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硫黄島からの手紙  (2006/米) 151分










 硫黄島での戦いを日米双方の視点から描く硫黄島2部作の
「父親たちの星条旗」に続く第2弾。日本側からの視点。
アメリカ留学の経験を持ち、親米派でありながらアメリカを最も苦しめた
指揮官として知られる知将・栗林忠道中将が家族に宛てた手紙をまとめた
『「玉砕総指揮官」の絵手紙』を基に、本土防衛最後の砦として、
死を覚悟しながらも一日でも長く島を守るために戦い続けた男たち。
主演は「ラスト サムライ」の渡辺謙、共演に人気グループ“嵐”の二宮和也。
伊原剛史、加瀬亮、中村獅童、裕木奈江など。

 戦況が悪化の一途をたどる1944年6月。
日本軍の最重要拠点となる硫黄島に新たな指揮官、栗林忠道中将が降り立ち、
無意味な精神論が幅を利かせていた軍の体質を改め、体制を整えていく。
栗林の進歩的な言動に古参将校たちが反発を強める一方、
ロサンゼルス・オリンピック馬術競技金メダリストの“バロン西”こと
西竹一中佐のような理解者も増えていった。
そんな中、圧倒的な戦力のアメリカ軍を迎え撃つため、
栗林は島中を張り巡らせた地下要塞の構築を進めていく…。

 「父親たちの星条旗」を見たので、こちらも劇場へ。
やはり私は日本側のこちらの方が感情移入しまくりでした。
一部とかぶる映像がなければ、まるで邦画の戦争映画。
渡辺謙や伊藤剛史らが監督といろいろ話し合って作ったそうで。
史実はもっと過酷なゲリラ戦だったとか、人とは思えぬ戦法も使ったとか、
仲間や敵の死肉を食べて生き延び、戦後になっても生き残りが居たとか、
色々とアレが足りない、コレが甘いとか評論も見るけども、
これはドキュメンタリーじゃなくて映画なんだから。
この硫黄島二部作で、歴史としての硫黄島の戦いに興味を持って、
闘って散っていった人たちのことを思うキッカケになれば充分だと思う。

 宣伝で名セリフがもう出ちゃったじゃないかと思ったけど、
あそこらへんは序盤で既にサラッと出て、後半が凄い。
難だったのは二宮演じる役が妻子持ちに見えず、少年兵に見えてしまうこと。
演技はかなり絶賛されてて、アカデミーとか…そこまで行くか?とは思うけど。
でも終盤での表情が凄い。戦場を生き抜いてきた顔をしてるように見える。
渡辺謙も言わずもがな、フランクな上司、鬼気迫る演説と静と動が魅せる。
実在のバロン西を演じた伊藤剛史も格好良かったな…
西郷を主人公目線にして進み、戦闘のなか、他の部隊と合流して
「ここは獅童(何故か役名よりしっくりくる)の隊か〜嫌な感じ」や、
ちょっと伊藤中尉に関しては変な視点で見てしまった。
殉じて死ぬはずが、戦車が来なくて何日も待ちぼうけ。
青い空に鳥なんて見ちゃったら、戦争もバカらしくなってしまうか…
元憲兵の清水は逆に、米兵は鬼畜じゃなかったんだと思い投降するものの、
米兵の気まぐれでアッサリ殺されてしまうし…あれはさぞ無念。
犬を見逃すエピソードで、鳴き声が聴こえてしまった時に
劇場から「あぁ〜」と声が漏れてました。
戦いよりも常に生きることを重視してきた西郷も、最後の最後には
恩人の形見をとりかえそうとスコップを振り乱して闘おうとした。
あそこで撃たれてしまうんじゃないかと思ったが、運が良く捕虜に。
しかし、日本の本土はこれから攻撃されていく。生き残っても辛い。
「天皇陛下万歳」のかけ声が今でも耳に残る。
栗林中将は敬礼の意味でなく、士気を高め自分を奮い立たせる為なんだろう。
終盤の「ここはまだ日本か?」には誰しも胸が熱くなるに違いない。
擂鉢山には星条旗が掲げられている。あの旗を日章旗に2度までも
こっそり代えて立てた日本兵がいたというエピソードもあるそうだ。
しかも2度目は日の丸の赤が血で描かれて。執念だ。


 「父親たちの星条旗」を先に見ていた分、米軍上陸のシーンでは
あの兵士たちが恐る恐る上陸していく様が思い出された。
こちらの映画では米兵の苦戦する様はあまり見られなかったけど。
もともと、人数も武器も圧倒的に劣っていたのに、あそこまで苦しめるとは。
日本で暮らす家族が一日でも安泰に暮らせるなら我々の守る一日には
意味があるんです!
」と言っていたけど、気休めだ…だけど、
そうでも思わなければやりきれない。ラストに
手紙がひらひら舞って、
兵士たちの声が聞こえてくるあたりからはもう涙腺が爆発した

決して「泣く」為に劇場に行ったわけでもないし、感動とか、言葉違いだ。
だけど、これを見て微塵も心が動かされないような人間はおかしい。

 この映画は劇場で見なければダメな映画だとも強く思った。
硫黄島は今でも洞窟が入り組んでいて、見つからぬ遺体も多いとか。
硫黄島だけでなく、あの戦争では様々な地域で戦闘が起こった。
他の島での逸話もいくつか聞いて、これもいつか映画化するのかななんて。
この映画を見てしまって、これから「男たちの大和」を見てもショボくなるかな。
これから公開される「僕は君のためにこそ死ににいく」もどうだろう。
「父親たちの星条旗」の方が格別に金がかかっているのは感じたし、
片手間に作ったんじゃと思われようとも、監督には感謝の一言。
少しでも興味が持てた人は劇場に足を運んで欲しいですね。


