに会えるくらい。
養育費を給料から天引きされ、いつも金欠気味で愚痴と言い訳ばかり。
そんな彼がある豪雨の夜、息子と映画を観に行こうとボロ車を飛ばしていると
目の前に突然、飛行機が不時着。端から炎上し出す機体。
助けを呼ぶ声を聞き、渋々人名救助するハメになったラプラント。
彼のお陰で54人の乗客乗務員が助かったが、彼は現場からトンズラ。
あの人は誰?残ったのは彼が忘れていった片一方のボロ靴。。。

 ダスティン・ホフマンの映画は滅多にハズレがないねー。
マスコミのやりすぎなトコや、なりきっちゃえば様になってしまうトコ…
最初はイライラしたアンディ・ガルシア演じるバーバーですが、
てっきり乞食から王子様扱いになり、有頂天になるのかと思いきや
次第に「あれ?こいつ善い奴なんじゃないの?」ってなってきて、
「こういう慈善活動はラプラントには出来ないよなぁ」と観客も悟っていく

ホームレス姿からビシッとスーツになったら、
「あぁ、いつものアンディ・ガルシアだ!」オドオドしてて笑えたけど。
靴を持って並んで自分が自分がと主張する金目当ての連中って
自分じゃないって心じゃ判ってるのによくもまぁと呆れたぞ。
フィクションだけど、現実にも居るんだよね、こういう人はさ。
片方の靴は、御伽話のシンデレラを彷彿とさせるね。

 人助けをしたのに、当日の夜に限って誰にも事情を話せなかった、
職場で話そうにも、上司はキレ放題、気の毒なラプラントである。
病院では追い出され、助けた女キャスターからも極悪人と罵られちゃう。
自分は汚い仕事をしながらも、息子といる時は立派な父でいようとする
姿には心を打たれるね。自分と違う、真っ当な道を進んで欲しいんだろうな。
父親を助けてと声かけた少年だったら、彼の顔がよく見えただろうに。
いつになったら真実暴露で逆転大騒ぎになるのかと踏んでたら、
民衆の夢を壊さず、良い終わり方を用意してくれました。

誰しもヒーロー。ヒーローとは、我々の心の中の美徳の象徴だ
皮肉なコメディだと思っていたのに教訓もあって、名作でした。
一番心に残ったセリフが
世の中はウソだらけだ。そのウソの中から、
自分が好きなウソを選んで信じればいい
。」     うん…深い。
ダスティン・ホフマンは何故こうも、こういう役がお似合いなのだろう。


ビューティフル・マインド (2001/米) 134分





 集団における個人の意志決定メカニズムを定式化した“ゲーム理論”を構築し、
後の経済学理論に大きな影響を与えノーベル経済学賞を受賞した
実在の天才数学者の人生をラッセル・クロウ主演で映画化した人間ドラマ。
共演エド・ハリス、ジェニファー・コネリー、ポール・ベタニー、ジョシュ・ルーカス。
監督は「遥かなる大地へ」「アポロ13」「のロン・ハワード。
第59回ゴールデン・グローブ賞では作品賞、主演男優賞はじめ4部門を獲得。

 1947年9月、プリンストン大学院の数学科に入学を果たしたジョン・ナッシュ。
数学の知識はあるものの、人付き合いが下手で常に独り。
研究に没頭するナッシュは次第にクラスメートからも敬遠されていく。
しかし、ナッシュのルームメイトになったチャーリーにも助けられ、
彼ははついに画期的な“ゲーム理論”を発見する。
大学でようやく認められた彼は希望するウィーラー研究所に採用され、
そこで恋人も出来て、結婚もしたナッシュ。
しかし、彼は人には言えない極秘任務を任されていたのだった…。

 アカデミー賞作品ってことで、注目されてたけど何か嫌ってた作品。
何かいかにも感動狙いっぽいし、実話とか「あっそ」精神でした。
で、一度も観てなかったこの作品に手を出したきっかけはポール・ベタニー。
どこかのサイトの俳優紹介で、この映画の役柄のことがネタバレされてて
最初に登場した瞬間から、「これって隠しとくことだったんじゃん!」って吃驚。
…なので、後半明らかになっていく展開が読めてしまった。
そんな残念なこともありましたが、なかなか全体的にうまく見せていて、
映画としても見易いし、ちょっと薄味な印象受けるけど良作だと思いました。

