管理人NEROが映画について語ります。

Caramel Cinema


オススメ映画 オススメ本 オススメ曲 プロフ ブログ BBS リンク メール
ソウ (2004/米) 103分


 目覚めたら老朽化したバスルーム。足には鉄の足枷、
部屋の中央には自殺死体。対曲線上に同じ状況下におかれたもう一人の男…
「セブンより怖いらしい。CUBEより凄いらしい」が宣伝文句のサスペンスホラー。

 正にシュミレーション系ホラーゲームのようなオープニングだ。
そのまま、戸惑いつつも状況を段々理解して脱出の手段を考えるのかと思いきや
しょっちゅう過去へフラッシュバック。これはあまり頂けない。
最初の衝撃の状況から、普通のサスペンス映画の世界に戻された。

 正体不明の連続猟奇殺人鬼の話をゴートンがし出して事態を飲み込む二人。
最初はお互い知らない者同士のはずだったのに、アダムは隠してただけだった。
映像からして、低予算でサイコ勝負の映画だと思っていたんだけど…
アマンダの回とか、色んな人の危機的状況を見せるのは良いと思う。
犯人の世直し感覚の自論も聞けるわけだ。
でも刑事が一度犯人追い詰めていくのは苛々してしょうがない。

 出来るなら、映画すべてがバスルーム内で始まって終わった方が凄いと思う。
勿論、それは観客を飽きさせない俳優の天才的な演技力が必要だけど…
二人が途中、罵り合うシーンももっと工夫が欲しかった。
最初からずっと不吉な空気が漂いまくっているので
結末は予想は出来たけど、流石にラストは仰天もの。
でもあれはネタばれされたら相当つまらなくなるね。
後から考えればどうしても不自然な点も出てくる。

 犯人のダークな動機は好みだけど、続編もあるとなると…
もう同じような手は通用しないだろうし、どうするのだろう。
セブンとCUBEを引き合いに出してハードル高くしてしまったのは失敗。

 最初は二人どちらか生き残った方が出れるのかと思っていたけど、
アダムには最初から助かる手段が用意されてなかったわけだ。
あと、どうしてももっと早く奴の拳銃で足枷撃たなかったんだろうと思ってしまう。


ソウ3 (2006/米) 108分


 斬新なトリックと壮絶な残酷描写で世界的に大ヒットした
シチュエーション・スリラーのシリーズ第3弾。
謎の殺人鬼“ジグソウ”が仕掛ける新たなゲームが幕を開ける。
シリーズの生みの親ジェームズ・ワンとリー・ワネルは原案・製作総指揮担当。
監督は「ソウ2」に引き続きダーレン・リン・バウズマン。

 密室での爆死事件が発生。またしてもジグソウの仕業と
警察が騒ぎ、一人の女刑事が何者かに誘拐される。
女性外科医リンが何者かに拉致され、目覚めた場所は廃工場。
目の前には瀕死の殺人鬼“ジグソウ”が横たわっていた。
ジグソウに付き従うアマンダがリンにルールを伝える。
それは、ある男に仕掛けたゲームが終わるまで、ジグソウを延命させること。
ジグソウの心臓が止まれば、リンの首に巻かれた爆弾も爆発する──。
その頃、食肉工場の地下室で一人の男が目を覚ます。
彼はひき逃げで最愛の息子を失った父親ジェフ。
彼はそこで鎖につながれた3人の男女を目撃するのだった…。

 
一人はひき逃げを目撃しながら法廷で証言しなかった女。
もう一人は、犯人に軽い罰しか与えなかった判事。
そして最後に、愛する息子をひき殺した男。
ジェフは、この3人の運命が自分にゆだねられていることを知る。
カセットテープの主は彼らを凄惨かつ絶対絶命な状況下に置き、
ジェフが自らリスクを侵しながらも鍵を入手し助けることが出来る。
…私なら先に鍵を取ってから相手がどう謝罪するか様子を見て、
その言葉を聴いて気が変わったなら助けることにするかな。
とりあえず、ただ肉体的苦痛に苦しむのではなく、
自分が過去、こんな過ちを犯したことにより、こんな状況下にある、という
激しい後悔、罪悪感、精神的に深いダメージを与えてやりたいような気もする。
そして、最後に何でジグソウを殺したい程憎んでるのか判らなかった。
確かに仕組んだのは全部彼だけどさ。救急車も来るって言ってるんだし、
何よりも大事な妻に寄り添って止血しててあげるのが当たり前じゃん?
あんな動けない病人にムキになってもね…そう思った。