男たちの大和/YAMATO (2005) 145分




 辺見じゅんのノンフィクションを「敦煌」の佐藤純彌監督が映画化。
昭和20年4月、3000余命の乗組員とともに東シナ海に散った
戦艦大和の壮絶な戦いを描く。製作・角川春樹。
およそ6億円をかけて大和の原寸大のセットが組まれ、大きな話題に。
主演は「13階段」の反町隆史と「いま、会いにゆきます」の中村獅童。
「デスノート」L役で人気を博した松山ケンイチほか、
渡辺謙の息子の渡辺大、長嶋一茂、高知東生、奥田瑛二、渡哲也、仲代達也、
鈴木京香、蒼井優、高畑淳子、余貴美子、寺島しのぶ、白石加代子など。

 2005年4月、鹿児島県枕崎の漁港。内田真貴子と名乗る女性が現れ、
60年前に沈んだ戦艦大和が眠る場所まで船を出してほしいと懇願する。
他の漁師たちが申し出を断る中、老漁師の神尾は彼女の願いを聞き入れる。
彼女が大和の乗組員・内田二兵曹の娘と知り驚く神尾。
彼もまた大和の乗組員だったのだ。神尾の60年前の出来事が語られる…

 公開当時、話題沸騰で劇場に行こうか迷った作品。
…またしても行かなくて正解でしたね。…これは、酷いです。
テレビ放送で拝見したのでシーンが多少カットされたんでしょうが、
何せ始まりから映像が安っぽくて話にすんなり入っていけなかった。
学校の歴史勉強で見せられる教材のようなナレーションと映像。
それと交互に現在と過去のシーンが入るわけですが、違和感を隠せない。
3つの映像の雰囲気が全く上手に繋がっていなくて正直、途中で飽きました。
戦艦大和の造型は失礼ですが質感とかチープに感じたし、
当時の人が着てる制服や軍服、柔道着とか新品でお芝居臭がぬぐえない。
戦争ものの映画を多少見慣れた人間は拒絶反応が出るのも仕方ない。
もう少し上手な役者を選べなかったものか。
中村獅童は演技がワンパターンなんですよね。
反町も昭和の人間を演じるにはキャパが足りない。

 
戦闘シーンが始まるまでは、とにかく見てて妙にイライラした。
もう少し見る側のこと考えてストーリーにメリハリが欲しい。
死傷シーンがグロくて凄いみたいなこと言われてたけど、
こんなのひと昔前の邦画戦争ものに比べたら安い軽い。
戦艦大和やたらでかかったのは判ったけど、戦力には大してならなかったのね。
勝ち目がないのは判ってたけど、沈まないことには戦争も終わらない…
神尾は何故、内田から大事なもの預かってたのに
戦後せめて遺族にでも手渡そうと捜さなかったんだろう?

こんな粗探しをするつもりはなかったんだけど、気になりまくります。
勿論、映画の演出や丁寧さ、雰囲気作り、演技がダメなのであって
当時戦った人達のことは畏敬の念を感じずにはいられないし、
平和の大切さ、戦争の虚しさ、残酷さを感じることが出来たなら
その戦争映画はその人にとっては非常にためになる大事な作品なのでしょう。
ただ、私にはこの映画はナシ!でした。
「きけわだつみの声」や「硫黄島からの手紙」をお勧めします。


俺は、君のためにこそ死ににいく (2007/日) 140分






 石原慎太郎・東京都知事が製作総指揮・脚本を手掛け、
“特攻の母”として知られる実在の女性、鳥濱トメさんの視点から、
先の太平洋戦争で特攻隊員として儚く散っていった若者たちの
切ない青春模様を綴る戦争ドラマ。
主演は「細雪」「かあちゃん」の岸恵子。
21世紀の石原裕次郎として芸能界デビューした徳重聡の映画デビュー作。
徳重聡とダブル主演と銘打って窪塚洋介も出演。
筒井道隆、渡辺大、桜井幸子、寺田農、戸田菜穂、宮崎美子、
長門裕之、遠藤慶一、江守徹、石橋蓮司、的場浩司、伊武雅刀。
監督は「オキナワの少年」「秘祭」の新城卓。
主題歌はB'zの「永遠の翼」

 太平洋戦争末期、圧倒的な劣勢に立たされた日本軍は、
最後の手段として爆弾を搭載した戦闘機で敵艦にパイロットもろとも
体当たりする特別攻撃隊の編成を決断する。
やがて鹿児島県の知閲飛行場は陸軍の特攻基地となり、
そこから多くの若者が特攻隊員として飛び立っていくことになった。
軍指定の富屋食堂を営む鳥濱トメは、そんな若者たちを複雑な思いで見送る。

 窪塚洋介の出演作なので劇場へ足を運びました。
何が一番イヤか
って、このタイトル。何かの罰ゲーム?
劇場窓口で言うのが恥ずかしかった。勘弁してよ〜
実話を元に作られ、知覧の町並みや再現は正確なんでしょう。
丁寧に作られたのはわかるんですが少々クドイ。
まず気になったのが
お偉いさん方が真面目に話してるはずなのに
その机の上におかれたトロピカルドリンクは何?雰囲気ぶち壊し過ぎ。
田舎のホタルの話、「また踊りたいな」で出てきたちょっとした回想シーン。
黒をバックに人物だけで、なんだか酷く安っぽい。
どうせ撮るなら背景もつけて欲しかった。田圃とか。
遠目から撮られているシーンが多い為、安易な泣かせ演出はないものの
作品としては全体的に地味な場面が続いて波を壊す。
群像劇として多数登場する特攻隊員たちがいるので個々が判り辛い。

ただ、最後の方の特攻をかけるシーンは とてもよく撮れてたと思う。
家族に見送られ、最後に日本の山を眺めて別れを惜しむシーン、
海いっぱいに敵戦艦が侵攻してる様は圧巻でした

