ヴェニスの商人 (2004/米・伊・ルクセンブルク・英) 130分




 シェイクスピアの有名戯曲をアル・パチーノ主演で映画化。
本来喜劇テイストな原作なのだが、現代的解釈も加え、
金を貸した悪人的役まわりのシャイロックにもスポットが当たっており、
ユダヤ教徒の側に立ってみても後味の悪い、やるせなさの残る作品となった。
ユダヤ人の商人シャイロック=アル・パチーノ
金を借りる際の保証人になったアントーニオ=ジェレミー・アイアンズ
アントーニオ名義で金を借りたバッサーニオ=ジョセフ・ファインズ
パッサーニオの恋する富豪の女性ポーシャ=リン・コリンズ
ポーシャの付き人ジェシカ=ズレイカ・ロビンソン

 16世紀の都市ヴェニス。ユダヤ教徒は異端視され、
決められたゲットー内で住い、外出の際には赤い帽子の着用が義務付けられ、
多くのキリスト教徒たちからは、高い金利を取るユダヤの商人は嫌われていた。
そんな時代、バッサーニオはポーシャと婚約する為に大金が必要になった。
親友のアントーニオはその時、自分の持ち金を外国に投資に出しており、
手元に大金が用意できなかった為、高利貸しのシャイロックから借りることにした。
返済期日までには投資した金が何倍にもなって返ってくる計算だったので、
もしものことはないが、シャイロックは返済が間に合わなかった場合に
アントーニオの身体の肉を1ポンド分貰うという条件を出すのだった…

 金を借りる経緯は知らないけど、解決法だけ知ってて拝見。
アル・パチーノの老化ぶりにまず驚き、今まで抱いてきたイメージが変わった。
普段からあんな迫害を受けていて、シャイロックの異常な要求ももっともだ。
原作の戯曲の詳しい内容は知らないが、指輪の話とか要るのかなぁ?
あれのせいもあって、余計に苦い作品になったような気がする。
善側として描かれる人物たちが皆薄っぺらく、苛つくんだな。
普通は、肉を切り取るのは不可能、金持ってお引取りを…って方が
スッキリな終わり方だと思うんだけどな…ヴェニス市民の命を狙ったとして、
財産没収とかって酷すぎないか?彼は娘も奪われたんだぞ。
そして情けをかけたアントーニオも、改宗って…嫌いな宗教に変われなんて
ある意味、死ぬより酷い拷問じゃないだろうか。何の権利があって思想まで。
判決が逆転した時、バッサーニオの付き人が罵声を浴びせるのだが、
あそこまで哀れにしちゃっていいのだろうか…酷いわ。勝者の立場とは。
ユダヤのゲットーの扉が閉ざされ、佇むシャイロックが可哀想です。
性悪女たちの指輪のシーンもひたすら腹が立つ。

ポーシャは全然美人じゃないのだが、男装の為にあの配役なのだろか。
最初はケイト・ブランシェットにオファーが来ていたようだ。

 夜に見たせいか、何度も眠気に襲われ、記憶が飛びまくり、
ざっと5回は見直した気がする。映像は落ち着いてて綺麗なんだけどね。
ラストの狩りをする男達を見つめる女性の図は何の意図があるんだろう。
ある意味、肉付けされてない舞台版の方が見易いかもしれない。


ウォーク・ザ・ライン/君に続く道 (2005/米) 136分




 ボブ・ディランをはじめ数多くのミュージシャンに多大な影響を与えた
カントリー・ミュージックの伝説、ジョニー・キャッシュの波乱に満ちた半生を
ホアキン・フェニックス主演で映画化した感動のヒューマン・ラブストーリー。
キャッシュの2度目の妻となるジューン・カーター役にはリース・ウィザースプーン。
二人は劇中の歌のシーンも全て自分たちでこなす熱演を披露している。
リース・ウィザースプーンは今作でアカデミー主演女優賞を受賞。
ゴールデングローブ賞に作品・主演男優・主演女優と三冠受賞。
監督は「17歳のカルテ」「“アイデンティティー”」のジェームズ・マンゴールド。

 田舎の貧しい家庭に生まれたジョニー・キャッシュは、
酒乱の父に怯える日々を送っていたが、優しい兄ジャックと
ラジオから流れてくる少女ジューン・カーターの歌声が心の支え。
ところがある日、その最愛の兄が事故で亡くなり、父との仲は更に険悪に。
やがて成長したジョニーは2年の軍隊経験を経て初恋相手と結婚、
訪問セールスの仕事に就きながら、仲間とバンド活動を続けていた。
やがて努力が実りプロのミュージシャンとなったジョニーは、
全米中をツアーする中、少年時代の憧れ、ジューン・カーターと知り合う。

 音楽は好きだけど、歴史には詳しくない私はジョニー・キャッシュは初知。
なんでもエルビス・プレスリーやジェリー・リー・ルイスと同期で、
彼らも(演じているのは役者だけど)劇中、登場して歌を唄う。
実際にホアキンが唄い出しても、野太い声だなぁ…って感じで馴染みがなかった。
自分では一番良かったシーンはスタジオでオーディション受けた時言われた、
トラックにはねられ、死ぬ前に1曲だけ歌う時間がある。
 聞いた人間が絶対忘れない1曲。
 この世で君が感じたことを神に伝える曲。
 それを聞けば君という人間がすべて分かる歌を歌え。

このセリフだけが、胸を打った。
この人いきなりいいこと言うじゃん…と。

 ホアキン観てると鼻の下の筋が凄く気になってしまうな。濃い顔だ。
リースは確かに歌は上手くないけど、聴く人が楽しめる歌い方してた。
しかし劇中歌われた曲はエルビスの曲以外は全部知らなかったので、
こりゃ知らない人が見ても面白味半減かなぁ…と。
そして、
歌手にはツキモノのドラッグ中毒って展開も読めたし。
家族が協力して売人追っ払うシーンはちょっと良かった。
肝心の二人のロマンスは全然ひたれなかったし、何かつまんなかった。
ライブのシーンも、ここが映画一番の見せ場!ってのがなかった気するし

カントリー・ミュージックに詳しくないとダメなのかな。
長くて眠気を誘う映画でした…伝記な割にはそんな壮絶な人生でもないような。
総合的にも微妙な印象なんですが、評判は良いみたい。う~む。
サントラが聴き易いかも。


風と共に去りぬ (1939/米) 231分










 太平洋戦争が始まる前に製作され、戦後この映画を鑑賞した日本人が
「こんな国に勝とうとしてたなんて」と脱帽したことでも知られるハリウッドの名作。
映画史を語る上でも欠かせない壮大なスケールで描かれる愛の金字塔。
マーガレット・ミッチェル原作、「オズの魔法使い」のヴィクター・フレミング監督。
主人公のスカーレット・オハラにヴィヴィアン・リー。
レット・バトラーを演じるのは“キング・オブ・ハリウッド”のクラーク・ゲイブル。
スカーレットが恋するアシュレーにレスリー・ハワード。
アシュレーの妻・メラニーにオリヴィア・デ・ハヴィランド。
スカーレットの父:トーマス・ミッチェル スカーレットの母:バーバラ・オニール
アカデミー9部門(作品・主演女優・助演女優・監督・脚色・撮影・
室内装置賞・編集賞にタールバーグ記念賞)受賞。

 1861年、南北戦争が始まろうとする直前。
ジョージア州タラの大地主ジェラルド・オハラの長女スカーレットは、
同じ大地主ウィルクス家の嫡子で彼女の幼馴染みであるアシュレーに夢中。
激しい気性と美貌の持ち主のスカーレットは多くの青年たちの憧れの的であり、
こんな自分の結婚の申し出を断るはずはないと思っていたスカーレットだったが、
彼が従妹の地味で大人しいメラニーと婚約することを知りショックを受ける。
彼の心は気立ての優しいメラニーのものだった。
そして突然、南北戦争の開始が伝えられ、スカーレットは失恋の自棄から
メラニーの兄チャールズの求婚を受け入れ結婚した。
メラニーと結婚したアシュリーもチャールズも戦争に参加し…