 とりあえず命を大事にしろと訴え拷問をするサイコ・ジグソウと
被害者になりながらもジグソウに心酔し弟子となったアマンダ。
この二人にイライラし
…というか登場人物みんなイライラするんだけど。
どんどん残虐描写が増し、サスペンス要素を追求しなくなったな。
後継者だったアマンダだが、単なる殺人狂になりさがり、
どうあがいてもクリアできない拷問クイズで命を弄ぶ。
ジグソウとアマンダの1と2の伏線みたいなのを3で断片的にやられても、
フラッシュバックが多すぎて(しかも暗闇シーンも多くて)
何を意味しているのかよく判らなかったなぁ…
一番痛そうだったのは足枷外す為の足グキィッツ!だったけど、
ブタの腐肉ミックスを全身にあびるのも臭いを考えると発狂もんだろうな。

1の伏線を回収する為にも4が待ち構えていますよーってつもりなんだろう。
こういう映画は劇場では観たくないもんですな。ゲンナリしちゃう。
この映画のせいかはよく判らないけど、観てるうちに頭痛がした。
恐いもの見たさというか、シリーズを見守る惰性というか、
とりあえず見とこう精神で見たけど、コレ何回も見たがる人いるんだろか。
まぁ“拷問”がウリだった「ホステル」よりはこっちの方が凄かったです。
少なくとも2よりはシュチュエーションは良かったけど、
残虐性をこれ以上エスカレートさせるよりもシナリオで凝って欲しい。
2の感想すっとばして書いてしまった。そのうち書きますね。


双生児−GEMINI− (1999/日) 84分







 鉄男」の塚本晋也監督が、本木雅弘、りょう主演で、
江戸川乱歩の同名小説を大胆にアレンジして映画化したホラー(?)
明治末期。大徳寺雪雄は、父の大徳寺医院を継ぎ、
戦場で軍医として活躍し金鵄勲章を貰い、地位と名誉を手にし
そして若く美しい妻・りんに囲まれ、誰もが羨むような境遇にあった。
ただ、悩みといえば妻りんが記憶喪失であり素性の知れぬ女性である為
母には快く思われていないということ。
そんなある日、父が変死し、家で奇妙なことが起き始める…

 キャストは本木雅弘、りょう、筒井康隆、藤村志保、石橋蓮司、麿赤児、
もたいまさこ、竹中直人、浅野忠信、田口トモロヲ…
ちょい役も多いけど、なかなかの顔ぶれです。
「鉄男」は滅茶苦茶な映画だったけど、これは物語の筋は通ってる。
変わったセンスを持った監督が撮れば映画は凄い変貌を見せるのですね。
出てくる人物は全員、眉毛が無い!まずここに驚く。
まず、そういう異質な世界観を創り上げているのが凄い。
音楽もド派手。静と動のメリハリがあって
喋る声は少し小さめだが、何だか深みを感じる。
乱歩原作というだけあって、気持ち悪い描写もあります。

 この映画を観て、本木雅弘って凄いなって思った。
アイドル出身なのに、演技派。個性的で惹かれるものがある。
今作では二役をこなし、演技が評価され日本アカデミー主演男優賞ノミネート。
眉毛無いけど、格好いい。つくづく男前ですねぇ〜
角砂糖と、包丁のシーンが好き。
りょうは、一見美人には見えないタイプなんだけど、
キャラの魅力を引き出すのに長けていると思う。
シゲさんと、掃除しながら笑い出すシーンが面白い。
いやはや、凄い髪型だよなぁ〜それでも似合ってしまうんだから…
二人の裸の絡みもあるので、家族との鑑賞はお勧めできません。
でもこの二人の絡み合いが、無機質で芸術的に見える。