でもこれではトメさん主観の物語としてはちょっと変なんだよね。
私の感情を刺激したのはトメさんが関わってないシーンばかりだ。
窪塚扮する坂東勝次少尉の特攻シーンは鬼々迫るものがあったけど、
顔面アップを映す時間がちょっと長すぎると思った。
あれで最後、実は生き残っていたというのはいかがなものか。
でも彼を呼ぶ家族の声が聞こえながらも島の物陰で
片足を失い表情の覗えない後姿のカットは印象に残った。
空をいく隼
に深々と礼をする蓮司さん、
終戦後、息子の形見の刀で木を切りつける親父さん…
何度も帰ってきて無言の抗議をし自爆した田端少尉も良かった。

窪塚洋介がいなかったら作品のクオリティが大分下がってたと思う。
徳重演じた中西少尉は老けてからがいかにもコント。何あの顔。
彼が生還したボートのシーンも、いきなり綺麗な海にヤギ…で
急にCMが入ったの
かと思っ
てしまった。今までの世界観を壊した

 B’zの主題歌は見事に雰囲気ぶち壊してましたけど
スタッフロールで映る当時の写真と海に感動した。
劇中、実際の映像を色づけして使ったシーンもあったそうです。
都知事が製作に関わったことで政治的思想が見え隠れし、
何だか素直に受け止めてよいものかと勘繰ってしまうのが難点。
しかし、彼らの境遇、葛藤、勇気、散り様を観て、
戦争に恐怖し、今ある平和の有難味を想う人、命の尊さを考える人、
知覧に行ってみようと思う人、靖国に参拝
しようと思う人、
いろいろ感想を持った人がいることが大事なのかも。
ただ映画作品として観ると、正直それほどのものでもないかな。
後半は好きですけれど…見終わって頭の中で思い返す方が良い映画。


最前線物語 (1980/米) 110分






 第二次大戦下の中で戦うアメリカの第一部隊(THE BIG RED ONE
古参の鬼軍曹と若者4人が各地を転々とし、様々な出来事を体験していく。
出演はリー・マービン(彼の演技力はこの映画で高評を受けている)
マーク・ハミル(SWシリーズのEP5とEP6の間に撮った作品らしい)
ロバート・キャラダイン、ステフォーヌ・オードラン、ボビー・ディ・シッコ…

 長年のブランクの後、映画作家フラーが自身の体験を反映させた作品らしい。
冒頭はモノクロで、クラシックな時代を思わせる。
古臭く、あまり金がかかっていない感じが妙にリアルだった。
戦争に参加した4人の若者の一人が語り部だったのだが
どうも、鬼軍曹とグリフ(マーク)の二人が印象強い。
何気にグリフの見せ場も多かった気がする。
戦いが終わっても、次の場所へとドンドン飛ばされる。
悲惨だな…何処の隊でも生き残ると、他の戦場に飛ばされるんだろか。
間一髪助かったとしても、次は判らない…やりきれない。
流れる音楽は控えめで、物静かだけど爆音や轟音が響き渡ってた。

 各地での戦いが、エピソードみたいに編成されている。
グリフが臆病になる描写が多かったけど、誰も彼を責めれないと思う。
軍曹の言う事は一理はあるかもしれないけど、冷たい。
占領されてる村を救って英雄のような扱いを受けたり。
ノルマンディー上陸作戦で、危険な立場を引き受ける順番を決めて
番号を呼ばれれば次々に命令をこなすという決まりがあるのだけど
(うまく役目をこなせたら、次の番号の番だから早番が早死にするわけでもない)
船内で番号を交換してくれと頼む兵士がいたり。
実際にそういう事になって淡々と番号を呼んで行くのが怖かったね。
確かに、大作戦争映画にも勝るような描き方があるような気がする。

 シリアスなだけの映画じゃない、ってのが新鮮だった。
海で遊んでいる4人や、休憩中の兵士達。戦時下でも息抜きをしている。
ひとりがドーナツ・クッション持ってたのが気になったんだけど、
あれ最後の方まで持ってたよね。凄い愛着あるんだな〜
たまに小動物のアップが映るのも気になった。かわいいけど。
終盤の戦争記念碑のある場所、あんなに周囲何もないのかな。
キリスト像の目がえぐれてるのはどういう意味があるのだろ。
後半の騙し合いはハラハラして良かった。

 ビーチもそうだけど、軍曹とわずかに時を過ごしたあの少年や
火葬場でのグリフがこの映画を観終わった後に強烈に焼きついた。
ああいう兵士が戦争が終わって心を病んでしまうのだろう。
狙ったかのようにラスト、あそこと被るのは不思議な終わり方だったけど。
4人の仲間それぞれ、個性的な性格を思わせるエピソードが欲しかった。
小説を書く為に戦争に参加した奴と、グリフしか強いキャラいないような。
彼らが4銃士と言われたあの会話も、印象に残ってるかな。
表立って反戦を叫ぶ内容じゃないし、ある意味歩兵達の本音を描いてて
何とも変わった作品だなと思った。
確かに、隠れた傑作と謳われるのもちょっと頷ける。


地獄の黙示録・特別完全版 (2001/米) 203分


 フランシス・フォード・コッポラ監督作品。
1979年に作られた過去の作品を監督自らの手で編集した。

ベトナム戦争時の激戦区サイゴン。アメリカ陸軍ウィラード大尉に任務が下る。
 それは、同軍であり、戦場で離脱、ジャングルの奥地で暮らす
危険人物カーツ大佐を密かに見つけ出し暗殺せよとのことだった。