 
「総合性失調症」といえば、友達にも同じ病の人がいるので、
彼女にもこの作品を見てもらいたいなと思いましたね。
特定の生活パターンを持ち、それを乱されることを嫌うっていうのは
「レインマン」の自閉症とかぶるな。精神病って区別はあるけど症状は似るね。
受賞した日ぐらいは幻覚とお喋りしてあげてもいいんじゃないかなーなんて
ちょっと思ってしまった。そんなに悪いことでもない気がしないでもない。
私だったらむしろ、自分で作り出したというキャラたちが、
どういう思考をしているのか詳しく会話してみたくもなってしまう。
しかし、現実だと信じていたものが全て虚構だったというのは悲劇だろうな。
自分を認める世界を表すパーチャーだったり、脳内友達チャーリー、
そして自分自身で認めるキッカケにもなった女の子だったり。


 ジョン・ナッシュの人生を支えた奥さんが何よりも凄いと思った。
ジェニファー・コネリーの眉毛には毎度注目してしまうが…
映画半分くらいの地点でようやく自然に見えてくるんだよね。変なの。
どんどん年老いていくナッシュと奥さんと、その他の人々。
脳内友達作っちゃったけど、ホントは歩み寄れた、友達になれた人がいたんだ、
老人になって図書館で生徒と戯れるナッシュを観て思わず微笑んでしまった。
精神病は大きなハンディだけど、それがあるがゆえにその頭脳もある。
ただ病院に入れてしまうよりも、個人の意志を尊重してあげる勇気。

そういう視点がウルッときた。ただ、泣くまではいかないけどね。
悪い作品じゃないんだけど、何かが足りないかもなーなんて思った。
そして私は数学大の苦手分野なので、数式とかワンサカ出てきてもサッパリだし
彼のノーベル賞とった功績も全然理解が及びません。
暗号解いてくのだって、観てれば数字が浮き出てくるの??と難解。


フィラデルフィア (1993/米) 125分


 トムハンクス主演テンゼル・ワシントン、アントニオ・バンデラス共演
エイズ感染発祥が原因で会社を解雇された男が裁判を起こす話
彼がゲイだということでその偏見も含めてシビアに流れるストーリー

 エイズの証拠が顔にできたできものって…(((;゚Д゚)))ガクブル
ああいうシミができたらやばいってこと?!なんか恐いんですけど…

 トム・ハンクスも毎度のことながら繊細な演技でリアル。
彼氏役のバンデラスが凄いひたむきでウルッときた。
彼がエイズだと知ってもあんな強く構えて…ダンスのシーンでウルッ
もっと二人の絆の強さを見せるエピソードが欲しかったけど
あんまりスポット当てるとエイズ問題という要素が薄まるのかな?
劇中で「エイズはゲイが生み出した忌まわしい病気」みたいな発言があって
実際にアメリカはそういう風潮で規制を図ろうともしたようだ。

 実際、自分があんな目に遭ったらとても悲しいし
理不尽だと思うし戦いたいとは思う。けれど
命が短いと知っても闘い続けるのは勇気が要ると思う。
残された時間、自分の為、身近な人の為だけに有意義に使う方を選ぶはず。
それをあえて裁判で心身すり減らしてまで闘い続ける…
裁判が勝っても負けても自分の命はあとわずかなのに。

 最近では本人は気付いていなくともエイズ感染者が増加してるようですね。
裁判ものの映画はそれだけで敬遠されがちですが
主人公の立場、気持ちになって観るとたまらない気持ちになるよね。
法廷の場で法律を絡めて、正確に自分の主張を守るのはとても大変だと思う。