 劇中、貧民窟というものが出てくる。
その名を示す通りの場所なんだろうけど、この世界ならでは、ちょっと異質。
住民が着てる服がド派手。そして破れた布を何重かにして着ている。
これが斬新だな〜と思った。演劇みたいな世界。
本木雅弘もりょうも浅野忠信も明らかにおかしい格好なのに…
りんの隠れた過去が明らかにされていき、ウルッと涙腺緩んだ自分がいた。
しかし、この作品は…あのラストはどう受け止めればいいんだろう。
あの川でりんが見たのは待ち焦がれていた本当の捨吉の姿に見える。
しかし中身は雪雄。りんはどんな心境になるだろう。
妻は自分の気が動転してただけで夫が入れ替わったことすら知らずにいるのか。
その後落ち着き、子供も産まれ、幸せになった夫婦
雪雄は貧民窟に回診に赴く。それは一種の贖罪なのだろうか。

観た人によって解釈の仕方が違うのかもしれない。
分類的にホラーらしいけど、ホラーでもないような…
最初にこれ見た時は、そりゃ衝撃的だった。
美術や音楽、踊り…怖いんだけど、おかしくて、強い印象を残す。

 特典映像も豊富で、ベネチア国際映画祭に来た両人や
メイキング、眉毛の秘密、井戸のセットなどなど、面白い映像が見れます。


ソードフィッシュ (2001/米) 99分






 「60セカンズ」のドミニク・セナ監督
製作は「マトリックス」のジョエル・シルヴァー。
主演にジョン・トラボルタを迎え、ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー共演

 ロスの空港で有名なハッカーが逮捕された。
彼は取り調べの最中に何者かの手によって殺される。
一方、既に引退した世界一のハッカーと呼ばれたスタンリーの元に
ジンジャーという名の謎の美女が現れハッカーとしての仕事を依頼。
以前、麻薬取締局が行った極秘作戦“ソードフィッシュ”によって、
計画遂行に際して利用したダミー会社が思わぬ利益をあげ、その資金が
そのまま放置され現在95億ドルもの巨額に膨れあがっているという。
それを、コンピュータ操作で奪おうというのだ。
計画の首謀者は元モサドのエリート・スパイという謎の男ガブリエル。
離婚で別れた娘の養育権を巡って金が必要だったスタンリーは承諾するが…

 当時、ふらりと立ち寄った映画館でたまたま観た映画。
すぐに気に入ってパンフレットを買い、発売したDVDも購入。
その時まで私はジョン・トラボルタの映画をマトモに観たことなかった。
ガブリエルが張り巡らす二重三重のトリック…カタルシス感じた。
ヒュー・ジャックマン、普通に男前だねぇ〜
ハル・ベリーも綺麗で、ファンにはたまらないでしょう。
彼女の魅力全開で、チラッと胸が見えるシーンもアリ。

 冒頭から始まるトラボルタの演説、いきなり佳境な展開を見せつけられ
マトリックスと同じような、緑の不思議な要素が加えられた映像…
素直に、「かっこいぃ〜!!」って感動してしまった。
最初にググッと観る人をストーリーに引き込ませる。
スタンリーの視点で過去へ戻り、だんだん状況を理解していく。
冒頭だけなら数ある映画の中でも最高の出来だと思う。
ハッカーのことはよく知らないけど、
ヒューがノリノリでパソコンいじってる姿は面白い。

 ガブリエルの正体が少しずつ浮き彫りになるなか、
カーチェイスしながらの銃撃戦も見惚れてしまった。
トラボルタの髪型、普通あんな人いたら変だけど何故か似合ってる。
個人的にはガブリエルもスタンリーも好きだから
納得しきれぬ矛盾もあったが、ラストの〆方は面白かった。
DVDの特典映像には別バージョンのエンディングがあります。
あと、トラボルタのティーカップのネタ…笑っちゃったよ。

 この映画はテーマ的には問題発言ばっかりかもしれませんね。
テロリストとテロリスト…やったら百倍返し…
大作ってワケでもないですが、なかなか個性的な良作じゃないでしょうか。
からくりがあって、知的なアクション映画って感じで好きです。
DVDも、もう何回見直しちゃっただろう。


卒業 (1967/米) 107分








 サイモン&ガーファンクルの名曲に乗せて送る青春映画の名作。
若りし日のダスティン・ホフマンの演技も見所。

今は亡きアン・バンクロフトの代表作のひとつでもある。
今でも結婚式のシーンは有名でパロディやオマージュも後を絶たない。
60年代を過ごした人たちにとっては欠かせない青春の象徴であろう。