 劇場で鑑賞。とにかく長かった。観る前に旧作の方も見ておきました。
編集で新たに加わったシーンはどうして入れることにしたのだろう。
とにかく過激なシーンばかりが印象に残りました。
 ワーグナー爆音で流しながら爆撃とか、戦場の真っ只中でサーフィンとか…
ひたすら狂った世界というものを目の当たりにした気分です。

 マーロン・ブランド、凄い変わりようで別人かと思った。
マーティン・シーン、戦争映画でこんな事言うのも変ですが格好良かったです。
息子が後に似たような作品「プラトーン」に出てるなんてな…
まだブレイク前の若きハリソン・フォードとローレンス・フィッシュバーンも出演。
 目的地に向かうまでもかなり残酷な出来事が続きますが、
着いてからも信じられない異常世界が広がっていました。
ラストは凄まじい虚無感に襲われた。
ある意味、邪教を見せられた気分でもある。



ジャーヘッド (2005/米) 123分




 実際に90年の湾岸戦争に兵士として参加した一人のアメリカ人青年が記した
全米ベストセラー・ノンフィクション『ジャーヘッド アメリカ海兵隊員の告白』を、
「アメリカン・ビューティー」のサム・メンデス監督が映画化した実録戦場ドラマ。
決してニュースなどでは取り上げられることのない、
戦場における兵士の日常をリアルかつシニカルなタッチで綴ってゆく。
主演は「ドニー・ダーコ」「デイ・アフター・トゥモロー」のジェイク・ギレンホール。
タイトルの「ジャーヘッド」とは、海兵隊員を表わす隠語。

 祖父も父も兵隊だった青年アンソニー・スオフォードは、
18歳になって憧れの海兵隊へ入隊を果たす。
しかし新兵訓練の現実は厳しく、スオフォードは自らの選択を後悔し始める。
手荒い洗礼を受けた後、サイクス曹長の目に留まり、厳しい訓練の末に
わずか8名の斥候狙撃隊に選ばれるスオフォード。
その頃クウェートにイラクが侵攻、やがてスオフォードたちにも
待ちに待ったサウジアラビアへの派遣の日がやってくる…。

 よく言われているのが「湾岸戦争版フルメタルジャケット」。
宣伝に凄く興味を惹かれ、劇場に足を運ぼうか迷った映画。
結局行かなかったけどね…後からDVDを家で見たわけだけど、
あんまりシニカルなイメージでもなかったような…途中で眠気に襲われた。
ジメジメした森林奥地のベトナム戦地とは違って、ジリジリ熱い砂漠の荒野。
鬼軍曹のシゴキも罵倒も凄いんだけど、フルメタルジャケットより印象弱い。
ジェイミー・フォックスだったんですな。サミュエル・ジャクソンでも可かも。
実際に戦地に来ても訓練ばかりで戦争らしい戦争してない現実。
石油が燃えてる砂漠の夜は凄かった。どうやって撮ったのかな?
ホントにあんな事があったなんて露知らず。この世のものとは思えぬ。
折角厳しい訓練受けて斥候狙撃手になったのに活躍ならず。
人が丸こげになってる遺体にゾッとした。

これといったメッセージもなく、見た人がそれぞれ掴むタイプの作品。
哀しいかな、皆坊主だから誰が誰か区別がつきにくいのが難点。
戦後に死んだ人も、いやにアッサリ…いや、戦争よりも日常で死ぬ皮肉。

「アメリカン・ビューティー」の監督だからそれ以上のもの期待しちゃって
ちょと残念。悪くはないんだけど、良くもない…というか。
社会勉強として一見の価値はあるけど、2度見るには平坦かもしれない。


7月4日に生まれて (1989/米) 145分






 幾度となく題材に上げられているベトナム後遺症問題を、
ロン・コヴィックの実話小説を基に、監督をオリバー・ストーン
主演トム・クルーズ主演で描いた問題作。
1946年。7月4日のアメリカ独立記念日に生まれ、愛国心から
ベトナム戦争に参加した青年が経験する、挫折と苦悩の日々を描く。

 オリバー・ストーン自身、大学時代にベトナムに渡り半年後に帰還。
67年に陸軍に志願、ヴェトナムで従軍した経験を持つ。
除隊後はニューヨーク大でマーティン・スコセッシに師事していた。
この映画の前にも「プラトーン」でベトナム戦争を題材に映画を製作。

 主人公のロンが祖国の為にベトナムへ行き、
戦場での非情さ、混乱のなか、負傷し病院で辛い日々を送り
下半身不随で車椅子で帰郷する…そこに待っていたのは
守ろうとした国民達が反戦運動をしてベトナム戦争を非難している事実。
「俺達は国の為に命をかけて戦い、多くの犠牲が出ているのに
何も知らないで反戦反戦と叫んでいる」と民衆に遺憾しつつも
彼らが非難しているのは国民を騙し、戦場へ駆り立てた政府だ。

 ベトナムでの戦争が舞台ではなく、戦後の兵士たちのその後が舞台。
映画を観てるとそう感じた。地味で、とても苦い映画だ。
トム・クルーズの演技が素晴らしい。苦悶する様が伝わってくる。
負傷兵として帰ってきたハンが夜中に騒ぎ出した場面
戦場で起きた真相を語ろうと決意して家に赴いたところ…
世の中って何て残酷なんだろう。何故こんな悲劇ばかり生まれるんだろう。

 最初のエロ本を見つけて「何て汚らわしい!」って怒鳴って叩く母親。
カトリック色の強い家庭だからって、思春期の青年には
誤解でも何でも、あんな仕打ちされちゃ…たまんないだろうな。
ほのかに恋心を抱く相手がいたのに、車椅子で帰還。
名誉なんていらない、戻れるなら臆病者と罵られても
男に戻りたい。と云った言葉も重い。