 名作だけど長い!ことでも知られるこの映画。
東野圭吾の小説でやたらとこのスカーレット・オハラが出てきたので、
興味持ちついでに映画好きなら渡るべき橋、見てみようと相成りました。
確かに長い!だけど途中からドンドン先が気になり出して、
どうなる?どうなる?え~?!…と、夜に見始め見終わったのは明け方でした。
波乱万丈な彼女の人生は今でいうと昼ドラみたいな感じでした。
好きでもない夫が戦死して、喪に服すのが退屈でしょうがない!
大好きなアシュレーの頼みだもの、奥さんも子供も面倒見るわ。
惚れた弱みかバトラー便利♪…ちょっといきなり戦争行かないでよ!
やっと故郷に帰って来たわ。母は死に、父はすっかり耄碌しちゃって…
この家を、暮らしを守る為なら殺人だって死体隠蔽だって何でもするわ!
アシュレーにまだまだアタックし続ける…愛されるその日まで。
この土地の税金を払う為だもの、妹の婚約者だって奪っちゃうわ。
色々あって新しい旦那も死んでまた喪服よ…妹よ、悪いことしたわねゴメン。
お金が無い…仕方ない。嫌いなバトラーと結婚するしかないわね。
これ以上年を取りたくない!もう子供産みたくないわ!!
旦那がキレて娘連れて家出しちゃった…でも別に追いかけない。
娘が落馬して死んでしまった…口論の末階段落ち。旦那との間は最悪の状況。
メラニーが死んでアシュレーが急にどうでもよくなったわ。目が覚めた。
バトラー御免なさい!今まで気づかなかったけど、あなたを愛しています!
「…俺もう疲れたよ。」ってドコ行くのよ!待って!…これから私、どうしよう。
残ったのはこのタラだけ。明日は明日の風が吹く…

ざっと簡単にまとめちゃうとこんな所でしょうか。

 スカーレットの凄まじい自己中ぶりには閉口しちゃいますし、苦労が多いのも
自業自得なんですが、その正直で凄まじい生き様には尊敬しちゃいますね。
見終わってすぐはちょっとポカーンとしちゃったんですが、
後から思い返せばなかなか深い。色んな解釈が生まれてくる構図です。
ある男に振り回され、別の男を振り回し、形は違うが二人とも去り、
結局、彼女が裏切らず、裏切られなかったのは土地(タラ)だった。
父親は言う。「土地を悪く言うのは親を悪く言うのと同じだ。タラを守れ。」
彼女がメキシコに駆け落ちしようと誘うが、アシュレーが断りつつ言う。
「君が愛してるのは僕じゃない。土地(タラ)だ。」
しかし、潔く身を引かないで馬鹿正直に約束を守り好きな男性の妻子を守り、
機会があればまだ再アプローチをしてくる諦めない彼女も理解出来ないが
(チヤホヤされる存在の自分をフッたから余計に固執しちゃったのよね)
キッパリと「メラニーを愛してる。君を愛することは永遠にない」と断らないで
都合良くスカーレットを利用しちゃってるアシュレーも酷い男だな。
バトラーもバトラーで、凄いS気質なのか、スカーレットに意地悪ばかり(笑)
でも、あそこまで彼女を好きでい続けられる彼は一途で素敵だ。
…しかし最後には全てに疲れて去っていっちゃうんだけどね。切ない。

スカーレットもバトラーも、よく似てるんだな。内面に子供っぽさもあって。
幼馴染で人当りもよいアシュレーと、金持ちで自信過剰なバトラー。
どうしても主役目線で見れば後者の方に好感沸くでしょうね。
バトラーの方がワイルドで格好いいし。意地悪な所もあるけど。
恋愛するならスカーレット、結婚するならメラニー。
世の男性の多くにそう思わせるだろう対照的な二人の女性像。
この映画を観てこの男女4人に対しどういう感想を持つかで価値観が測れます。
友人や恋人同士で討論してみるのも面白いんではなかろうか。

 ヴィヴィアン・リーはあのローレンス・オリヴィエの元妻。
彼を追って渡米し今作でアカデミー主演女優賞を受賞し一躍大スターとなる。
クラーク・ゲイブルは結婚を5回経験するが子供には恵まれず、
心臓麻痺で彼が亡くなって4ヵ月後に子供が誕生したそうです。
彼の息子のジョン・クラーク・ゲイブルはこの映画のメイキングに出演。
アシュレーを演じた俳優さんは第二次大戦に出兵し飛行機が墜落し戦死。
メラニーを演じた女優さんはこの役を同じく女優の妹と取り合ったそうです。

 恋愛模様ばかり感想書きましたが、映像技術も素晴らしいです!
60年以上前の作品だとは思えない。壮大な夕日が心に焼きつきましたね。
見るには根気がいりますが、私は見て良かったなと素直に感じました。
あと5年後くらいにまた鑑賞に臨みたいと思います。…癖になりそう。


クルーシブル (1996/米) 124分




 原題は、るつぼの意。17世紀末にマサチューセッツ州セイラムで実際した
“魔女狩り事件”を基にして、アーサー・ミラーが書いた作品を脚色し映画化。
主演にダニエル・デイ=ルイス(アーサー・ミラーの娘と結婚している。)
ウィノナ・ライダー(万引き常習犯、映画出演ドタキャンなどお騒がせ女優)
ジョーン・アレン(アカデミー助演女優賞ノミネート。ジョンの妻役)
ポール・スコフィールド(聞き分けのない判事役)
ロブ・キャンベル(裁判を疑問視していく牧師役。他出演作も端役が多い。)
ブルース・デイヴィソン(「X-MEN」のケリー上院議員役など)
ジェフリー・ジョーンズ(「アマデウス」ヨーゼフ2世役など。端の悪役でよく見る顔)

 ある晩、森の中で少女が集まり恋占いのような遊びをしていた。
アビゲイル(ウィノナ・ライダー)も、かつて関係を持った妻子持ちのジョンとの
復縁を占うひとり。彼を手に入れる為なら何でもしようと鶏の生き血を飲み踊る。
しかしその現場を牧師が目撃してしまい少女たちは慌てて逃げ帰ったが、
その晩からふたりの少女が寝込んで、目を覚まさなくなってしまう。
町ではそれを悪魔の仕業だと騒ぎ始めて郊外から牧師や裁判官を呼び出す。
少女たちは真相を知られるのを恐れ、集団で共謀し“悪魔を見た”と証言。
土地問題や色恋事情で私怨のある村人たちを“魔女”だと名指しし、
証拠がなくても投獄、罪を認めなければ絞首刑と、狂気は広がってゆく…

 Gyaoで鑑賞。集団狂気と理不尽さを扱った作品で、苛々しました。
宗教の怖さ、盲目さもよく判る。実際に起こった事件だと考えるとおぞましい。
裁く側の正義は誰が証明するのか。純粋潔白な人間なんているのか?
死刑になる村人を観ても罪悪感を覚えず、薄ら笑いすら浮かべ
愛し憎んで執着した男が死刑になると決まった時にようやく後悔するなんて、
アビゲイルは恐ろしいね。最も、そんな無知無恥な乙女に手を出した
ジョンがそもそもの災いを引き起こしたんだけども。
ようやく判事たちの前で言ったジョンだったが、妻が…妻がぁ~!