 大学を主席で卒業したベンジャミンは卒業祝賀パーティーで
前々から長い家族付き合いを続けていたロビンソン夫人に誘われ
最初は抗いながらも、ずるずると秘密の関係を持ってしまう。
自堕落な日々を送り、将来のことも見えない毎日…
そんなある日、ロビンソン夫人の娘のエレンが現れたことで、
親のお膳立てで彼女と渋々つき合わされることになるが、次第に惹かれ合い、
ベンジャミンはエレンを本気で愛するようになる。
そんな状況に嫉妬の念を燃やしたロビンソン夫人は…

 前々から観たい観たいと思っていた作品。
感動ものの映画かと思っていたけど、全然違った!
諸所、ユーモアや皮肉めいたものが散りばめられていて
色んな所で突っ込みながら鑑賞してしまった。
こんなもどかしい映画だったとは…生々しいし
古い映画だけど、全然退屈しなかった。見せ方がうまい。
音楽だけのシーンもプロモーションビデオのように様になってた。

 始まって即、ダスティン・ホフマン若い!って思った。
彼は美形ではないんだろうけど、何だろうな。
顔が大きめでなで肩で身長が高くない。
少し日本人に近い所があるから日本で好かれてるのかもね。
彼のもどかしい演技は、リアルで凄いと思った。
自宅プールでダラダラ過ごす様も笑える。
大学を卒業して、何をしたらいいのか迷う…期を失うとそうなるんだよね。
ホテル言って皆に挨拶されるシーンも笑ってしまう。
ストリップバーでのあの図がどうしても爆笑もん。
エレン演じたキャサリン・ロスも可愛い。

 勝手に結婚宣言したり、執念深く追いかけたり…
今で言うとストーカーの部類になっちゃいますな。
母親と娘、両方手を出すなんて生理的に凄い嫌なことだと思うし。
あの瞬間だけで、何故エレンは彼を選んだのか…
奪われる花嫁って図が、そんな自分が快感だっただけなんじゃ…
あの後、バスに乗って「さーどうしよう」って不安げな表情が良い。

甘い恋愛映画なんかじゃない。現実を突きつけられる。

 結婚するよ、ってそれだけで安心する両親もどうよ。
所帯持つ前に、ちゃんとした仕事見つけてないなんてなぁ。
夫人の立場だったら、怒るのも無理はないけど…
エレンをひっぱたくシーンは間違いなく女としての怒り。
娘の身を考えて…ってわけじゃないのだ。


 当時、ダスティンはベンジャミンの役をロバート・レッドフォードと
ジャック・ニコルソンと取り合ったっていうらしいじゃない。(三人共同い年とか)
二人がそれぞれベンジャミンの役をやっていたとしたら
全く異なるタイプの映画になっていたかもしれない。

 レンタルで借りて観たんだけど、これはなかなか。
また、ふと見たくなってしまいそうだ。不思議な魅力がある。
しっかしアメリカって家でかいし普通にプール付きがあるもんなぁ。
ホテルの部屋取りとか、社会に飛び出したばっかりで
世間知らずで…何か気持ちが判る挙動不審さであった。


ソドムの市 (1975/伊) 118分


 詩人であり小説家でもあるピエル・パオロ・パゾリーニ監督作品。
原作はマルキ・ド・サド(SMサドの語源にもなった人物)『ソドムの120日』
舞台はフランス、ルイ13世統治下の時代だったが、この映画では
第二次世界大戦末期のナチス占領下の北イタリア。
気持ち悪い思いをしたくない人はこっから先は読まないで下さい。

 大統領、公爵、司教、権力者たち4人が市町村から美男美女を吟味し
厳しい基準で選りすぐられた18人の若者たち。
途中、脱走を図った者は殺され、ある秘密の屋敷へと連れてこられた。
彼らはこれから4人を楽しませる為だけにあらゆる快楽を体現させられる。
男と男、女と女、近親相姦、レイプ、アナルセックス、スカトロ、拷問…
あまりに衝撃映像の為、国によっては規制で見ることすら出来ない問題作。
興味本位で覗いてしまった者は激しく後悔するだろう。
数ある映画の中でも「最も気持ち悪い映画」に挙げられる作品だ。