 負傷兵の病院の不潔さや、むごい傷跡、罪悪感に苛まれ
不随になった男たちの辛さ、その後の祖国の仕打ち…
ベトナム戦争はアメリカにとって思い出したくもない失敗で
その悲劇がまたイラクでも起こってしまったんだな…
ブッシュとかお偉いさん達は、こういう映画を沢山観て学習して欲しい。


 
父親たちの星条旗 (2006/米) 132分






 「ミリオンダラー・ベイビー」等で知られるクリント・イーストウッド監督が、
太平洋戦争で壮絶を極めた硫黄島での戦いを、アメリカ側、日本側
それぞれの視点から描く2部作の第1弾。
硫黄島の擂鉢山に星条旗を掲げる6名の兵士を写した
有名な戦争写真の裏側に秘められた真実の物語を描く人間ドラマ。
写真に登場する6名のうちの一人ジョン・ブラッドリーを父に持つ
ジェイムズ・ブラッドリーの著わしたノンフィクション『硫黄島の星条旗』を基に、
凄惨な硫黄島での戦いと、戦場を生き延び帰還した3名の若者が、
自らの思いとは無関係に“勝利の象徴”として英雄に祭り上げられ、
戸惑いや苦悩を深めていくその後の人生を静かに見つめていく。
なお、2部作の第2弾は日本側から描く「硫黄島からの手紙」。

 太平洋戦争末期、硫黄島に上陸したアメリカ軍は
日本軍の予想以上の抵抗に苦しめられ、戦闘は長引き、
いたずらに死傷者を増やす事態に陥っていた。
そんな中、擂鉢山の頂上に星条旗が高らかに翻る。
この瞬間を捉えた1枚の写真が銃後のアメリカ国民を熱狂させた。
星条旗を掲げる6名の兵士、マイク、フランクリン、ハンク、レイニー、
アイラ、ドクは一躍アメリカの英雄となるのだった。
しかし、その後祖国に帰還したのはドク、アイラ、レイニーの3人だけだった。
国民的英雄として熱狂的に迎えられた彼らは、戦費を調達するための
戦時国債キャンペーンに駆り出され、アメリカ各地を回るのだったが…。

 最初は見る気なかったんだけれど、2部の方が気になって、
2部を見るつもりなら1部もしっかり見ておくべきだな、と劇場へ。
ちなみに私、イーストウッド監督の映画はどうも苦手な部類です。
重くて暗くて、テンポ悪くて…特別、凄いなと思ったことはないかな。
映画を観終わって、深い感動も悲しみも感じなかったけれど、
物凄い虚しさは感じた。戦争映画だけど、クールな印象を受けた。
戦闘シーンはブツ切りで流れ、主なのは戦後の彼らの生き様。
なので、多少なりとも生真面目過ぎる映画な印象はぬぐえないんだけど、
戦闘シーンはかなり容赦なく、グロ描写してて驚いた。
やはり私は日本人。島に上陸したアメリカ兵たちを倒していく
姿なき日本兵を無意識に応援してしまっている自分がいた。
そして時折、アメリカ兵としてその場にいる自分を想像して、恐ろしかった。

 冒頭の「
戦争を知っているという者は戦場を知らない。
という言葉に何故か非常にズシンときました。
英雄とは必要に応じて作られる、といった皮肉な事実。
そして硫黄島での誰がいつ死んでもおかしくない状況。
アメリカ衛生兵はあんな状況でも担架で次々仲間を運び出してる…。
最後に親子のしんみり場面は正直、感情移入できなかったけど、
私がこの映画に感じたことはおおまかに分けてしまえば、こんな感じである。
そして、婚約者の女のしゃしゃりっぷりにイラっときた。
日本では国民の命も財産も全部国が搾取して戦争を続けていたが、
アメリカでは戦争資金に困るくらいで、本土はいたって平和だな…と
今更ながら、当時アメリカに戦争を仕掛けた無謀さを痛感するね。

戦闘シーンがブツ切りで、人物の名前と顔がハッキリ分からない人もいて、
もう1回くらい見直さないとちゃんと全部把握できないな。
それに、日本軍を壊滅させた直接のシーンはなかったし。
イギーに何が起こったか?も非常に気になる。

やはりこの監督の映画は何処かまわりくどく、分かりにくい所もあって
好き嫌いが別れる。やはり見て、多少展開に戸惑いはあった。
エンドロールに映る当時の写真のシーンで、この映画はある意味、
壮大な制作費を投じて作られた再現Vのドキュメンタリーみたいなものかも。
…やはり私は、戦争映画の感想書くのはどうも苦手だ。

 2部の方は同じ監督が作ったとは思えないようないつもの邦画
お涙頂戴系に見えてしまう宣伝だけど、それでも見たい。絶対見たい。
やはり見終わると気が滅入るけれど、今ある日本が
彼らの犠牲で成り立ってると思うと、深く哀悼の念を感じ、
二度と繰り返さない、私たち人間は学ばなければ、と強く強く、空を見て思うのだ。


ノー・マンズ・ランド (2001/仏・伊・英・ベルギー・スロヴェニア) 98分


 ボスニアとセルビアの紛争真っ直中、両国の中間地帯“ノー・マンズ・ランド”に
取り残された、敵対する二人の兵士を中心にそれを取り巻く両陣営、国連軍、
マスコミを登場させ、戦争を痛烈に皮肉り、その不条理や愚かさを描いた作品。
紛争当時、自らカメラを手に最前線に立ち、数多くの映像を撮り続けた
ダニス・タノヴィッチ監督の長編デビュー作。
周到に練られた脚本は各国で絶賛され、2001年のカンヌ映画祭で脚本賞受賞ほか、2002年のゴールデングローブ賞とアカデミー賞の外国語映画賞もW受賞。