ダニエル・デイ=ルイスは指輪物語のアラゴルンみたいでした。
判事連中も頭が悪すぎて困った。今更後には引けない意地もあって、
少女達を問い詰めるにしたって、まず一人一人個別に尋問しなさいよ!
金を持ってトンズラしたアビゲイル、罪を悔やんで置手紙くらい残してけっての。
彼女にはそれ相応のしっぺ返しが起こって欲しかったな。もっと強烈な。

ウィノナという役者自体、大嫌いになりそうな程でした。
命よりも誇りを選ぶ…処刑台で暴動が起これば救われたのに、結局そうか。
実際に犠牲になった人達は何を思ったのだろう?
神も悪魔もいないんだ、と悟ったのかな
…キリスト教は恐ろしい。
人間の醜さを描いていて、好きなジャンルなんだけど最期を変えて欲しかった。


ゴッホ (1990/英・仏・蘭) 140分






 1853年3月30日、オランダの北ブラバンド地方、フロート・ズンデルト村に
牧師の息子として誕生したヴィンセント・ヴァン・ゴッホは26歳で画家を志した。
37歳の若さで永眠したゴッホの画家人生は僅か10年。
しかし、彼の描いた絵は今も尚、輝きを失わず、時代を超えて愛されている。

 波乱万丈な人生を送った、このゴッホの生涯を映画化する為に
メガフォンを取ったのは鬼才ロバート・アルトマン。
ゴッホの生涯に魅せられて最初はテレビシリーズとして製作したが、
大ヒット作品となり、映画化に至った。
ゴッホ役にはティム・ロス。
多種多様な役柄をこなすが本作はまさに適役で、
狂気的ともいえる迫真の演技と繊細な演技を披露している。

 正式な題名は、『ヴィンセント&テオ』
彼の画家としての人生は、弟であるテオがいたからこそ。
彼が自分の家庭も顧みず最愛の兄に生活費を送り
画商として兄の絵を売ろうと努めていてくれたから。
今作では兄弟の絆が大きく描かれている。
ゴッホが精神を病んでいたとか、自分の耳を切り落としたとか
有名な話でしたが、この映画を観るまでは実感が沸かなかった。
彼が感じたであろう、苦悩がどれほどのものだったのか。
とても切なく哀しい、悲劇の芸術家の物語。

 最初の油絵のアップ、不安げで不吉な音楽。
風景の撮り方も、何だかゴッホの絵のタッチに合わせているかのようで
彼が麦畑の中でカンバスで絵を描いているという、その図が素晴らしい。
ゴッホの激しい色使いが大胆で豪快で、
小学生の頃から無意識に好きだった画家でした。

 ゴッホの自画像からして、ティム・ロスは合うのかと想像してたけど
思いの他、赤毛のその顔が似ていて、感動してしまった。
彼の前世はゴッホだったのか??っていうくらい。
気難しい気質もよく現れていた。それでいて憎めない顔なんだなコレが。
ティム自身も、精神を病みかけたというその壮絶な演技は見ごたえアリです!
ティム・ロスが「レザボア・ドッグス」に出演する前の作品なんだけど
この頃からこんな偉才を放っていたんだなぁ…。

 モデルを使って一生懸命スケッチしていたりしてるの見て、
確かにゴッホは造型を正しく捉えるのはそれ程うまくはないんだよな、と。
でもその絵には情熱があり、観る者の目を奪う魅力がある。
また久しぶりにゴッホの遺した絵を観に美術館に足を運びたくなった。
認められないのに、絵を書く描き続けるのがどれだけ辛いことなのか。
しかし彼は認められたら認められたで、
それを簡単に受け入れないような気もする。
ゴッホが浮世絵の影響を受けていた、っていうのは日本人として嬉しい。
後半は芸術に悩めるゴッホでなく、精神を病んだ一人の人間としてのゴッホ。
「寂しかった」絵が認められようが、生活が楽になろうが
すべての原因はそこだったんじゃないだろうか…。安易かな

 どの場面も釘付けで夢中で見て…胸に来たよ。
ゴッホのことは詳しく語れる程知らないけど、彼の絵は大好きだ。
そんな私でも、彼の人生を思って涙を流してもいいでしょうか。
何度も観たくなる類ではないけど、手元に欲しい作品。
これは私の中では偉大な名作のひとつになりました。


ジェシー・ジェームズの暗殺 (2007/米) 160分







 ジェシー・ジェームズは西部開拓時代末期に実在した人物。
いくつもの強盗と殺人を繰り返した無法者であったが、
牧師の息子という犯罪者としては異色の生い立ち、容姿端麗な風貌などで
人々からは英雄として親しまれ、その生涯を描いた作品も多い。

南北戦争後の1881年、ジェシー・ジェームズは34歳で暗殺された。
ジェシーを仕留めたのは、彼に憧れ彼の部下になった20歳のロバートだった。
その主役、製作も務めたのがブラッド・ピット。
彼を仕留めるロバート役にはベン・アフレックの弟のケイシー・アフレック。
他、共演にサム・ロックウェル、サム・シェパード、ポール・シュナイダー。
監督は「チョッパー・リード 史上最凶の殺人鬼」のアンドリュー・ドミニク。
撮影のベテラン、ロジャー・ディーキンスの腕は見物。

 タイトルからして大いなるネタバレが済んでいるので書くと、
ロバートがジェシーに近づき、仲間になり、行動を共にし、
やがて現実と理想のギャップ、時代の流れ、出世欲・虚栄心などに翻弄され、
ジェシーを暗殺することになる過程と結果が丁寧に描かれます。
映画は160分とちょっと長めで、全編シリアスに徹し、テンポも良くはなく、
もし家でDVDで見てたら熟睡してただろーなと思いました。
開始から30分で隣りの女性が大イビキかきはじめてビビッた。
西部劇のジャンルだからといって、派手なドンパチも見せ場もなく、
ジェシー兄弟の大暴れも終わり、徐々に見えない精神的な重圧、恐怖に
晒されていくジェシーと、その一味たちの心理戦、探りあいが主です。
淡々と俯瞰で人物たちを追い、叙情感たっぷりの虚しい淋しさが滲み出て、
観る側を飽きさせない配慮がない分、好みが別れる作品ですね。
一度解散し、ジェシーがエドに会いに行った辺りで作品の空気が
掴めなければ、この先もずっと苦痛でしかないかもしれません。
私はここらへんから、この世界にスルリと入っていけたような気がする。

 映像が美しいのと、もの哀しげな音楽が心に残る。
ブラピのくたびれたアウトロー姿も渋いし、潜む狂気もひしひし感じた。
ケイシーは、役作りなのか喋り方がナヨナヨしててイラつくわ~w
確かにアイツを毛嫌いするフランクの気持ちは判る。
ジェシーも、割と早い段階でロバート嫌い始めてた気がするわ。
そしてチャーリーのバカで小心者な人の良さってのも感じた。
大衆向けでなく、非常にとっつきにくそうだけど、中身は良作だと思います。
個人的には何よりも、暗殺後のことが一番印象に残ったかな。
武器を置いて、あえて殺されることを受け入れたジェシー。
殺して有名になり、調子に乗って舞台で再現するロバート。
兄が段々ジェシーが乗り移ったような演技をするようになったり、
観客から「卑怯者」と後ろ指さされ始める。
その後落ちぶれて、ジェシーのあの時の気持ちを考えたり、
何故自分は執拗なまでに彼に執着し、そして殺してしまったのか…
最初の登場シーンから、喋り方から目線から、何から何まで気持ち悪い
印象だったロバートに、最後の方になって初めて感情移入が出来た。
ロバートを殺した人物が唐突過ぎてちょっと分からなかったけど。
てっきり、弟を殺されたフランク・ジェームズが仇を討つのかと思った。

そこら辺は、最初から歴史を知っていないことがプラスに働いたかな。
ジェシー・ジェームズのことを予め詳しく知っていたら、
この映画を、ジェシーの人物像を素直に受け止められなかった気もする。
他の映画での彼のイメージが気に入っていたりとかあると思うし。

 サスペンスっていうより文芸作品に近い匂いがする。
とにかくハラハラする心理戦のようなものが続いて静かな緊張の連続。
あの目つきは?その言葉の裏の意味は?何を考えているのか?
相手の狙いを見抜いているのか?と非常に興味をそそったし、
栄枯盛衰の歴史といおうか、人の世の業の深さといおうか、
人間ドラマの描写の仕方が自分好みだったんだと思う。
メイン人物が複数いるので、しっかりと覚えておかないと困ります。
とりあえず主役と暗殺者の二人と、ジェシーのいとこのウッド、
女たらしのディック、ロバートの兄のチャーリー、小心者のエド、
これだけの人物の顔と名前を一致させておけば物語についていける。
終わったあとの余韻は、なかなかのもんでした。好きですね。78点。