 何故、観てしまったのだろう…興味本位で。
淡々と、変態行為を見せられ、彼らの主張は
「変態と呼ばれる行為でも追及し極めればそれは究極の美だ。」
別にそれが好きな集団が集まって何やってもいいけど
無理矢理連れて来た人たちにそれを強要するなんて…
けれど、実際にそういう趣向の人間たちが居るのも現実。
それによって起こっている犯罪も、細かい描写は報道されないものの
身の毛もよだつ凄まじい行為は行われている。

 あんな事に延々付き合わされるならアッサリ殺された方がどんなに楽か…
しかし、その状況から本能的に彼らに寝返った者もいた。
でも心情的にはあの場に居るどの立場の人間にもなりたくはない。
(当たり前だけど…)
唯一、反発した青年の無言の抗議が印象に残った。

 権力者たちが女装して結婚式を挙げたり
ちょっとあれだけはギャグみたいだった。しかし晩餐は勘弁。
反抗的だった者は懲罰リストに名を書かれ拷問される。
蝋燭の火で陰部を焼かれたり、鞭でさんざん叩かれ
ナイフで目を刳り抜かれたり、頭の皮を剥がされたり…
「それを安全な場所で望遠鏡で覗くお前は4人と何も変わらない。」
と云われてしまったようで実におぞましかった。

 ラストのシーンが一番怖いと思えた。
この映画には救いは無い。延々と続く無限地獄…
絶望的で、退廃的なこの光景は現代に何を突きつけるのか。
ピエル・パオロ・パゾリーニはこの映画が遺作となった。
この映画の公開前に17歳の少年に惨殺されたのだ。
監督はホモセクシャルとしても有名であった為、この死は物議をかもし出し
今でも研究を続けるファンが多いのだとか…

ハッキリ云って私のくだらない感想よりも↓の方が凄い研究されています。
興味のある方は覗いてみて下さい。写真付きです。

ピエル・パオロ・パゾリーニ研究ホームページ


それでもボクはやってない (2007/日) 143分










 「シコふんじゃった。」「Shall We ダンス?」の周防正行監督の新作。
ある“痴漢冤罪事件”を報じる記事に関心を持ち取材を進める過程で、
現在の刑事裁判のあり方そのものに疑問を抱き、
その問題点に真正面から向き合った異色の社会派ドラマ。
主演は「硫黄島からの手紙」「ハチミツとクローバー」の加瀬亮。
共演に役所広司、瀬戸朝香、山本耕史、もたいまさこ、
尾美としのり、大森南朋、鈴木蘭々、田口浩正、本田博太郎、清水美砂、
増岡徹、大和田伸也、竹中直人、高橋長英、小日向文世など。

 フリーターの金子徹平は、会社の面接に向かう為通勤ラッシュ電車に乗車。
そして、乗換えの駅でホームに降り立った彼は女子中学生から腕を掴まれ、
痴漢行為を問いただされる。驚き戸惑うまま徹平は、
そのまま駅員によって駅事務所へ連れて行かれ、やがて警察へ引き渡される。
警察署、そして検察庁での取り調べでも徹平は一貫して“何もやっていない”と
訴え続けるが、そんな主張をまともに聞いてくれる者はいなかった。
そして、徹平は具体的な証拠もないまま、ついに起訴され、
法廷で全面的に争うことになるが…刑事手続きにおける“推定無罪”の
原則が揺らぎ始めている現代社会に一石を投じる力作。

 いやぁ…やはり始めに出てくる感想は「恐いなぁ」でしょう。
男性諸君はこれを見て、痴漢に間違われないように、くれぐれも注意!
そして女性諸君は痴漢をよく見極めてから捕まえろ!お互いの為に。
毎朝満員電車に揺られてる男性にはホラーかもしれません。
その人がやってないと真剣に訴えても、事実やっていなかったとしても、
やったという確かな証拠がなくても、痴漢はほぼ確実に有罪。
無罪を訴えて裁判を続けても、裁判費用はかかるは、期間も1,2年はかかり、
その間に世間から変態のレッテルを貼られ、名誉も汚され、会社もクビ。
まさに人生メチャクチャにされる理不尽この上ない事件。
さっさと罪を認めれば3〜5万円払って釈放。これも納得いかないよね。
罪を犯してないから認めない人より、罪を犯して認めた方が得なんてさ。
認めなければ何ヶ月も拘留されて厳しい取調べの日々。心身ボロボロ。
何度も同じことを同じように説明し、ただただ切実に訴えても相手は信じない。
言動のアラを探しウラを読み、攻め立てる。