 1993年6月。ボスニア紛争の最前線。霧で道に迷ったボスニア軍の兵士たち。
いつの間にか敵陣に入り込み、気づいたときにはセルビア軍の攻撃が始まり、
唯一の生存者チキは、なんとか塹壕にたどり着き身を隠す。
偵察に来たセルビア新兵ニノと老兵士は敵兵を罠にかけようと
ボスニア兵の死体の下に地雷を仕掛けて引き上げようとする。
その瞬間、隠れていたチキが二人を撃ち、老兵士は死に、ニノは怪我を負う。
チキとニノの睨み合いが続く中、死んだと思われていたボスニア兵が目を覚ます。
しかし、少しでも体を動かせばさっき仕掛けた地雷が…

 戦争コメディってことで凄い評判が良いのでずっと気になってたんだけど、
いざ見てみたら…自分が思っていたようなブラックコメディじゃありませんでした。
普通に、普通にいたって真面目に「こりゃヤバイ」と連呼して鑑賞後、
無性に虚しくなって、あとで詳しい解釈を探しました。そりゃそうです。
このボスニア紛争のあらましと、中間地点での二人のやりとり。
ココに注目しなきゃいけなかったんです。馬鹿です自分。
そしてこれから見る人は予習してから鑑賞することをオススメします。
勿論、それでも結果的に楽しめるかどうかは謎ですが…でも奥行きは大事。

皮肉な風刺が効いているのが、
中間地点で立ち往生する二人が
戦争始めたのはどっちが先か銃をつきつけて口論し、
立場が弱い時は自分たちが始めたと渋々認める。
緊迫状態でありつつも、知り合いを知っていると場が和んだり。
国連軍がやって来て共に立ち去ろうとするニノを撃ってまで止めるチキ。

独立しようとしたボスニア人と、独立に反対したセルビア人。
wikiのこのページだけでも大分参考になります。
私が何とも皮肉だなぁと感じたのは、一番可哀想な地雷の上のツェラ。
確かに悲劇です。何とか地雷を取り除いてあげたいと思います。
でも周りでは普通に何十人もの両軍の兵士が骸となっている。
マスコミがかけつけて世界が注目しているから大騒ぎ。
例えは悪いかもしれませんが、まるで保健所で年間凄い数の犬が殺されてるのに
崖で立ち往生する一匹の野良犬の安否を気遣うマスコミと近隣住民の皆様。
救助隊が来て無事に保護されて、何処かの家に貰われたそうですが、
崖に登っていなかったら、普通に野良としてウロウロしてたら
保健所で殺されるだけだったかもしれない。命の重さは数じゃないけど、
何だか凄く、運命と、世論の皮肉を感じません?それとリンクしましたね。
チキの短気さにハラハラしながらも、どうなるのか気になってたんですが、
あんな厄介な地雷が存在するもんですね…あんな死に方嫌だろうな。
地雷を死体にセットする残酷さにも驚きましたが。
ノーマンズランドに取り残されていつかは死ぬしかない。寂しい終わり。

計算され尽くされ丁寧に作ってあるのは分かるんですが、とっつきにくい。
世界情勢に知識か興味があって、映画を頭の中でこねくりまわす
時間と頭の余裕がある時にはいいかもしれません。
まだまだ他にも製作者の意図があるのかもしれないし。
でも正直、また見たいと思う映画ではなかったので自分としては65点。


博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
(1964/英米) 93分


 キューブリック監督作品。
コメディの部類かもしれないけど、戦争が基盤なので…
この人が作ったのは、明るいけど恐ろしいって感じの喜劇が多いですね。
ある種、昔話のような教訓と基礎的なものも感じる。
今回もそんな感じで、「もし、こんな事が起こったら」みたいな話。

 アメリカの空軍の将軍が突然狂って、
機動隊にソ連を攻撃するように仕向けてしまう。
作戦Rといって、一度発動したら、外部からは止められないほどマニュアルが
出来ていて、何らかの理由で政府機関が機能しない際に
独断でソ連に報復攻撃をするというシステム。
ある暗号を発信しない限り交信不能。

 そういう事態が起こり、大統領達が集まって、何とかしないとと会議を開く。
なんとソ連には攻撃されると世界を死の灰で92年間もの間
住めなくさせる程の水爆装置が置いてあり、しかも解体しようとすれば、
その時点で世界が終わってしまうという代物。
 双方の為にもやめさせなければ、とアメリカ大統領はソ連と話し、
その爆撃機達を撃墜させてくれと頼む。
 機動隊達は機動隊達でアメリカが大変な事になったと思い込んで
報復攻撃に向かっている。
作戦を止める為の唯一の手段の暗号を知っている将軍は、
共産主義が大嫌いで、戦争に発展し、ソ連が滅べばいいと思っている。
その人の友人である副官が説得して暗号を聞き出そうと努力する。
所々に、皮肉なパロディめいたセリフがあっておもしろい。

この映画の題名の博士は、ドイツから帰化した科学者。
ストレンジラブっていう名前で、和訳すると「異常な愛」となります。
この人の喋りと動作も面白かった。1人2役だと後で知りました。

こうして観てると人間は科学の発展で
合理的になりすぎているんじゃないかと思う。
なぜ生きているのかと疑問に思えてしかたない。
色々と考えさせられる映画。
モノクロなんだけど、綺麗だったし、
音楽の組み合わせもセンスいいので
流石はキューブリックとひたすら感心しました。