フラガール (2006/日) 120分






 炭坑の閉山で活気を失った町の再生を期して計画されたレジャー施設
“常磐ハワイアンセンター”(現・スパリゾートハワイアンズ)
誕生にまつわる感動秘話を映画化したハートフル・ストーリー。
施設の目玉となるフラダンスを教えるため東京から呼び寄せられた
ダンス教師と地元の炭坑娘たちとの葛藤と心の成長を描く。
主演は「子ぎつねヘレン」の松雪泰子、
共演に蒼井優、徳永えり、山崎静代(南海キャンディーズ)、
豊川悦司、池津祥子(I.W.G.Pのジェシー役など)、
岸辺一徳、高橋克実、富司純子、志賀勝、寺島進。
監督は「69 sixty nine」の李相日。

 昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町。
時代は石炭から石油へと変わり、閉山が相次ぎ、町は衰退していった。
そこで、起死回生のプロジェクトとして豊富な温泉を利用した
レジャー施設“常磐ハワイアンセンター”が計画された。
目玉となるフラダンスショーのダンサーが要る為、地元の少女に募集がかかる。
強い興味を持った早苗は親友の紀美子を誘って説明会へと向かう。
説明会では、セクシーな衣装で踊る姿に、大半の応募者が逃げ出し、
残ったのは紀美子と早苗の他には初子と小百合のわずか4人だけ。
そんな中、元SKD(松竹歌劇団)のダンサー平山まどかが
フラダンスの教師として東京から招かれる。
しかし、とある事情で渋々やって来たまどかは、やる気が無い…

 最初は上映館も少ないミニシアター系だったのだが、
口コミで評判が広がり日本アカデミーの作品、監督、脚本、助演女優を受賞。
「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」系のポコンものだと思って
劇場公開当時もノーマークでした。どうも苦手なんだよね。
ああいう爽やか王道ノリノリなスポコンは。見ず嫌い。
実際観てみれば、全然この「フラガール」は毛色が違ってて驚き。
映像がわざと古臭く撮られていて、落ち着いていて、内容も若干シビアだ。
3ヵ月の猛特訓を積んだという出演者たち自らが披露する
迫真のフラダンス・シーンが見所なわけだけど、
最初のノリは日本版「シャル・ウィ・ダンス」っぽくもあった。
場末な雰囲気とぎこちなくて何処か滑稽な様なんかがね。

 
私にとって一番肝になったのが早苗との一連の別れ。
楽しそうに弟たちに衣装を見せてたらクビにされた親父が帰ってきて…
風呂場に逆襲に行く先生、後に夕張に引っ越すことになった早苗一家。
「今まで生きてきたなかで一番幸せだった」のシーンでは涙腺緩んだ。
しかし紀美子はあそこまでしてくれた先生に「どうせ余所者」なんて
反抗しちゃうシーンはどこかおかしいと感じた。
何か先生が本気になって生徒たちも増えてバスツアーに繰り出し、
1回目はグダグダで、その次からは何故か皆驚く程上達を見せている。
ああ、知ってるよ、モンタージュってやつなんだよね。
しずちゃんは特に上手いとは感じなかったけど場に溶け込んでた。
でも、正直、親父が危篤のエピソードでは感情移入できなかった。
丁寧に物語は進むけど、何だか展開がスラスラと読めてしまう。
それにラストのフラダンスシーンが妙に引っ張りすぎてる気が否めない。
顔アップを映す時間が長すぎて何故か興ざめする。
そして欲をいえばハワイアンセンターを作っている人達にも
もう少しスポットを当てて欲しかった。ストーブの件がもっと感動的になる。
ハワイアンセンターって他にどういう施設があるのかも気になったし。
あのトヨエツが炭鉱へ出発するシーンも何故かスローだったから
「あれ?ひょっとして事故で死んじゃうとか?」なんて勘繰ってしまった。
そこまでいくと流石にくど過ぎるんだけどさ。


 期待してなかったけど案外面白かった。
でも、日本映画はこのレベルで百点満点を上げちゃいけない気もした。
何か全体評価が高すぎる。そりゃどの映画にも粗は存在するんだけどさ。
炭鉱の町がメチャクチャ嘘くさい(CG?何か絵に見えるシーンもある)
邦画特有かもだけど、セリフの音量に合わせておくと
ダンスシーンの音楽で途端に五月蝿くなる。イライラしてしまう。
実話らしいけど、洋画の「リトルダンサー」とかなり設定がかぶっちゃった。
ただ、松雪泰子と蒼井優のソロダンスは圧巻だし、凄みがあった。
蒼井優は全然注目してなかったんだけど、なかなか先が楽しみな女優さんだ。
この映画のブレイクで常磐ハワイアンセンターは盛り上がってるのかな?