血と骨 (2004/日) 144分







 「月はどっちに出ている」の著者・梁石日が自らの父親をモデルに著わした
同名ベストセラー小説を映画化。監督は「クイール」の崔洋一。
主演は、自身の監督作以外では久々の映画主演となるビートたけし。
共演に「39 刑法第三十九条」の鈴木京香。
新井浩之、田畑智子、オダギリジョー、松重豊、濱田マリ、
北村一輝、塩見省三、
村隼、寺島進、伊藤淳史…

 1923年、大阪。済州島からの出稼ぎ労働者が住まう
朝鮮人集落にやって来た少年・金俊平。
彼も他の朝鮮移民と同じく日本で一旗揚げることを夢みて渡ってきたが、
やがてその強靱な肉体と並外れた凶暴さでのし上がっていき、
周囲に恐れられるようになる。その間、幼い娘を抱えながらけなげに生きていた
李英姫と結婚し、2人の間に子どもも産まれ、開業した蒲鉾工場も繁盛する俊平。
しかしながら俊平の粗暴な振る舞いは修まることはなく、
家族でさえエスカレートする彼の暴挙にただ怯えるばかりだった…

 戦前、戦中、戦後の日本を舞台に壮絶な人生を生きた在日朝鮮人。
冒頭で船から見える大阪に希望を抱き渡っていった少年が
いきなり30代になり、妻を強姦している流れ。
彼が何故あそこまで自分勝手で暴力的な大人に成長したんだろう。
彼を見ていると、国、人種関係なくああいう人間はどこにでも居るなと思った。
気にいらない事ややり場のない怒りがあると、家族に暴力で八つ当たり。
そのうち離れを借りて愛人とよろしくやって、好き放題。
正に鬼のような男で、たけしの顔があまりに似合ってた。
彼なりの優しさも少しはあるのだが、本当に暴君でしかなかった。

 金俊平の息子の正雄(新井浩之)がナレーションを加えて話が進んでいく。
父親がウジ湧いた生肉食べてるのは偽物でも気持ち悪いぃ~
娘の花子(田畑智子)の行く末が悲しい…
あの時ばかりは俊平が暴れてくれて少しスカッとした。
俊平がかまぼこ工場を始めて…あんなに貯め込むとは。
ひょっこりやってきて去っていく腹違いの兄貴、朴武。
オダギリジョーとたけしの乱闘シーンは結構驚いた。
松重豊演じる忠義を尽くす男、高信義の秘めた思い…
彼の顔はクリストファー・ウォーケンに似てない?

 凄惨で救いの無い物語だけど、現実味があって辛い。
あそこまで酷い野郎は、どう生き直したって普通の幸せなんて来ないんだな。
…別に彼自身、後悔も反省もしてないから、そこも凄いが。
セックスシーンはボカシ満載だけど多かった。
肉体的な暴力も酷いけど、家の物を荒らしまくる描写も見てられなかった。
借金取立てを受けた村隼と塩見省三は顔が似てて紛らわしい。
結局、息子が目撃した例の事件は公に出ないで終わったのか…

 戦後に責めを負う帰還兵や北朝鮮の帰国運動。
帰国してもスパイと疑われ収容所へ入れられたり、
過酷な環境の中餓死者が後を絶たない。
今でも混沌としているあの国を思うと居た堪れない。
でもこの映画自体には説明されない事実も多く
原作を読んだ人にとってはこの映画、不満も残るらしい。
在日問題に深くメスを入れている作品ではないけど
鑑賞するには充分な予備知識があった方が感慨も出ると思う。
朝鮮は基本的に男尊女卑社会が根強いからああいう家庭になるとも思うし。
難しい問題と人間模様を含め、真面目な文芸作品だった。
後半は勢いが無くなるけど、父の末路はなかなか。

 『刑務所の中』や『クイール』撮った人とは思えない。
現場では相当厳しいと言われている崔監督。
あそこまで緊迫した、重みのある映画になったのも映画に関わった
役者やスタッフ、そして監督の努力の賜物ですね。
何にせよ、凄い邦画を見たな、って印象。


突入せよ!「あさま山荘」事件 (2002/日) 133分


 1972年2月、連合赤軍が起こした立て篭もり事件を
当時現場にいた指揮官の一人佐々淳行の書いた原作に忠実に映画化。
赤軍派5人が一人の女性を人質に雪深い山荘で立て篭もる事件が発生。
警官の強行突入で多数の負傷者を出すことになった昭和の大事件。

 指揮官の佐々淳行を役所広司が演じ
宇崎竜童、伊武雅刀、天海祐希、椎名結平、遠藤憲一、篠原涼子、
松尾スズキ、武田真治、八嶋智人、藤田まこと…以外に豪華。チョイ役多し。
リアルドラマで警察側の立場しか描いていないので
中で起こっていることがわからず観る人に同じモヤモヤ感を味合わせる。

 何かタラタラしてて、テンポが悪い…ドキュメンタリータッチ
かなり眠気を誘いました。派手な演出は期待しちゃいけません。
警察側の状況ばかりで、立てこもってる相手のことがいっさい出てこなくて。
赤軍派に興味が沸いた自分としては選択ミス。
あの事件のことはこれを見ればだいたいは判ったと思う。
こうなったら、立てこもった赤軍派の立場から見た、
「立て籠もれ!あさま山荘事件」でも作ってほしいな。
別の立場からそれぞれこの事件を描く。


パフューム ある人殺しの物語 (2007/独・仏・西) 147分








 85年製本、原作者パトリック・ジュースキントのベストセラーが待望の映画化。
奇想天外、破天荒、前代未聞で話題を呼んだその小説は
45ヶ国語に翻訳され、全世界で1500万部以上の売り上げを記録。
スピルバーグやスコセッシらが映画化権を奪い合った作品だった。
原作者は頑なに拒んでいたが、遂に企画が通り、映画化されることになった。
監督を務めたのは「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ。
音楽ではベルリン・フィルハーモニーが一役買っている。
主演に選ばれたのはイギリス新鋭俳優のベン・ウィショー。
「ピーターパン」のウエンディで映画デビューした、
撮影時15歳の若手女優レイチェル・ハード=ウッド。
他、ダスティン・ホフマン、アラン・リックマンらベテラン俳優が脇を固める。

 18世紀、フランス。類稀なる才能を持つひとりの孤児がいた。
彼の名はジャン=バティスト・グルヌイユ。
何キロも先の匂いを嗅ぎ分ける脅威の嗅覚を持っていたグルヌイユは、
やがてパリの調香師ジュゼッペ・バルディーニに弟子入りして
香水の作り方を学ぶと、更に高度な技術を求めて香水の街グラースへと向かう。
グルヌイユは、天使の香りの如き究極の香水を創りたいと願った。
天才的な嗅覚を持つ調香師が作った許されざる香水とは…

 香水、中世、フランス、ダスティン・ホフマン、の要素で鑑賞決定!
観客に匂いを連想させる為に多種多用なカットが沢山出てきて、
いやらしくない裸体とか、映像的な満足度が高かったです。
生臭さ、花のかぐわしい匂い、ジョン・ハートのナレーションも手伝って、
今まで映画を見る上でさほど気にならなかった“匂いを想像する”という行為。
それが凄く新鮮で、作品の生々しさと一緒に味わいました。
歴史風物語的にはかなり突っ込み所もあり、マニアックだったりフェチ過ぎたり
嗜好によって好き嫌いがかなりハッキリ別れそうな作品です。
主人公の生い立ちと主人公に関わる人達のお約束が寓話ぽくて好きです。
ああいう境遇で育ったから倫理観や常識が欠けていて、
無知な子供のように…というか野性的に望むものを追求するんですね。
その純粋さ、執念たるや、何だか少し羨ましささえ感じてしまった。
主人公のブサイクとも美形ともいえないルックスと貧相な身体付きがリアル。