ブラックホーク・ダウン (2001/米) 145分










 米ソ冷戦時代、アメリカはエチオピアを支援するソ連に対抗して
敵対していたソマリアへの資金援助、武器供与を続けた。
やがて、ソ連邦崩壊による冷戦終結とともにソマリアから手を引くアメリカ。
米ソ撤退後、ソマリアでは氏族間の対立が表面化し、
冷戦時代にもたらさされた大量の武器が内戦を激化させることとなる。
世界の警察官を自負するアメリカは内戦を終結させるべく軍事介入するが、
敵対するアディード将軍の本拠地への奇襲作戦に失敗、
数百人のソマリア人と18名の米軍兵士の死者を出す結果となった。
この時、米兵の死者がソマリア市民によって引きずり回されるシーンが
テレビによって全米に放送された。
これを機に、クリントン政権はソマリアから完全撤退、
軍事介入は完全に失敗に終わった。

 米軍が経験したベトナム戦争以来最大の銃撃戦となった
このアメリカの軍事作戦を「グラディエーター」のリドリー・スコット監督が
製作のジェリー・ブラッカイマーと手を組んで
ジョシュ・ハートネット、ユアン・マクレガー、エリック・バナ、
まだ新人だったオーランド・ブルームを起用し映画化した衝撃の戦争映画。

 戦争映画は苦手だけど、この映画は評価が高かったので拝見。
アメリカがよその内戦に首を突っ込んで事態が複雑化する事があったことは
断片的に知ってはいたけど、具体的なことは何も知らなかった。
どこの国で、どうしてそうなったのか、詳しい経緯も。
とことん、自分は世界情勢にうといんだと反省。
映画が始まって冒頭で説明されるだけじゃ流れを把握するのに戸惑いばかり。
もう1回見直すことで、ちょっとは判り易くなった。

 有名な役者を起用する割には淡々と映像は流れ
見せ場や劇的な演出は無い。リアルに混乱する市街戦を描く。
何処に敵が潜むか判らない恐怖、敵地まっただ中の緊迫感。
本当は1時間で終了するはずだった作戦が予定外の被害で長引き
多くの犠牲を出してしまった。次々と倒れていく兵士たち。
米軍視点で話が進むので、その雰囲気に呑まれ
戦場と化した街からウジャウジャと出てくる民兵たちがゾンビのようだった。
兵を引かせて手っ取り早く大規模な空爆で…なんて思ってしまった時点で
イラク等への無差別空爆を行う無慈悲な輩と同類になる。
実際に、民兵以外にも巻き込まれただけの民間人がいたのだ。
どういう心持で観るべきなのか判らなくなる。
どちらを肯定してもいけないような気がした。

 確かに撮影技術が凄いと思った。
海岸を飛ぶヘリが何だかメチャ格好良く見えたり
空から市街戦の様子が伺えたり、カメラワークが変わってる。
題名通り、ブラックホークが墜落するシーンも目を見張る。
戦場で巻き起こる土煙。泥臭い香りがこっちにまで来るようだった。
本物の戦場をCNNの中継で観ている感覚と似てるかもしれない。

 米軍側の負傷者が出て、死んでも連れて帰ろうとする執念。
例え死亡していようと敵地に残して遺体を晒し者には出来ない…
作戦が失敗した地点で早く撤退出来なかったのだろうか。
負傷者の描写が尋常じゃなくて映像も酷い。
下半身が吹っ飛んで叫んでる兵士や転がる腕。生々しかった…
遠くから指示を出すだけの上官が、血をふき取っていた場面が印象に残る。
ラスト近く、バナが語った話は何を意味しているのだろう。
仲間がいるから、戦い続ける。美辞のようだが考える必要は無いのか?
けれど、アメリカのこういう所が批難されつつも必要となる時が来る。
戦いもしないで平和を叫ぶのは悪いことなのか。
批難しつつも、それに守られている一面もある。
死にゆく兵士が受ける名誉って何なのだろう…
そんな途方もないことを延々考えてしまった。
この映画が大好きで何回も見返す人もいるそうだが、判らない。
涙が出る?…判らない。ひたすら、やるせなくなった。


プラトーン (1986/米) 120分


 実体験を基に描かれた、オリバー・ストーン監督によるベトナム映画。
クリス・テイラーがベトナムにやって来たのは1967年。
「徴兵されるのは貧乏人だけ。それじゃ不公平だ。」
大学を中退してまでベトナムに志願したが、
いきなり最前線の戦闘小隊に配属されたテイラーにとって、
戦争の現実は彼の想像をはるかに超えた過酷なものだった…
戦争映画の中でも特に評価が高い。アカデミー作品・監督賞受賞。

 『地獄の黙示録』で主演を務めたマーティン・シーンの息子の
チャーリー・シーンが主演。後に『最狂絶叫計画』などコメディ路線に。
共演者のトム・べレンジャーとウィレム・デフォーは、後に
同監督作品の同じくベトナム戦争がテーマの『7月4日に生まれて』にも出演。
当時、まだ無名に近かったジョニー・デップもちらっと出演。

 随分前に観た記憶があったけど、とにかく画面が暗くて
ジメジメした湿地帯とあのジャケットにもなってるシーンしか覚えてなかった。
改めて見直したわけだけど…あのテーマ曲が流れっぱなし。
ベトナム戦争はアメリカにとって苦い戦争で、多くの犠牲もあったけど
結局、学ぶことといえば自分たちの身を危険にさらさずに、
どうやったらもっとスムーズに戦争に勝利できるか…だと思う。
反戦映画のように見えるけど、そこらへんが複雑です。
私はとりあえず、大学退屈で、貧乏人だけ戦わせるのフェアじゃないから、
志願してやるよ、って参加するテイラーの気が知れない。

 どこにいっても、無能な上司や、仲間内でも対立グループがあるものですね。
最初に見た時、あのヘリから見える例のシーンが凄い衝撃的で
魅入ってしまったのを覚えている。
実際、監督自身がベトナム戦争の体験者で
あの確執にも、実際にモデルになった事件が実際起こっていたみたい。
エリアス軍曹が、当時凄い格好よく見えてたんだけど
ウィレム・デフォー…あの人だったとは。
今観ると、どちらも善悪付け難いのかもしれない…。エリアス派だけど。
でもラストのテイラーの行動は、賛同できかねる。