ブロークバック・マウンテン (2005/米) 134分




 「グリーン・デスティニー」「ハルク」のアン・リー監督が
ワイオミング州ブロークバック・マウンテンの雄大な風景をバックに綴る、
2人のカウボーイの20年にわたる秘められた禁断の愛の物語。
原作はアニー・プルーの同名短編。
主演は「ブラザーズ・グリム」のヒース・レジャーと
「デイ・アフター・トゥモロー」のジェイク・ギレンホール。
男同士の純愛というセンシティブなテーマにもかかわらず
2005年度の映画賞レースを席巻した感動作。

 1963年、ワイオミング。ブロークバック・マウンテンの農牧場に
季節労働者として雇われ、出逢った2人の青年、イニスとジャック。
彼らは山でキャンプをしながら羊の放牧の管理を任される。
寡黙なイニスと天衣無縫なジャック。対照的な2人は大自然の中で
一緒の時間を過ごすうちに深い友情を築いていく。
そしていつしか2人の感情は、彼ら自身気づかぬうちに、
友情を超えたものへと変わっていくのだったが…。

 話題作なのでレンタルで拝見。同性愛を扱った映画は興味もある。
他のレビュー見ても絶賛の嵐だったんだけど…正直微妙。
何か広大な景色に誤魔化されてる気がしないでもない。
時代の世相もあり、不器用な男2人の友情又は愛の物語。
ゲイ映画って真面目に作ればとことん暗くなるし、
その暗さで美化しているようでむずがゆくなってしまうし、
明るく描こうと思えばコメディ路線になってしまう。
叶わぬ恋なだけなら男女でもよかったのではないかと思えば、
男女ならもっと簡単にくっつけた筈でもあり…
山で過ごした時がだんだん美化されていったんだなとは思った。
辛い現実から逃げるのに、一番心に残る青春の思い出になったというか。
奥さんには分からない旦那たちの趣味とすりかえれば、
現代にもよくある構図だと思う。それがゲイってたのなら奥さんそりゃ怒るわ。
無口なイニスは肉体労働で小銭を稼ぎ、忙しい日々。家計も苦しい。
陽気なジャックは逆玉。舅のことを除けば自由気ままにいい暮らし。

いるいる、あーいう人。とは思った。そして、羊は可愛かった。

 レビューにほだされて名作だとカン違いしてる人いそう。
正直、私は心に響くモノがなかった。ただ、絶賛してる人の意見も理解は出来る。
ただそれは、他の映画でもあったなーとか、どうも新鮮味がない。
当時のキリスト教のゲイの公開処刑は恐ろしいと思ったけどね
そして、ジェイク・ギレンホールはなんかキモい。何故人気あるんだろ。
ヒゲつけてるシーンでは、どこかのコメディキャラみたいだった。
アン・ハサウェイが
ヌードをチラリとするのを見て、ちょっと驚いた。


ボーイズ・ドント・クライ (1999/米) 119分








 1993年、ネブラスカ州リンカーン。
20歳になるブランドンは少年の格好をし、町に出かける用意をしていた。
従兄でゲイのロニーは“フォールズ・シティの連中はオカマを殺す”と警告するが
ブランドンはフォールズ・シティへと向い、地元のバーでラナと出会い恋に落ちる。
しかし、ある事件がもとでブランドンの“秘密”が暴かれたとき悲劇が始まった…
アメリカで実際に起こった事件を基に映画化。
ヒラリー・スワンクが性同一性障害の主人公を演じてアカデミー主演女優賞受賞。