 
連続殺人を行う上で、何故いとも簡単に出来る?足がつかないのか?
美女の匂いを合わせて創ったあの香水、何故女性にも効くの?
あの採香法なら何も殺す必要はなかったんじゃ…説得は難しいけど。
ていうか何であれを嗅ぐと皆が我を忘れて性交に走るのか。
しかし、それをいざ映像で見せられると何もいえなくなる。
匂いを追跡しちゃうシーンでは人並み外れ過ぎて笑いがこみ上げたけど。
でもあの、娘が馬に乗ってて振り返るシーンがまた綺麗なんです。
あそこまで超人を徹底しちゃうなら、X-MENにも入れちゃうぞ。
香水は世界を征服できちゃう程、恐ろしい効き目だしね。
娘を殺された父親の憎しみ、復讐心ですら溶かしてしまう。

 全裸の民衆シーンは宣伝で使っちゃいけないような気がする。
あれは映画を観ていた人が遭遇する、衝撃的な展開なんだからさ。
私はそのシーンで然程主人公の表情に注目していなかったせいで
後の主人公の苦悩に多少ついていくのが遅れてしまった。
香りに夢中で人間関係には興味なさそうに見えた彼ですが、
洞窟で自分が無臭で誰の記憶にも残らないと知り、究極の香水を求めた。
彼は人の記憶に残りたかった、愛されたかったのだ。
でもハンカチを投げて匂いに群がる民衆を見て、彼は痛感。
自分自身を求めてくれる人はいないのだ。
その時、あのプラム売りの女性を思い出す。彼はあの時、娘に恋してたのだ。
匂いで魅せられたにせよ、普通の男性なら口説いて付き合って、
心を通わせたり身体を交じあわせたいと単純に願う。
でも哀しいかな、彼はその“普通”が分からなかったんだね。
パリに戻っても孤児院のばあさん、皮職人のおっさん、香水屋の師匠、
みんな死んでしまってるから、それがまた孤独に響く。
ゾンビ映画みたいなシーン、直接描写がなくて良かった。
あの“消えた”ってカンジがいい。しかし凄いラストだったな。
ホフマン演じる香水屋の死に方はある意味、幸せだと思う。


 “匂い”ってものの意外な重要さというか、意識が変わった。
何でも、人間は匂いがないと相手に性的魅力を感じられないらしい。
私は普段から鼻使ってなかったからな…これからは意識しよう。
あの香水のビンに惹かれたけど、劇場でレプリカ売ってないのか(笑)
個人的にはパリの傾いた香水店が活気づいてく様をもっと観ていたかった。
版権をスピルバーグとスコセッシが争ってたという話、
もし二人が撮ってたら、ハリウッド系の大衆向けになってたのかな。
この映画の雰囲気、映像美、音楽、気に入ったのでこちらで正解?
家に帰って早速香水クンクンしました。私は好きです。78点。


バリー・リンドン (1975/英) 186分


 スタンリー・キューブリック監督作品。
原作はサッカレーの『ピカレスク・ロマン』19世紀の没落していく貴族を描く。
アイルランド人のバリーは色恋沙汰で故郷を追われイギリスの軍隊に入り
貴族として生きることを決心。成り上がりで次々と出世をしていくが…

 こんなに長かったとは…見てる間はどっぷりはまっていた。
とにかく、共通して断言できるのが、映像が美しい。
照明機材を使わず全て蝋燭で室内撮影を行ったらしい。
最初はポカンとした冴えない顔つきの主人公も
観ているうちに段々、愛嬌があるように思えてきた。
白塗りホクロの貴族がうわぁ~だったけど、リアルな雰囲気。

 淡々と語られるストーリー。1部2部構成
時代劇や西部劇とかの決闘は見慣れたものだったけど
英国式の決闘を見るのは初めてだったんで新鮮だった。
次はこちらの番~とやっていくのか…先行が有利だけど外れたら怖い。
リボンで相手を釣っていた従姉がおもろい。

 アイルランド式な太鼓と笛でひたすら行進していく戦法も
騎士道精神らしいが、銃でバッタバッタと撃たれていく…効率悪い。
軍隊生活が辛くても何だかんだで生き延びているバリー。
逃亡する際はこっちもハラハラ。
軍服を着ている男はモテ度がアップするなぁとふと思う。

 バリーはとにかく運が良かった。
そして、後半はそのツケが回ってくる。悲惨だ…
貴族の給料ってどうなっているのだろう?
未亡人の奥さんがサインするだけで生活は成り立つんだろうか。
終盤の決闘シーンでは何故か「偉いぞ」と思ってしまった。
〆の文章ですべてを完結させてしまった。

 〆で確かにこいつは傑作だなと思った。虚無感が襲ったけど…
3時間のこの映画を2時間くらいだったと感じた私は気に入った。
「シャイニング」や「時計じかけのオレンジ」「博士の異常な愛情」
などと比べると衝撃はなかったけど良作じゃないかな。
パッケージ買いしたけど破格の値段で手に入れられて嬉しい。


光の雨 (2001/日) 130分


 戦後の昭和1972年連合赤軍の同志リンチ事件を題材にした映画。
出演は萩原聖人、裕木奈江、山本太郎、塩見三省、大杉漣、金子貴俊など
連合赤軍事件を題材とする立松和平の小説『光の雨』を映画化しようとする
現在の人々が集まり、演じる場面と過去の実在の場面…
フィクションとドキュメンタリーを融合させた不思議な作りになっている。

 ロケ地である知床、極寒の地で撮影に臨むキャスト達。
自分達とほぼ同世代の人たちが革命に生き強い思想と信念を持ち
狂ったまま突き進んでった悲惨な事件を体現し、話し合う。
同じ赤軍を扱った「突入せよ!あさま山荘事件」とは格別の出来。

 他の役者たちも真に迫っていて
観ているこちらも過去と現在の境界線が掴めなくなった。
痛い…たまらなく苦しく痛い描写もある。

「あの頃は馬鹿みたいに純粋だった。狂っていたかもしれないけれど真剣だった」
革命とは何か。その愚かでも高い思想ゆえに…
歴史の授業でもこの時代の話はあまり教わらないし、
前は戦後いきなり平成になっていったような感覚だったけど、こうやって
今後の日本はどうあるべきか、若者たちががむしゃらに議論し、争い…
こんなことも知らないで今の平和主義の民主主義国家日本で
のうのうと生きてきたんだなと思うと、自分が恥ずかしくなった。
たくさんの犠牲や反省が繁栄されているのかどうかなんて判らないけど、
知っているべきことのような気がしてならない。
勿論、これを観ただけで全て知った気になってはいけないが。

右や左や赤…そういう思想がどうとかでもなく、ただいろんなことは知るべきだ。
理解とまではいかなくとも。
エンドロールが流れて、しばらくはその画面から目が離せなかった。
こんな映画を見たのは初めてかもしれない。
最後の山本太郎の言葉に聞き入ってしまった。
そして原作者のコメントに。
娯楽作品とはいえない映画だけれど、薦めたい。


ピカレスク -人間失格- (2002/日) 133分


 作家・太宰治の実像に迫った猪瀬直樹著者『ピカレスク 太宰治伝』を
元“LUNA SEA”ボーカリスト兼タレントの河村隆一主演で映画化した作品。
人一倍強い功名心や自意識と劣等感の狭間で苦悩し、
愛人との度重なる心中スキャンダルや恩師・井伏鱒二との確執といった
人間・太宰の短くも波乱に富んだ生涯をドラマティックに描く。

 主演を務めた河村隆一自身、映画の主題歌を唄い、
サウンドプロデュースとしても映画制作に参加。
共演にさとう珠緒、緒川たまき、朱門みず穂、祐木奈江、とよた真帆
佐野史郎、大浦龍宇一、田口トモロヲ、大杉漣、猪瀬直樹も特別出演。

 津軽地方の資産家の四男として生まれた太宰治は、
やがて帝大(現:東京大学)の学生となり、文学者になることを志すが、
21歳のとき、青森の芸妓・戸山初枝と同棲中に最初の心中事件を起こす。
しかし、相手は初枝ではなく銀座のカフェの女給・田辺なつみ。
うまくいかない事柄が重なり、そのすべてを周囲の所為と決めつけ、
自棄を起こした末の振る舞いだった。
しかし、命を落としたのはなつみ一人で、太宰自身は助かってしまう。
その後、初枝とも心中未遂を起こし離婚した太宰は、
有名作家であり恩師の井伏鱒二の媒酌で西原佐知子と再婚するのだったが…

 この映画が話題になった頃、丁度太宰治を読んでて興味深々でした。
私はアーティストとしての河村隆一も買ってたし、どんな出来になるのか
近所の映画館ではやってなかったのでDVD化したものを購入して拝見。
何故か今はこのDVD手に入りにくいのかな?