 ベトナム人が喋っている言葉が何言ってるのか字幕も出なくて
相手が何を言ってるのか判らなくて、それが恐怖でもある。
本当は違うんじゃないのか、何か誤解があるんじゃないのか?って。
首の周りにまとわりつく赤アリとか、虫の描写が気持ち悪かった。
でもあんな場所で潜伏したりするのは実際凄い苦痛だろうな。
あと、しょっちゅう呼ばれる衛生兵もその場で出来ることは限られてるだろうし
彼らは何人の兵士の死を目の当たりにしてきたんだろう。
終盤、国に帰れることになった黒人兵士がいたんだけど実際には、
兵役過ぎても帰れずに最前線に送られる黒人や下級層の人がいたとか。

 私は、もし戦争に行かされることになったら
自分の足を斬ってでもいいから、行きたくない。
祖国の為とか、家族の為とか自分の為でも、嫌だ。
相手の国がどう観ても悪だとしても、個人的に憎悪があっても…でも、嫌だ。
その時になってみないと判らないかもしれないけどね。
そんなことを考える自分って卑怯なんだろうか…。
大切なものに命を捧げて散るその勇姿が美しいのは判っているんだ。
でも、戦争は戦争。子供の頃は、戦争やりたい人間だけが
迷惑のかからない場所で好きなだけやってればいいのに、って思ってた。


フルメタル・ジャケット (1987/米) 116分


キューブリック監督作品。


 最初は海兵隊の訓練から始まり、ベトナム前線に送りこまれて…
という流れなんだけど、この映画はエピソードがふたつに別れている。
訓練所でのデブ二等兵の事件(これ、なんか凄く痛々しかった…)
 上官が訓練生を罵倒している様は凄まじい。汚いののしり言葉の連呼。
ある意味、ギャグかってくらいぶっ飛んでました。

 もうひとつのエピソードが、仲間を三人殺されて
がれきに潜む狙撃手を殺しに行くんだけども、その正体が…
そのふたつであっさり終わったんだけど、なんとなくまとまっているようで…
何ともまぁ不思議な作品でした。
 戦争映画なんだけど反戦を訴える隠れたメッセージとか無かったので
説教臭いのが嫌いな人が観るにはいい。
 狂った環境をひたすら目の当たりにさせて
唐突に終わらせて、後は自分たちで考えろってタイプなのかもしれない



ローレライ (2005/日) 128分






 『戦国自衛隊1549』、『亡国のイージス』等で知られる人気ミステリー作家
福井晴敏の戦争スペクタクル巨編『終戦のローレライ』を映画化。
新作『日本沈没』の樋口真嗣が本作で本格的長編監督デビュー。
出演者にも豪華な布陣。
役所広司、妻夫木聡、柳葉敏郎、香椎由宇、石黒賢、國村隼、佐藤隆太、
小野武彦、ピエール瀧、橋爪功、忍成修吾、鶴見辰吾、伊武雅刀、
大河内浩、歌手のKREVA、上川隆也、堤真一。

 法則!潜水艦映画にハズレなし!を見事に破ったかもしれない作品。
時代は終戦の迫る1945年8月。同盟国ドイツは既に降伏し、
ついに広島に原子爆弾が投下され、実質日本は満身創痍状態。
2発目の原爆投下を食い止めるべく、日本は秘密裏に入手した、
ドイツの開発した最新技術を搭載した戦艦(伊507)に最後の望みを託し、
南太平洋の原爆搭載機の発進基地を殲滅すべく、単独で航海に乗り出した。

 たまたまHDDに録ってあったので暇つぶし気分で鑑賞。
時代は現実なんだけど、設定と展開が若干ファンタジーなわけだな。
船長や船員の髪型が現代まんまだし、喋り方も今風。
とても60年以上前とは思えないんだよね。
香椎って子はデスノ前編にオリジナルキャラ詩織役でも出演。
デスノの時は演技下手だなって思ったけど、ここでは上手く包んであるのね。
キャストからも察せる通り、妻夫木といい感じになっちゃうわけですが、
この戦時下、この状況下で少し無理があるロマンスなの。
男だらけの潜水艦に唯一女の子が居るって逆転大奥設定も批難轟々。
まぁそれも、ムスカっぽいとか、綾波レイ的、ガンダムのニュータイプ的設定も、
漫画みたいで好きだけどね…でも、何かテンポ悪いし、緊迫感ないし、
外人が出てきて演技してるの見ると無償に気恥ずかしくなってまうし、
1回観て「…へぇ〜…」ってなるだけの映画だった。2回目は勘弁!
実は黒幕でした、って朝倉大佐も、動機がおかしいんだよね。
ローレライ・システムと引き換えに…原爆は勘弁してやるって言うんだな…
えっ?!引き換えに東京に原爆落とすの?!わけわからん!!
我が国はメリットゼロやん!日本を浄化する?ハァ?
優秀な人材は既に戦死してるから首都にはクズしかいない?ハァ??
そして、キャスト豪華だけど、無駄使いな気するのね。
柳葉とか、こういう映画でもいつも同じだしさ。
ジャンボこと佐藤隆太も無駄に死んでるし…いいとこなしやん!!

あからさまなお涙頂戴劇なんて胸糞悪くなるだけなんじゃい!!
やっぱり『ローレライ』よりは『亡国のイージス』だわな。個人的に。
でも日本人にとっては主張し辛いこの時代の戦争をこんな形で描くのは
希少で良い試みとは思うかな。映画としては荒削りだと思うけど。
あと、CGながらも戦艦を撃破してくシーンはちょっとワクワクした。



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