 悲しい話と評判は聞きつつも、つい興味で観た映画。
ヒラリー・スワンクは最近も『ミリオンダラー・ベイビー』で主演女優賞受賞。
彼女の出演作を見たのは初めてでした。
最初に、本当に男性かと思うくらいの容姿に驚いた。
ちょっと痩せて背も高くはないけど、ああいう男の子はいるな、って。
例えは悪いけど、ネプチューンの名倉のマッシュルーム頭の頃に似てる。
ヒラリーの笑った時に見える歯茎が印象的。でも端正な顔立ちしてました。

 同性愛=レズビアンと性同一障害とは全く別だと思う。
主人公の状況考えると、心は男なのに身体は女。女性に恋をする…
普通に生まれてきてる奴らがどんなに羨ましいことだろう。
彼女は性転換手術を受ける為に金を貯めようともしている。
劇中では、そこらへんのことは詳しく描かれなかったけど脳内で想像。
 胸を締め付けて男性のパンツを穿いてふくらみを作る。
主人公の顔つきは男なのに、身体は立派な女性。
声が少しハスキー過ぎるのが気になったけど驚いた。
パンツの汚れを発見して洗い落としたり
深夜の店にアレを買いに行ったり…複雑な気分だろうな。
キスシーンが結構濃厚でした。

 アメリカの閉鎖的な田舎の世界がよく描かれていたと思う。
鉄塔から見上げた夜空とか、カメラワークも綺麗だ。
でも決して観易い類の映画ではない。
異端を認めない、差別をテーマにした映画です。
私は正体がバレた時点でラナはブランドンを捨ててしまうのかと思ってた。
ラナとジョンの関係が微妙でよく判りづらかった。
ジョンが初対面の時は好印象だったがドライブの時辺りから
こいつはどーしよーもない器の小さい男だと判り始め
ブランドンをラナを誘惑して奪ったレズだと思い込み、仲間と陵辱する。
そのシーンがあまりに現実的で観ているのが辛かった。
男としても、女としても最も屈辱的なことをされて
その後も車で家まで送ってくれと頼み込むブランドン。
何でなんだ!ただ好きになって恋愛関係になっただけなのに
性の問題だけで、そんな目にあってしまうのが自業自得だっていうのか?!


 素性が知れてからラナの母親が何度もブランドンを化け物と呼ぶ。
身内の罪を隠して善人ぶって被害者顔している彼女こそ化け物だ。
最初はアバズレだったラナがブランドンと恋に落ちて
なんだかどんどん綺麗になっていくようだった。
彼女があの時、世界を飛び出す決意をしていたら…
ブランドンの瞳に写った最後の彼女こそ、
本当の愛にたどり着いた時だったのかもしれない。


 この事件が起こった当時はもっと偏見やイメージがひとり歩きしていた。
勿論、今でも起こりうる話でもあるけど…今は少しは理解が広まったと思いたい。
日本ではゲイやオカマが堂々と宣言してタレント活動しているし
それが一種のアイデンティティーであり、強みでもある。
でも多くは隠して、苦しんで、悩んでいるのだろう。
ブランドンも、もっと都会へ行けば救われたんじゃないだろうか。

 美輪明宏の著書『地獄を極楽にする方法』の一文
「例えば一面の菜の花畑の中に、ぽつんと1輪、バラの花が咲いていたら、
バラは自分のことを『私はみんなと違う異端者だ』と思うかもしれないし、
菜の花も『あいつは俺達と違う』とバラの悪口を言い、仲間はずれになるでしょう。
 世の中には『少数派だから』という理由で差別・迫害される人が後を絶ちません。
また、迫害されるのが怖くて自分を偽ったまま一生を終える人も多いのです。
-------------------------中略---------------------------
 今の自分の環境に息苦しさを感じているのは、その土壌が合わないから。
今の場所では、あなたの本領が発揮できないだけ。
だったら、あなたと道を同じくする人が沢山いる場所か、
あなたの進む道に対して『人の数だけ生き方がある』
という態度を見せてくれる人が沢山いる場所にいけばいいだけの話です。」