 河村隆一自身の演技が上手いかどうかは判らないけど、
この映画自体がとても繊細な雰囲気の中流れていくようで
太宰に興味の無い人、もしくは河村隆一嫌いな人はつまらないと思う。
でも、この独特のテイストを希少だなと私は愛してます。
その時代らしい服装や小道具等も古き良き日本を感じさせる。
佐野史郎演じる掴めない井伏氏や太宰を取り巻く様々な女性。
太宰はやはり、相当のナルシストなんですね。自虐的な。
自殺未遂を繰り返して親や兄を脅して金を巻き上げている。
小説も売れて軌道に乗っても不安定な生活…
生まれ付いての人格で人は幸せを永遠に掴めないのかもしれない。

 さとう珠緒が普段のテレビで見るキャラじゃないのでそこも新鮮。
なかなか世間知らずの幼さの残る女性をうまく演じてたと思う。
「彼女は純ではなく、無知なのだ」ってセリフは名言ですね。
最後の心中相手の富美栄もなかなか真に迫ってた。
あの時に、初めて太宰は自覚した、ってことですよね。
生きる為に自殺を繰り返してきたことを。
勿論、これは太宰の友人の猪瀬氏の書いたこと、ってだけで
当人の心境なんて知る由も無いわけだけど…色々考えさせられる映画。
内容からして暗いし、高尚なもの求めて観るのも違うと思う。

 エンディングは勿論、あの河村隆一の歌声が聞こえてくるわけで
少し興冷めですけどね…そこまでイメージは崩してない曲ではある。
劇中に、太宰治の小説の一節も出てきて文章読むたびに思い出す。
自殺を実行するって本当に怖いことだな…
心中前の田辺なつみの云った一言も印象深い。
太宰治自身が書いた「人間失格」とは似て非なるものだけど
明らかに自分をモデルにして書いたと考えられているんだろうな。


火火(ひび) (2004/日) 114分




 女性陶芸家として高い評価を受ける一方、長男の発病をきっかけに
骨髄バンク設立に大きな役割を果たしたことで知られる神山清子の半生を映画化。
主演は「ホタル」の田中裕子。共演にこれが映画デビューの窪塚俊介。
黒沢あすか、池脇千鶴、遠山景織子、岸辺一徳、石田えり。
監督は「愛の新世界」「光の雨」の高橋伴明。

 焼物の里、滋賀県信楽町。同じ陶芸家だった夫は女と消え、
女手ひとつで2人の子どもを育てる女性陶芸家、神山清子。
彼女は、江戸時代に失われてしまった技術である穴窯による
自然釉の復活に執念を燃やし、極貧生活の中で、失敗を繰り返しながらも
陶芸家としての信念を貫き通し、窯焚きを続け、
遂に念願叶って信楽自然釉の完成に成功する。
そんな幸せも束の間、長男・賢一が、白血病に倒れてしまう。

 実話を元にした映画だけれど、私はこの人たちの存在を知らなかった。
骨髄バンクの存在は知ってたけど、なかった時代を考えたこともなかった。
焼き物の専門用語も焼きあがるまでのプロセスもよく知らないけれど、
前半の焼き物にかける清子の熱意は見ごたえがあった。
後半はガラリと骨髄バンクの話になってしまうのだが、
これはこれで大事なメッセージがあると思うし、この映画を観て
骨髄バンクに登録してくれる人が一人でも増えれば浮かばれると思う。
骨髄移植手術も描かれる。見たあと、私も純粋に登録に行こうかと思った。
でも、作品としてはやはり、まとまりがなくなってしまったことは否めない。

 窪塚俊介は確かに兄と似てるけど、まぁやっぱり別人なわけで。
親の七光り云々のくだりが出てきた時は、“実際は兄の七光り”なんて思った。
格別悪いわけではないけど、突出して良いわけでもない。無難な印象。
話題性はあっても、きちんと伸し上がっていった人とそうでない人の差は出る。
この映画で評価に値するのは俊介じゃなくて紛れもなく田中裕子。
万引きした子供を懲らしめる方法も凄まじいし、怖い。でも正しい。
お姉さんは選択し直せるのならば父方へ行っただろうなぁ…

劇中出てくる言葉のひとつひとつが重くズシンと響く。
褒められようとするな、形にとらわれるな、ぐしゃっとつぶすあの手も凄い。
自分の立場になって想像したらぐしゃっとされる気分は最悪だけど、
高みを目指すなら、あれくらいの屈辱も修行の内だと思わなきゃね。。。

邦画特有のとっつきなさと聞き取りにくいセリフと、湿った雰囲気はあったけど
眠気に襲われずに最後まで鑑賞できました。
見終わって泣いたという方もいるように、響く人には響くかと思う。
ただ…個人的には2度3度と見たい作品ではないですね。


不滅の恋/ベートーベン (1994/米) 120分




 1827年ウィーン。ひとりの偉大な音楽家が息をひきとった。
ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーベン。
「交響曲第9合唱」「運命」「月光」「田園」…時代を超えた名曲の数々を生み出した
彼の死後間もなく、自筆の遺書が発見された。そこには彼が
“不滅の恋人”と呼ぶ女性に宛てた愛の言葉と、財産を捧ぐと記されてあった。
だがそこには宛名は無い。生涯独身で通し、聴力障害を背負い、
気難しい理屈屋、人間嫌いと聴衆から罵られたベートーベン。
彼が不滅の愛を捧げた相手とは誰のことなのか?
ベートーベンの友人であったシンドラーは彼の人生の軌跡を辿り始める。

 今なお世界中の研究者たちが論争を繰り広げている未だ解かれていない
謎に迫るロマンチック・ミステリーの傑作。
「アンナ・カレーニナ」の鬼才バーナード・ローズ監督。
ベートーベンに扮したのは「レオン」「フィフス・エレメント」「ハンニバル」など
多種多様な役になりきる個性派俳優ゲイリー・オールドマン。

 随分昔に偶然テレビで放送してたのを見たんです。懐かしい。
断片的にしか覚えていなくて、思い切って今回、DVDを購入してみました。
記憶というのは曖昧ですね…このシーンが凄く幻想的で好きだった!って
覚えているつもりでも、実際に観てみると、アレ?こんなだったっけ?と。
でも、ま伝記映画としてしっとり、楽しませていただきました。
19世紀ウィーンを舞台にした景色や時代背景は綺麗で好きです。
貴族の服装とかナポレオンの侵略戦争など、興味も沸く。
ベートーベンの名曲がシーンに使われているのも美しい。
ただ、ミステリー路線で行っちゃうと、予想が付くのと、
オチが何だか凄く昼ドラのようでもあり…当時は感動したんだけどなぁ。

 
才能が無いのに甥に必死にピアノ教えるベートーベン。
小さい頃は「おじさんが可哀想」と母親を諦めて付いてきてくれた
あの子も大きくなって精神的に追い詰められてしまう。哀しいな。
真実は、甥じゃなくて息子だったなんてなぁ。
しかしこれは、あくまで映画の為のエピソードであって史実じゃないだろな。
散々嫌われ尽くしたベートーベンは何故か第9を完成させて
彼女をはじめ、民衆にも等しく許されたのだろうか?