 映画では、被害者女性も本気で信じて疑わないので
きっと彼女と彼女の家族にとってはもう、彼は変態以外の何者でもないんだな。
でも、裁判はきちんと見届けて欲しいもんだなと思った。
その後、訴えた彼女は裁判の結果だけ聞かされるだけなんだろな。
世の中、逆恨みからか意図的に陥れられるケースもある。
女子高生にケータイ使用を注意した男性サラリーマンが
その女子高生からいきなり「この人、痴漢です!」と叫ばれ、
駅員に捕まりそのまま警察へ…なんてことも。
きちんと事情を説明しようと大人しく連行されたら罪を認めたと一緒らしいですね。
その場で自分の身分を明かし、きちんと身の潔白を訴えるしかないのかな。

 映画の冒頭の言葉も意味するように、
「疑わしきは罰せず」って大事なことなのだと思い知る作品です。
確かに罪を犯し罰を免れる人間がいるのは許せないことだけど、
罪を犯していないのに罰を受けなければならない人間を出してはいけない。
勿論、本当に痴漢は存在するさ。パンツに手入れる以上のことをしてくる輩も。
多くの女性は触られても恐くて声も出せない。卑劣な犯罪だ。
そんな奴は会社にも知らせてガッポリ慰謝料取ってもいいはずだ。
けれど、近くにいたから、動きが怪しかったから、何か痴漢ぽいから
そんな曖昧な理由で突き出されたらたまったもんじゃないだろな。
あと人の記憶は曖昧だから、自分の立場を擁護するような言葉を選んだり、
どう聴こえたか錯覚したり、真実を捻じ曲げてしまったり、事実確認は難しい。

 
最初の裁判官が良い人だったのに、小日向さんが憎たらしくてねぇ。
検証ビデオも作って健闘したんですが、アッサリ切り捨てられる。
小日向裁判官の長回し&長セリフにはちょっと感心した。

始まり方も終わり方も首尾一貫としてて作品としての完成度が高い。
「あの子がねぇ…」と落ち込む、もたいまさこ母さんも、
ルームシェア友達・山本耕史も、お馴染み役所広司もいい配役でした。
ただ、やっぱり瀬戸朝香の一本調子演技は好きになれないかな。
加瀬亮はこれでもかってくらい幸薄顔だから、役が似合い過ぎですね。
これが他の役者だったらリアル感が出なくて失敗してたかもしれません。

 周防監督がZIPに出演したとき、こんな興味深いことも言っていました。
「痴漢という犯罪は日本とアジアの一部の国でしかない特殊な犯罪なんですよ」
う〜ん…何故だろう? セクハラは欧米諸国でも普通にあるらしいのだが。
電車や乗り物に乗ってて見知らぬ他人の身体に触るという行為。
朝のラッシュ時には人ぎゅうぎゅう詰めで
乗車率が250%になる日本の現状が特殊なのかもだけど。
監督は、アメリカや他の国でどのような反応が返ってくるか楽しみです、と。

 久しぶりに家族揃って映画鑑賞したんですけど、
皆主人公の行く末に釘付けになって魅入ってました。
何度も見たいとかそういう映画ではありませんが、
かなり入念に痴漢冤罪事件のことを調べて描かれているし、
丁寧な説明もあるので、いろいろと勉強になると思います。お勧めです。94点。
これから日本にも陪審員制度が出来ますが、こういった問題も改善しなければ。



このページのトップへ戻る









  

 
  

数字
ジャンル別
SF
近未来SF
ファンタジー
アクション
パニック
バイオレンス
アメコミ
アドベンチャー
サスペンス
スリラー
ミステリー
ホラー
モンスター
ラブストーリー
ロマンス
ヒューマン
ロードムービー
青春
スポーツ
ドキュメント
サクセス・ストーリー
コメディ
おバカムービー
ラブコメ
プリティ・ピンクシリーズ
歴史
文芸
戦争映画
時代劇
オムニバス
ミュージカル
テレビ・ドラマ
アニメ
その他
トップページ
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送