 これを思い出しましたね。言うは易しだけど一理あるとは思いませんか?
主人公は新しい土地に行って、好きな人や友達を作って…
でも友達が付き合ってみたら結構、悪い奴だったり
その場に溶け込んでいるつもりでも自分の秘密は明かせないし
思わぬ所でつまづいて、痛い目に遭うことなんてザラにある。
それが転びに転んで、こんな悲劇を生んでしまったという話かもしれない。


ぼくを葬る(おくる) (2005/仏) 81分


 「8人の女たち」「スイミング・プール」の鬼才フランソワ・オゾン監督が、
「まぼろし」に続いて描く“死”をめぐる3部作の第2作目。
ある日突然余命3ヶ月と知った主人公が、自らの死と向き合い
過ごす最期の時間を静かに見つめる。
主演はフランス期待の若手実力派メルヴィル・プポー。
主人公の祖母役で大女優ジャンヌ・モローが出演。

 パリで活躍する気鋭の人気ファッション・フォトグラファー、ロマン。
体調不良で病院に行き、末期のガンだと申告を受ける。
医師の勧める化学療法を拒んだ彼の余命は3ヶ月と告げられ、
彼は最期のひとときをどのように過ごすのか…

 タイトルに惹かれてレンタル。静かで大人しい映画。
まず主演のメルヴィル・プポーに見とれてしまう。格好いい…エリック・バナ似。
で、こんなに格好よくてゲイ。(いや、バイともいえるか?)
普通の男性だったら後半のあの展開に影響があるからそうしたのかな。
小さい頃の自分を見つめなおしながら、自分の人生、家族を改めて想う。
もし自分の命のカウントダウンがすぐそばまで迫っていたら…
貴方だったらどうしますか?今まで遠慮してたことを自由にやってみる、
恥ずかしいものを処分し、自分の金でめいいっぱい好き勝手する…
自分と関わってきた人達と現実とどのようにお別れしますか?
この作品ではそういう細かな想いや行動はあまり出てきません。
表面上は取り乱さず、静かにその時が来るのを受け入れるというか…
シンプルに、劇的な展開もなくストレートに美しく描かれています。
なので、リアリティに欠ける、美化し過ぎ、単純な印象も受けますが、
これはこれで何故か許せる。…主人公が魅力的だからでしょうかね?
愛しいものを写真に収めていくシーンはジーンときました。
死ぬ少し前に偶然にも不妊症に悩む女友達が現れるのも凄い偶然。
残念ながら自分の遺伝子を持った子の誕生を見る前に亡くなるんですが、
夕日が沈むビーチでの最期がとても綺麗なんです

人間、理想としては死ぬならせめて美しく散っていきたいと思うもの。
でも実際はそうはいかないでしょう。あくまでも私の主観ですが、
この映画は良い死に方の理想というか、手本なのかもしれませんね。


メゾン・ド・ヒミコ (2005/日) 131分




 『ジョゼと虎と魚たち』『いぬのえいが』の犬童一心監督作品。
主演はオダギリジョー、柴咲コウ。共演に田中泯、西島秀俊、など。
ある日、塗装会社の事務で働く沙織のもとに晴彦と名乗る青年が訪ねてきた。
沙織と母親を捨てて出て行った実の父であるゲイの卑弥呼の恋人である。
卑弥呼はゲイの為の老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」を建てて、病気で余命わずか。
晴彦は卑弥呼の後継者として、陽気なゲイ老人たちと暮らしていた。
金に困っていた沙織は金を払うという条件付きで、その老人ホームで働くことに。