ゲイリー・オールドマンはピアノは弾けたけど、流石に上級者向けの曲は
悪戦苦闘して沢山練習もしたらしい。ゲイリーにとって忘れられない作品だとか。
気難しくて嫌われ者で…だけど、本当は繊細で…という
ベートーベンの性格のギャップが自分としてはモロにツボでした。
苦悩する天才という図にも弱い私です。
あの時代だからこそ音楽家は伝説になれたんだろうな。
格別思い入れのある人はこの作品での描かれ方が納得いかない人もいるようだ。
BGMとして流しておくのもいいかなこの映画。
ゲイリー・オールドマン好きな人は観るべき作品である。


プライドと偏見 (2005/英) 127分





 「ブリジット・ジョーンズの日記」「ラブ・アクチュアリー」を手掛けた
イギリスのワークング・タイトル社が、キーラ・ナイトレイを主演に迎えて
ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』を映画化した文芸ラブ・ストーリー。
“プライド”と“偏見”が邪魔をして素直になれない男女の恋の行方を、
雄大なロケーションを背景に活き活きと描き出す。
監督は、本作で長編デビューのジョー・ライト。

 18世紀末のイギリス。田舎町に暮らすベネット家5人の子どもは女ばかり。
女性に相続権がないこの時代、父親が死んだら家も土地も遠縁の男子が継ぎ、
娘たちは路頭に迷ってしまう。母親はなんとか娘たちを資産家と結婚させようと
躍起になっていたある日、近所に独身の大富豪ピングリーが引っ越してきた。
にわかに浮き足立つ5人姉妹。そして舞踏会の夜、
長女ジェーンはピングリーと親しくなる。
次女エリザベスは、ピングリーの親友ダーシーと知り合うが、
ダーシーの高慢な態度に強い反感を抱くエリザベスだったが…

 劇場公開されている時、観に行こうか迷っていた作品。
広大なイギリスの田舎風景が売りだったみたいで、やっぱ劇場向けだったかな。
物語の内容的にはちょっと大人しい。昔の文芸小説だからかな。
キーラ・ナイトレイは思っていたよりも綺麗に撮れてなかったような。
地味な茶髪が顔つきまでも地味にしてしまってる気がした。
ダージーは登場してきた当初から、いかにもムッツリしてるけど実は…なキャラで
普通に私視点だとピングリーよりも男性的に魅力感じたな。
そして一番美人と言われてるジェーンってそんなに美人でもなくないか?
一見オーランドブルーム系なウィッカムという男性も後に登場。

 昔の少女漫画の起源…のような展開を随所感じた。
ほのか~な恋愛ロマンスで、出会った時の会釈とか時代独特だね。
でも全体的には地味過ぎる印象も多々あり…山場がなかったような気も。
ダーシーさんは私の為にこんなにお金使ってくれて、いい人だから結婚ね!
って流れになってるようで、ラストの収集の付け方はハッピーエンドで
微笑ましいながらも、ちょっと別の言い方を…と考えてしまった。
父親に報告した所で終わるのはちょっとふいをつかれた気分。

おとなし過ぎてちょっと眠気が襲う作品でした。別に悪くはないんだけど…
それに娘5人、長女と次女以外は全然焦点当たってないよな。
ストーリーに結構期待して見たんだけど、ちょっと肩透かし。
丁寧に各キャラクターの心情を描いていって欲しかった。原作知らないけど。


ルパン (2004/仏・伊・西・英) 132分








 世界で5000万部のベストセラー小説シリーズに待望の実写映画化!
モーリス・ルブラン作・怪傑紳士アルセーヌ・ルパン生誕100周年記念作。
若きルパンが謎を秘めた美女カリオストロ伯爵夫人を助けたことから、
莫大なフランス王家の宝石を巡る抗争に巻き込まれていく小説
「カリオストロ伯爵夫人」をベースに、「813」や「奇巌城」などの名場面が
スリリングに交錯するエキサイティングなスケールの大作。
監督は「ルーブルの怪人」で人気を博した新鋭ジャン=ポール・サロメ。
ルパン役に「スパニッシュ・アパートメント」で知られるロマン・デュリス。
カリオストロ伯爵夫人役はクリスティン・スコット・トーマス。
ルパンの従妹クラリス役に「キングダム・オブ・ヘブン」のエヴァ・グリーン。
謎の男ポーマニャン役にパスカル・グレゴリー。
美術や衣装にも力を入れており、撮影場所はパリ、ノルマンディー。
総制作費は2500万ユーロ(37億円)をかけている。
またカルティエが全面協力し、マリー・アントワネット王妃の首飾りを製作。
アーカイブスジュエリーを提供するなど、豪華な輝きを放っている。

 1884年、叔父スービーズ公爵の屋敷に暮らす少年アルセーヌ。
ある日、彼は泥棒である父の指図で、公爵夫人が所有する
マリー・アントワネットの首飾りを盗み出し、父に手渡す。
だが、逃げおおせたはずの父は翌朝死体となって発見され、
アルセーヌと母は館を追い出されてしまう。
やがて、20歳となり怪盗として活躍するアルセーヌは、
公爵夫人の娘で従妹のクラリスと相思相愛の仲になっていた。
そんなある日、彼は王家の財宝を狙う名士たちに捕らわれていた
カリオストロ伯爵夫人を救出し、たちまち恋に落ちるのだが…。

 劇場公開当時凄く気になってた作品。
やはり日本人ですから、ルパン三世を彷彿とさせますね。
ちょっと3枚目で、女たらしで、結構おっちょこちょいで…と共通点あり。
もみあげと毛深さも共通点…猿顔なのも共通してるわ。
原作小説を読んだことのない私は、ここに登場するカリオストロやクラリスの
名前が、あの宮崎アニメの「カリオストロの城」がオマージュしてたんだなーと。
冒頭シーンで登場したルパン父を見て、真っ先にウルヴァリンが浮かぶ。
ルパンのイメージ通り、豪華な貴族たちのパーティで鮮やかに
金品をかすめ取ってく様は見ていて楽しかった。(気づくだろ、って思ったけど)
全体的にハリウッド映画とは違い、テンポや編集の仕方がぎこちなく、
そこらへんはヨーロッパ映画らしいなぁとも思いましたね。
スカッとしたアクション活劇ならハリウッドの方が上手いです。
何せこの映画、原作小説3本を混ぜているので、時間も長め。
そしてやること多すぎて観てるこっちもちょっと混乱する。
あの十字架3本が何でそんなに重要なのか、ピンとこなかったし。
ルーブル美術館とか出てきたから、それだけで無償に嬉しくなれる自分。

 
カリオストロ伯爵夫人が非情なくせに、時折凄く未練たらしく
ルパンを見つめるのが印象的でしたね。本心がまた分からなくなる。
一瞬シワが増えたように見える映像は、そう作ったんだよね??
父親の死で、こりゃ在り来たりな復讐劇になっちゃうか?と思ってたら
真相を知ってちょっとビックリ。ま、あの人やけにルパン擁護してたしな。
でも、その割にラスト近くは妙に割り切ってましたねぇ。
ま、子供使って首飾り入手して去ってく様からして、良い父親ではないと思った。
ルパンも、「今更パパー!なんて感動の再会できるかよ!」と容赦なく殴る。
爆弾攻撃で市民が巻き添え食らい、かなり死傷者出てて凄かったな。
妻を殺され息子を奪われたのに、血なまこになって息子捜したのかね?
ラストに短絡的に偶然再会させて、急に終わってポカーンとなったよ。

映像は煌びやかで豪華だし、正装して盗みを働くシーンなんかは
イメージ通りのルパンでしたが、イマイチ、ルパンの人格に魅力が足りない。
父親の死の謎、財宝の隠し場所の謎、美女の謎、クラリスとの恋、など
要素はいっぱいあったけど、中途半端で全部綺麗に伏線回収しきれてない。
雰囲気はあって好きなんですけどね。あと一歩及ばず。
でも観てる最中はヤキモキ、ハラハラしたんで、楽しめるとは思う。
粗もあってスッキリしないんだけど、そんなに嫌いではないかな。
早くルパン三世の実写映画化もしないかなー(笑)