 やけに評判良いんだね〜見終わってサイト回って驚いた。
私は正直、「ふ〜ん」としか思えなかったので、感性に合わなかったのね。
柴咲コウ演じる主人公に感情移入できれば人間ドラマにもついていけたんだけど
この映画を観てちょっと衝撃的だったのが、彼女って華のないメイクとファッション
させて、仏頂面させると見事に魅力を感じなくなってしまった。
この女優さん好きだったんだけどなーってちょっとショックだった。
演技に関しても何かカラ回りしてたような…演出のせいかもだけど。
陽気なゲイさんたちは頑張ってたんだけど…う〜ん。
映画で出てきたダンスホールとか、凄くリアリティなさ過ぎて引いたわ。
女装したかった人も、カツラもちゃんと着けないと中途半端だと感じたし。
コスプレしてハイになった沙織にも着いていけなかったし。
ホームが建ってる海沿いなんて、外国みたいで雰囲気は好きだった。
あのイジメてくる中学生の存在もよくわかんないし、
オダジョーにつかまれた少年はあれで改心して何故か手伝いに来るし…
オダジョーは結局、身体では男が好みなんだけど、
沙織には心で惹かれ合って、でも身体がアレだから無理で…と
男トリコにしてきた青年のもどかしい感じを出したかったのかなぁ?
古い写真で歴史を感じさせようとしてたのは分かったけど、
沙織と父親のエピソードに全然実感沸かなくて、前後関係というか、
情景が浮かばなかった。ここは回想シーンも入れて欲しかった。
心は満たされないけど身体が満たされる相手と寝てみた、ってことで
スケコマシな会社の上司と寝てみた、ってことなのかな。
オダギリジョーのシャツから浮き出てる身体のラインがエロかった。

…とまぁ文句がいっぱい出てしまいました。
ホームに居るゲイ老人たちと一人づつ仲良くなってく流れがあって、
親子の確執いらないから、そういう交流にしぼった方が良かったんじゃないかな。


モンスター (2003/米) 109分






 アメリカ犯罪史上初の女性連続殺人犯として人々を震撼させた
アイリーン・ウォーノスの真実の姿に迫る衝撃の実録サスペンス・ドラマ。
ハリウッドを代表する美人女優シャーリーズ・セロンが役作りの為
13キロもの体重増加を敢行するなど体当たりでアイリーンを熱演、
みごとアカデミー主演女優賞に輝いた。
共演は「スリーピー・ホロウ」のクリスティナ・リッチ。
監督は本作が長編デビューとなる女性監督パティ・ジェンキンス。

 1986年、フロリダ。ヒッチハイクをしながら男に身体を売る生活に疲れ果て、
自殺する覚悟を固めたアイリーン・ウォーノス。
残った有り金の5ドルを使い果たそうと入ったバーで、
彼女はセルビーと運命的な出会いを果たす。
同性愛の治療を強制されフロリダにやってきたセルビーもまた
自分と同じように社会からの疎外感を抱いて生きていた。
初めて自分を偏見なく受け入れてくれる人物と出会ったと感じたアイリーンは、
“一緒に暮らそう”と提案する。しかしそのためにお金が必要になった彼女は、
再び客を取るため道路脇に立つのだったが…。

 前々から興味はあったものの、暗い欝な内容だろうと覚悟してたら…
意外と、そうでもなかった。人生に疲れた彼女が得たセルビーとの時間。
売春婦が、劇中で語られたように自堕落な商売と一口に言えないと思った。
彼女は生まれた環境と、境遇から自分の身体を売ることだけしか選べなかった。
徐々に語られる、彼女の忌まわしい闇の過去。
アメリカでは、この手の身の上話は決して珍しいわけではないのだ。
今から彼女の為に一途に堅気に生きようと決心しても、社会は冷たい。
勿論、彼女の性格と、セルビーの心構えも少し問題だけど。

 あの美しいシャーリーズ・セロンがあそこまで変身するとは!
中年女性のだぶっとしたお肉…でも腕のあたりは色気ムンムンだった。
顔も、眉毛のない肌荒れした酷い顔。動きまでも醜く見せる。
アイリーンの実録のドキュメントの映像を見たことあったけど
確かに、本物とそっくりになってた。喋り方まで。
でも実際の彼女は売春婦の現役時代では本当に綺麗だったらしい。
冒頭から語られる、「夢はいつか叶うと信じていた…」切なかった。

 最初は正当防衛で犯した殺人がエスカレートし、彼女は殺人鬼に。
確かに金で女の身体を買う男たちは最低かもしれないが
それでも、商売としてお互い割り切って納得してるのではないのか。
あの太ったお客や、老いた警察官、最後に殺した人…
アイリーンは殺人は良い事、悪い事ではなく、生きる為の手段だと言う。
全身全霊の愛を注いだセルビーが働かなくて、自由奔放な性格なので
一途なアイリーンが少し可哀想にも思えた。
純粋な心ほど、深く人を傷付けるという言葉が身に染みる。
電話のシーンが凄い印象に残りました。
生まれた環境が違っただけで、誰しもアイリーンに成り得るのだ。


ライフ・イズ・ビューティフル (1998/伊) 117分






 カンヌ映画祭で審査員グランプリに輝いた、
ロベルト・ベニーニ監督・脚本・主演の感動作。
ロベルトはこの作品で米・英のアカデミー主演男優賞を受賞。
“イタリアのチャップリン”と称される、ベニーニのユーモアの効いた演出が秀逸。
1939年、ユダヤ系イタリア人のグイドは、小学校の教師ドーラに恋をする。
彼の純粋さに惹かれた彼女は婚約者を捨てて彼を選ぶ。
やがて可愛い息子も生まれ、3人は幸せな日々を送っていた。
そんなある日、彼らは突然、強制収容所へ追いやられてしまう…。

 随分前に一度観たことがあったんだけど、ラストまでは観なかった。
グイドがとにかくユーモラスで、何で面白いだけでこんなに魅力的に見えるんだろ。
人類が発明したもののなかでも、“笑い”は本当に偉大です。
「こんにちは、お姫様!」二人のロマンスが幸せいっぱい。
ある映画レビューに書いてあったけど、
「ライ・イズ・ビューティフル」でも良かったと思う!!
彼女の為にあそこまでして、なおかつ平気に振舞う。
前半のロマンチックな二人にメロメロになった。

 後半からは、毛色が変わって収容所での暮らし。
彼は息子に嘘を付いて収容所での暮らしを楽しくする。
ドイツ語の翻訳を滅茶苦茶に訳したシーンはおかしかった。うまい。
周りの大人たちもグイドの嘘にあえて付き合ってやってるのが泣けた。
どんな目に遭っても息子の前では明るく振舞う。強いなぁ…
夫と息子を追って見逃された妻も自ら収容所生きを望む。
…凄いと思ったね。後の世で生きてる私たちは行けばどうなるか知ってるし、
彼女も予測できただろうけど、それでも僅かな希望を託したんだと思う。
戦争が終わるまで何処かで待つなんて出来ない!って。
二人が殺されるかもしれない、自分も勿論危ない。でも行く。
厳しい環境での過酷な労働で心が挫けそうな時もグイドは彼女を励ます。

 観ているこっちも、あの医者に期待したのだが、ガッカリ!!
何だそりゃ?!助けて欲しいのはこっちだよ!命かかってるんだよ!って。
物語も佳境に入ってきて、必死になって妻を捜すグイド。
最後まで息子に嘘を付き通して…あの兵士も、あんな混乱の中
黙って見逃してやることも出来ただろうに!戦争はつくづく酷い。
叔父さんは最初に恐らく殺されてしまったのだろう…。
戦車が出てきて、アメリカ兵が出てきた時はジョズエと一緒に顔が綻ぶ。
母親とも再会を果たして語りが始まった瞬間、いきなり涙が流れた。

自分でも泣いてる自分に驚いた。

 コメディ風味で重いテーマを描いてそれを貫く。
どんな状況にあっても、家族に希望を与え続ける。
一緒になって嘆き悲しむのは簡単だけど、彼は笑った。
彼は息子の命だけでなく、純粋な心まで守り通したんですね。
映画のジャケット観るだけでも、あのシーンを鮮明に思い出す。
感動映画の代表作のひとつなのも、納得。…愛です。愛。
ジョズエがとにかく可愛かった。嘘と奇跡は偉大だ。



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