レ・ミゼラブル (1998/米・デンマーク) 133分






 「ノートルダムの鐘」などでも知られるフランスの小説家
ヴィクトル・ユーゴー作「レ・ミゼラブル」の映画化。過去にも多数映画化されている。
日本では「ああ、無情」という題名で童話ジャンルにも置いてあったりする。
監督は「愛と精霊の家」などで知られるビレ・アウグスト。
主演は「シンドラーのリスト」のリーアム・ニーソン。
共演に「シャイン」のジェフリー・ラッシュ、
「パルプ・フィクション」のユマ・サーマン、
「ロミオ&ジュリエット」で人気を博したクレア・デーンズ。

 1812年のフランス。19年の刑期を終え、仮出獄したジャン・バルジャンは
親切に泊めてもらった神父から銀の食器を盗んで逃亡。
警察に捕まり連れ戻されたが、司教はジャン・バルジャンを許すのだった。
それを機に改心したジャン・バルジャンは数年後、
ヴィゴーの町で皆から尊敬される市長になっていた。
地位も信頼も財産も得ていた彼の前に現れた、新署長に赴任してきたジャベール。
彼はパリで盗人だったジャン・バルジャンを知っており、
ジャン・バルジャンは正体を見破られ、執拗な追っ手から逃れることになる。

 小学校の頃、図書室でこの本の存在だけは知っていた。
あの時、読んでおけばよかったかなぁ。でも、銀食器のくだりは有名なので知ってる。
その後、こんな色んなことが起きるとは…原作はもう少し長いようだ。
正直、かなりい
い映画でした。名作ならではの教訓を含んでいるのは勿論、
終始飽きさせない展開に画面に釘付け。物語に夢中になりました。

 
「ジャベールこの野郎~」とイライラして観ていました。
正義にも慈悲が必要だ、ってつくづく思う。血の通わない正義は寒気がする。
空腹でパンを盗んだせいで20年も刑期をつけられたジャン・バルジャン。
いくら脱獄囚でも、あんなに寛容で他人の為に尽くす人なのに、
ちょっとくらい目をつぶってあげようよ!って思いましたね。
それと、この時代のフランスには時効がないのか?普通はとっくに時効だよね。
殺人罪には時効は要らないと思うけど、窃盗罪には時効あってもいいと思う。
ジャンを庇ってくれる人達も暖かくて好きだ。
原作ではユマ演じるファンティーヌは身体だけでなく歯も売ったそうな。
コゼットを引き取るシーンでは里親にも怒りがこみ上げ、逆転爽快。
マリウス役の青年、どこかで見たことあるなーと思ったら皇帝ネロの人か。
どこまでもお人好しで、絶対にジャベールを殺さないジャン・バルジャン。
最終的に無償の善は頑なな正義を動かしたんでしょうか。
人間、良いことも悪いことも出来るけど、保身を考えず良いことだけを徹底的に
選んだジャン・バルジャンはバカ正直で損で、だけど後悔はしないのかな。
心根に良心を持つ人は時として悪魔の囁きのような誘惑に負けたり、
嘘をついてしまったりするけど、その後に残る後味は最悪なんだ。
どんな結果が待っていようとも、正しいと思うことを貫くのは素晴らしい。
そういう意味ではジャベールも正義を貫く人なのだが、視野が狭く融通が効かない。
何故身を投げてしまうのか一瞬戸惑ったけど、それがあの人の意地なのかもな。


 この映画のお陰で何か大事なことを思い出したような気がする。
名作なだけあって、こういう本を教科書でもやればいいのにな、と思った。
個人的には92点あげたいね。皆さんにもオス
スメ。
フランスが舞台の話なのに英語なのは少し残念かな。
色んな「レ・ミゼラブル」があるので好きな役者で選べば見やすいかも。


ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ (1990/英) 117分






 「太陽の帝国」の脚本家で知られるストッパードの監督デビュー作で、
監督は今作でベネチア映画祭金獅子賞を受賞。
有名なシェークスピアの『ハムレット』で、ただ、
“ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ”という台詞だけで片づけられる
まったくの脇役である彼らを主人公にし、別の見方をした面白い作品。
イギリス出身の演技派俳優として知られるティム・ロスと
ゲイリー・オールドマンの共演作としても注目。
共演のリチャード・ドレイファスも物語の核を担う役を演じている。

 主演の二人が好きなのでレンタルで拝見。
最初見始めたときは、コレほど理解し難い映画はそうそうないなと…
映像は地味で音楽も控えめ。飽きさせないようにする配慮は無し。
意味不明なシーンやセリフが続き、くじけそうになった時、
舞台はお城へ。そこでハムレットの話が絡んできて
意味不明に見えた二人のやり取りがどんどん楽しくなってきた。
まるで漫才のように息のあった二人のボケとツッコミ。
ローゼンクランツが遊びで未来的なもん発明し出すわ、
どう接すればいいものか二人でシュミレーションしたり言葉遊びしたり…
二人は自分達の名前や旅の目的でさえ曖昧で
周りはかまわずに脇役である二人を巻き込んで展開していく。

 まずこれは戯曲「ハムレット」を細かく知ってる人向けに作られている。
その点をクリアさえすれば、間違いなく楽しめる凄い映画じゃないかな?
私は映画を観終わって、完璧にこの映画を理解したくなって
本屋で小説を購入。読んでから映画を見直しました。
いやぁ~…たまんない。滑稽、皮肉、苦笑、無知、理不尽…
「そうか、ここはこのシーンだったのか!」って発見あるたび歓喜。
もうタイトルからして既に主人公たちの行く末がバレバレなんだけど
それを前提に描いてここまで楽しませてくれるなんて凄いね。

 ティム・ロスとゲイリー・オールドマンは友人であり、
共に数々の映画で主に悪役を多くこなしていて監督として映画を撮ったりも。
ティムよりゲイリーの方が3歳年上だったのね。また、二人の共演が見たい!
ローゼンクランツのお茶目でドジなキャラが可笑しくて可笑しくて。
ギルデンスターンは一見しっかり者のように見えて、それでも鈍い。
最初はあんなにとっつきにくそうに感じたのが嘘なくらい
この世界にどっぷりハマってしまった。
二人を含め、この世界では誰もが筋書き。役目があり、終わりも用意してある。
役を与えられた以上、どんな役でもこなさないとな。
この、何だか不思議なブラック要素が私は大好きなのだ。
改めて「ハムレット」という物語を自分なりに細かく見直したね。
観れば観るほど味が出てくるスルメ系。
文芸ものの映画の中でも私的ベスト3に入りそう。名作です。
未だDVDは廃盤で入手困難、レンタルでビデオがせいぜいなのが辛い。
特典映像付きで是非とも再販を強く希望しますね☆☆☆☆☆


ロリータ (1961/英) 153分


 少女愛好家“ロリコン”の語源ともなっているナボコフの同名小説を
キューブリックが映画化した問題作。

 夏を過ごそうと田舎町で下宿するハンバートに、
未亡人のおばさんは彼に入れ上げる。が、当のハンバートは
彼女の娘のロリータに心奪われていた。
やがてハンバートは未亡人と結婚するが、娘の問題でヤキモキ。
二人きりで新婚生活をエンジョイしたい為に娘を寮学校に入れると言い出す。
口論の末、夫が娘を愛してる事を知った彼女は逆上のあまり事故死。
近所の視線も気になるハンバートは引っ越して二人きりの生活を始めるが、
学校の部活動や放課後、異性と接するのに嫉妬するハンバートは
ロリータをどんどん束縛していく…

 モノクロ映画。かなり長く感じました。
始まりがラストシーンの一歩手前という手法。
正直、理解に苦しむよね。奥さんの立場で見てしまうとあまりに可哀想。
性的関係にあるだろう二人だけど、そういう描写は避けているせいか
ハンバートの執着が酷くプラトニックなものに感じる。
青春真っ直中の少女にとって、早く家に帰れ、異性とデート禁止、
部活動も制限で神経質なおっさんとずっと家にいたくもないわな。
急展開の説明が会話だけでされていたので戸惑う。
そんなに絡んでこなかったような人がそこまでするの?
伝わるものがあまり無かったです。


 ロリータがそんなに魅力的じゃなかったし…これが一番の問題か?




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